異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

全員、そして予定変更

 
 しばらく考え続け、結論を出した。

「分かった。とりあえずこの店で働いている連中を全員捕らえよう」

 その言葉に、数人を除いて驚きの表情を浮かべる。
 驚かなかったのは、キリ、サナ、ニーナ、そしてあの老婆である。
 こちらを怪訝に思っている老婆が、驚かないのは少々意外だが、もう探るのも面倒なのでスルーしよう。

「三人は彼女らを村まで送ってやってくれ。恐らくあっちの方には、もう操られている男はいないと思うけど、警戒だけはしておいてくれ」
「ええ」
「分かったわ」
「は、はい!」
「それとユキナも既に村にいるから、説明を頼む」

 彼女らはそれを快く引き受けてくれた。

「という訳で彼女らが護衛するので、村の状況と、そこで捕まっていた女性たちの確認をしてきてくれ」
「?村の者は、これで全員ですが?」
「は?」

 老婆の背後に控えていた片方の女性が不思議そうな表情でそう告げる。

「そんな訳.....全員って、女性も子供も?」
「子供は何人か残されたのだと思いますが....」
「女は、私達で全員ですね」
「 ︎」

 二人の話を聞いて、数十分前のことを思い出す。
 ユキナに会いに行った際にいた女性たち。つまりあれは村の人ではない?じゃあ、一体彼女らはどこから、何をしにあそこに?
 いや、待て。もしかしたら復興を手伝いにギルドから派遣された冒険者の可能性も....って、それなら女性だけな訳ないよな。
 でももしかしたら上級の冒険者だってあるかもしれないし.....

「予定変更。キリたちはすぐに村の方へ向かってくれ!万が一ってことも考えられる。村長さんたちには、悪いがもう少しここにいてもらいたい」
「構いませんが、何かあったのですか?」
「.....悪いが、今は言えない。終わったあとで全部話すと約束するから、待っていて欲しい」

 今言えば、彼女らを不安にさせる。ただでさえ仲間に裏切られた状態なのだから、これ以上は混乱を起こすだけだ。
 とりあえず宝物庫から食糧と持ってる分の毛布、それと火炎核を三欠片、水儒核を五欠片取り出す。

「足りないかもだが、これを使ってくれ。どのくらいかかるかも分からないからな。この二つの魔道具の使い方は分かるか?」
「大丈夫です。しかしこのような品をどうして私達に?」
「なんでって、満足な食事や寝床なんて準備されているとも思えないからな。毛布は少なくて悪いが」
「....先に言っておきますが、私達の村にこの品に対する代金などはお支払い出来ません」
「そんなのいらない。そこまで大した物でもないんだし、気にしないでくれ」
「大した物でもない.....水儒核や火炎核は、ほんの小さな欠片でもそれなりに値が張ります。ましてや治癒核など尚の事。そんな物を持っている貴方は一体?」
「さっきも言っただろ。冒険者だよ」
「......」

 老婆は納得のいかない表情だが、こっちだって他に言うことがないのだ。

「さ、行こう!」

 そう声を上げ、分かれ道の方へ駆け出す。俺が駆け出すとそれに続いてキリたちも走り出す。
 そして彼女らの姿が見えなくなってからしばらくして俺は立ち止まる。

「さて、変更した理由なんだが──」

 そう前置きもさほど挟まずに本題を告げる。
 あくまで俺の予想に過ぎない。それを前提として、先ほど村にいた女性たちのことが気がかりなため、キリたちにはその様子を窺ってきてもらいたいと説明する。
 それで大丈夫そうなら当初の予定通りにユキナへの報告を。
 そして彼女の能力を使って連絡を寄越してもらう。
 それまでに終えているのがベストだが、そう上手くいくとも思えないので一旦抜ける時間だけでも作れるように努力するつもりだ。

「じゃあ、手筈通りに」

 それだけ言って彼女らを見送る。
 もちろん皆にはゲートを潜って村まで行ってもらった。
 先ほどの今で状況が変わっているかは怪しいが、何かあれば四人がなんとかしてくれるだろう。
 だから俺は、こっちに専念して村の人たちを早く送り届けよう。
 そう意気込んで、階段を駆け降る。
 それにしても女性も魅了出来るのか?あのサキュバスは。それとも他に何か、彼女に付き従う理由があるのだろうか?
 そんなふとした疑問に少々頭を悩ませる。


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