異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
解放、そして歯切れの悪い返事
キリの方も終わったようで、血溜まりの上にうつ伏せで緑の髪の男が倒れている。
二人とも大した怪我は負っていない様なので、一安心だ。
皆の安全を確認してから、檻の前へ行く。
「ちょっと下がってくれ」
そう前置きをし、檻の近くにいる人や檻の穴からこちらを観ていた子供たちに下がってもらう。
宝物庫から火炎核を取り出し、鉄格子に近づけ魔力を流す。
本当は鉄格子を凍らせて楽に破壊したいが、生憎もう魔力の残りが少ない。なので少し時間はかかるが、熱して曲げ易くする。
隣からガダンッと音が聴こえたので、そちらへ視線を向けると、キリが鉄格子を半円で切り壊していた。中には、その切り離された鉄格子が倒れている。
俺も同じ様にしたいが、こんな刃こぼれだらけのロングソードで切れるか怪しいので諦めた。小刀でも怪しい。
なので仕方がないので、火炎核で熱しているのだ。
時期に鉄が赤くなった所でロングソードで叩き切る。
とりあえず人一人くらいなら通れるであろう大きさで作れた。
柔らかくなっているので、なんとか切れた。
サナは拳や蹴りで曲げることは出来るが、数十回ほど繰り返さなくてはならないので、彼女にも火炎核を渡す。
ニーナも同じやり方だ。彼女は自分で火炎核を持っているので、それを使っている。その後土槍で刺し切っている。
それぞれで檻を壊し、人質を連れ出していく。
だいたい三十八人ほどか。それをだいたいで五分割されていた。
女性や少し成長していた子供たち、老人、小さい子供たちといった感じで分けられていた。何か意図があるのだろうか?
「助けて頂き、有難うございます」
そんな疑問を抱いていると、所々弱々しく震えながらの声がかかった。
そちらを見れば、腰が九十度くらいにまで曲げ、杖を突いた老婆が後ろに四十代後半くらいの女性二名を連れていた。
「私は、ハドルフという村の村長をしている、ローレンです」
「ご丁寧にどうも、俺は冒険者をしている桐崎だ。捕まっていた人たちはこれで全員か?」
「......」
しかし老婆は俺の質問に対して黙ってしまった。
それになぜか囚われていた人たちの表情が、怪訝や怯え、怒りなどを帯びている。
「どうした?」
「.....いえ。まだ何人か、囚われている...いえ、働いていると言った方が正しいでしょうか......」
「それはどういう....」
歯切れの悪い言い方の村長に疑問を抱いていると、村長をと同じく周りの人たちの表情も同じく曇っている。
その中の何人かが、血溜まりの上で倒れている緑髪の男を見ているのに気がついた。
おっと、それはマズい。
「ニーナ」
「っ!」
宝物庫から治癒核を取り出し、ニーナに投げて渡す。
それを受け取った彼女は、こちらの意図を察してくれ、その男の元へと駆けて行く。
「知らずとはいえ、申し訳ありません!」
キリが頭を下げて謝る。
「頭を上げて下さい。襲って返り討ちにあったあの者に非があるのです」
老婆はそう言ってキリを宥める。
しかし相手に味方したのが気になる。確かに人質がいては、逆らうことは出来ない。
なので渋々、という線でなら納得出来るのだが、彼の表情や動きを見た限りでは全くその気がなかったように見えた。
まるでそれを嬉々としてやっているような様だった。
そうなると、先ほど予想していたことが当たっていそうだな.....
「村長さん。彼の他にも同じ村の人が、彼のように、あー....失礼ながら、嬉々としてあの連中の手下として動いているやつはいるか?」
「さあねぇー.....私は、見ていないですね。貴女達は、何か知らないかい?」
「申し訳ございませんが、見ていません」
「ワタシも見てないです」
後ろの二人にも心当たりはないようだ。
なら、彼だけか。それなら予想は外れたな。
「おばあちゃん!なんで嘘つくのっ!」
そう安心していると、聞き覚えのある声が聞こえる。
全員の視線がそちらへと向く。
そこには赤に少量の白を混ぜた韓紅(からくれない)色の髪を左右に分け、結ばれている少女、モアちゃんがいる。
「モア、お黙り!」
「クーラ兄が、皆がおかしくなってったじゃん!それなのに、なんで知らないなんて言うの⁈」
老婆の静止を聞かずに、少女は必死の剣幕で老婆に訴える。
「「モア ︎」」
今度は老婆からではなく、その後ろいる女性たちからだ。
「どういうことか、訊かせてもらえるとありがたいんだが?」
「......」
問いに対して老婆は、訝しみの表情を浮かべる。
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