異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

無理、そして謎の美女

 
 しかし受け取ったアズマは、傷を癒そうとせず立ち上がった。
 そんな彼の表情は苦痛を隠しているようだが、全然隠せていない。そして貫かれた所を押さえる。

「ぐぅっ! ︎がああぁっ....」

 すると彼は苦悶の表情を浮かべて膝から崩れ、倒れた。

「ちょっと、アズマッ ︎」
「アズマさん!!」
「え?東っ!」
「うぐあぁぁぁ...はぁ...はぁ....」

 慌て彼に駆け寄ると、先ほどよりも顔色が悪くさらに汗もダラダラかいている。
 明らかに苦しんでいる。

「悪い。はぁ...あぁ.....もう、大丈夫、だから」

 そう言うと彼は腹部を押さえてゆっくりと立ち上がった。
 そんな彼の服には血がべっとりとついており、到底大丈夫そうには見えない。
 しかし彼の表情は少し険しんではいるものの先ほどよりは軽い。

「少し休みましょう?アズマだってかなり負傷したんだから」
「いや、俺は大丈夫だ。それに必要な魔道具は手に入ったんだけど、ちょっと事情があってユキナをエルフの里に置いてきたんだ。彼女のことが心配だし、何より時間が惜しい.....」
「で、でも....」
「すぐに戻るから、皆はもう少し休んどいてくれ。かなりの戦闘だったんだろ」
「それはアズマだって」
「俺は大丈夫だからさ」

 私たちの静止を押し切って出口の方へ歩き始めた。
 しかし少し歩くだけで右へ左へと傾いて慌てて体勢(バランス)を立て直すを繰り返すばかり。

「私が御送り致しましょうか?」
「「「!」」」

 すると彼が向かっていた入り口の陰から、緑の長髪で白色のドレス服にツタの模様が這っており、綺麗な翠眼を持つ先ほどの女に引けを取らないほどの美しい女性が立っていた。
 気配なんて感じなかった。

「何度も悪いけど、お願いしたい」
「畏まりました。それとユキナ様は私の方で既に村の方へ御送りしておきました。今は私の妹達が保護しております。そちらで宜しいでしょうか?」
「はは、そりゃあ至れり尽くせりでありがたいな。でも悪いけど、エルフの里の方へ連れて行って欲しいんだ」
「畏まりました」

 しかしアズマと女性はサナたちの反応などに気がつくことなく話を進めていく。
 そして二人は通路の奥へと消えて行った。

「....なんか、知らないうちにスゴい美人連れていたわね」
「エルフの里で一体何があったのかな?」
「.....それは後で訊くことにしましょう。それよりも東が行っちゃったのだから、あっちを私たちでなんとかしなければならないわ」

 そう言ってキリが向いたのは、先ほどアズマに頼ろうと思って後回しにしたことを片づけなくてはならない。
 未だ助けを求め続けている男性だ。

「彼は私が助けておくから、キリとニーナは服を探しといて。ここに長居する訳にもいかないし、何よりモアちゃんや他の村の人たちのことも心配だわ」
「そうね。人も集まって来ているみたいだものね」

 穴の方を見れば人の輪が出来ており、こちらを覗いて騒いでいる。
 中には裸の人も男女問わずにいたためあまり見るのも悪いと思いすぐに視線を外す。

「それじゃ、よろしくね」

 そう二人に頼み、サナは布を押さえながら壁の方へと駆け出した。

「それじゃあ、私たちも」
「服を探しましょう」

 サナを見送った二人は顔を見合わせ、ほど同時に自身とそしてサナの服を回収するべく、まずはキリが先ほど助けられた位置へと向かう。
 理由はニーナは自身の能力でなんとか掘り出せるが、キリはそうはいかないからだ。
 そのためニーナに一度手伝ってもらい彼女の剣だけでも掘り起こさねばならないのだ。


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