異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

訳、そして後悔

 
 男の話によるとここに来た理由は、とある娼館に通っていた時に親しくなった“ボーノ”という初老の男性に誘われたのだとか。
 そのボーノという男曰く、とても素敵な女性に会いたくないか?っと訊かれたとか。
 酒の席の戯言か、ちょっと高めの娼館の女のことかと思い頷いたとのこと。
 最近娼館に入り浸っていなかったのと、臨時収入が入っており、なおかつ酒で判断力が低下し気が大きくなっていたのもあり、酒が入ったまま初老の男に言われるがままついて行ったそうだ。
 この大人は大丈夫なのか?
 そんな疑問を抱いたが話は続き、連れて行かれた先は本当に高級娼館のような様だったとか。
 その娼館は普通の物と同じで初めに入り口で相手を選ぶシステムだった。
 そこに並ぶはどれも粒揃いで、とても期待が持てたらしい。
 そんな彼女らに魅入っていると初老の男が一人の女、形(なり)的に下女──現役の遊女の元で働きながら、遊女としての仕事を学ばされる少女たちのこと──に連れられて奥へと向かう。
 入り口の遊女たちで期待を胸に進めばどんどん上へ奥へと進んで行くため違和感を感じたとのこと。
 俺は娼館について詳しくないが、男曰く普通は先に身体を念入りに洗ってから遊女の元へと向かうそうだが、その時は入らなかったとのこと。
 さらに気がつけば先頭にいたはずの下女の姿はなくなっていた。
 そのことに気がついた時に、ボーノは足を止めた。
 そして着いた先は周りの部屋よりも一際豪華で美しい装飾が施された部屋に入れと言われた。
 そこにいたのはまさに美の化身のような圧倒的なまでの美女がそこにいたという。
 炎のように艶やかな深紅の髪に海を彷彿とさせる碧眼、細く白い肌がとても美しく。
 顔も整っており、その雰囲気から王女たちの持つ威厳のようなものを感じる。
 そんな美女の笑顔を見た瞬間、思考が飛び、魅入っていたのは憶えているとのこと。
 そしてそんな美女が言ったのが今回の件。
 この復興中の村を襲ってきて、だけ。
 その一言だけ聴いた彼は迷うことなく頷いたとのこと。
 そして詳細はボーノが説明すると言われ、美女は奥の部屋へと去って行ってしまったという。
 その後のボーノの説明は、その村やそこに訪れる冒険者たちを好きにしたくないか?っと言われ、ついでに男たちは奴隷にして労働力にしたり飽きた女もろとも売って金にしようとも言われたらしい。
 仲間も大勢集まっているので、かなり好き勝手出来るぞと唆(そそのか)されたそうだ。
 そして何よりの特典は、今回の件を上手く達成出来ればあの美女(かた)に気に入られるかもしれないっと言われ、やる気になったとか。
 そしてこの家にいた連中は彼が自分のツテで集めた仲間だそうだ。
 外のはボーノが連れてきた連中だそうだ。
 そして隊長というのはこの男ではなくボーノが連れてきたうちの一人で、優男だとか。
 名前は知らず、隊長としか呼ばれていないのだとか。
 そしてそんな彼らがこの村を襲って、ここにいた女たちと数人の老人と子供はボーノと他数十人で別の場所に移動したとのこと。
 先に楽しむつもりだろうと彼らは予想しているらしい。なので理由は知らないとのこと。
 そして連れ出そうとしたら先ほど話し合っていた銀髪の女に、狐の獣人の姉妹が現れたためボーノが人質を使って黙らせついでに連れて行ったとのこと。

「くっ......」

 その話を聞いて、後悔に歯軋りを鳴らす。
 俺がもたもたしていたためにキリたちを危険な目に遭わせてしまったようだ。
 .....いや、確かに彼女らだけならどうとでもなった事態だが、人質がいては手出しし難かったのだろう。
 それに彼女らがいたのなら彼らが占領する前に対処出来た可能性の方が高い。
 つまり彼女らがいない間に襲われ、そしてどうしてかは分からないがキリたちはここに戻って来て、この事態に遭遇したのだろう。
 それは俺が早く戻って来れても変わらなかったはず。
 ここで冷静さを失う訳にはいかない。何が起こったかを見極めろ。
 さっきのは少ーしこいつらの発言に心を乱されただけで、決して冷静さを失った訳ではない。
 そう言い訳しつつ俺が何をするべきかを企てていく。
 キリたちを追って、その連中を全員を捕らえる。
 これでよし!

「それで、その連中がこの村の去ったのはいつだ?」
「き.....昨日の.....昼を少し超えた頃、です....」
「っ!」

 そんなに前なのか!
 てことは本気で急いだ方が良いな。キリたちが無事なのを祈るばかりだ。
 そう焦りを覚えていると、ふと先ほど見た夢を思い出す。
 怪我を負って、知らない男たちと戦っている彼女らの姿を。
 その様を思い出し、この男の話と夢の内容の繋がりが見え始めた。

「くそっ!」

 それを理解した時には、俺は走り出していた。
 そして『魔眼』と『千里眼』を使い、キリたちが向かったであろう方角の霧の残留を探す。
 あれは時間が経てば経つほど霧散する。なので残っている可能性に賭けるしかない。
 さらに見つけたとしても走って行くしか、方法はない。
 こんな時、ゲートがないのが悔やまれる。

「アズマ様、皆様の場所が分かりましたので御送り致します!」

 と、自分の能力の低さとゲートリングをほったらかしにしたことを後悔しているとドライアドからそんな提案が出された。
 そんな都合良く?とも思ったが、この際そんなことは後回しだ。
 今はその都合の良い提案に乗るしかない。

「大至急、頼む!」

 そう告げて彼女の手を握ると、再び身体がふわっと浮いた感覚を覚えると、視界が暗闇で閉ざされた。




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