異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

提案、そして効果


「何を仰るのですか ︎あの魔道具は危険極まりないことは、貴女もよく御存じのはずっ!あの魔道具で、一体何人犠牲者が出たと思っているのですかっ!」

所々掠れたせいで喉が痛いが、気にせず怒鳴った。
それだけ彼女が言っていることは間違っているからだ。
禁忌の魔道具。名前を知らなければ、誰が作ったのか、どんな魔獣から作れらたのかなどは分かっていない。
しかし一つだけはっきりしているのは、その能力はとにかく危険ということだ。犠牲者が出るほどに。

「.....どんな魔道具なんだ?」

すると、今まで黙り続けていた青年が振り返り、そう尋ねてきた。

「........」
「他者の魔力を吸い尽くす魔道具に御座います」
「!ドライアド殿っ!」

ワシが敢えて答えないでいると、ドライアドが勝手に返答してしまった。
ドライアドの言う通り、あの魔道具は触れた者の魔力を吸い尽くす。それもほんの一瞬で、だ。
しかし恐ろしいのはそれだけではない。
基本的には魔力を吸って終わりとなるのだが、時折奇妙なことが起こるのだ。
普段は魔力を吸い尽くされただけなので気を失い、数日で目を覚ますのだが、稀に起きた者の様子が可笑しくなっている。
どう言えばいいか.....
普段の様子と違う喋り方や行動などをするのだ。
犠牲者はすでに三人出ており、その内一人は男だというのに言動が女の様に振る舞う始末。
挙句自分は女だと言い張っていた。
その様はまるで“人が変わった”ようだったのだ。
しかしドライアドの様子を窺うに、その旨を伝える気はないのかすでに頭を垂れ、目を逸らしている。

「はぁ....エルフの魔力量ですら、一瞬にして吸い尽くされる。それに加えて、その魔道具は頑丈で破壊は不可能なのだ」
「確かに魔力が一瞬で吸い尽くされるのは厄介だが、それだけで禁忌としたのか?」

意外と勘の鋭い奴だ。
さて、真実を告げれば彼は挑戦するだろうか?前回で犠牲者が出てからすぐに触らせないようにしたため、恐らく次に触れても大丈夫だろう。
しかしそんな確証はない。
と、なればやはり隠しつつ何か別のことを....

「エルフの長殿が精霊様に魔道具の相談をなされた際に、精霊様からその魔道具についての助言を授けられたため、それ以来この者等は禁忌の魔道具としているのです」

悩ましげに思っていると、ドライアドが助け船を出してくれた。
どうやら本気であの魔道具を使ってワシを納得させたいようだな。
しかしエルフの魔力量ですら吸い尽くされてしまうほどの魔道具。
その許容量は不明であり、奇妙なことも起こる。
そんな魔道具でどう人間であるこの青年ならば、暴走を止められると判断出来るのだろうか?

「なるほど.....まあ、なんでも良いや。その魔道具で認めてくれるなら、悪いんだけど直ぐに出してもらえない?」

青年がワシを促してくる。
あれは出すのも拒まれる品なのだ。ましてやどう証明するかも分かっていない物。
そう思いながらも、青年とドライアドがそれで納得するのならと思い、外で待機しているアーツェに件の魔道具を持って来るように伝えた。
当然彼には驚かれたが、今回は何も言わずに従ってくれた。


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