異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

疑問、そして齟齬

 
「具体的にどこが可笑しいと?」
「レイオをが生まれるまでは普通だった。しかしレイオが生まれてから可笑しくなった.....が、それを言う前に一つ訊きたい。そのホーメイが居なくなった理由は知らないんだな?」
「ああ。全く」
「ふむ.....ならなおさら、か」

 何か自分一人で納得しているようだが、自分から可笑しいと告げているのに教えようとしないことに少々腹が立つ。
 しかしこんなことで急かすのも良くはない。
 そう考え、心を鎮める。

「まず、災いが起こった時にメリッサを止めに行った際に雷が二人に落ちたことが気になった。普通雷っていうのは先の尖った物や背丈の高い物に落ちるんだ」
「それくらいは理解している」

 一瞬青年の顔が驚きの表情を浮かべたが、すぐに元のすました顔に戻る。

「ならこの話は一旦置いておくから、そのことを憶えておいてくれ.....それで次に、レイオが帰ってきた時だ」

 数刻の間を置いてから青年は続ける。

「何であんたは恐かったんだ?」
「何で......あまり憶えていないな。恐かった、としか憶えていない」
「じゃあ、あんたも疑問に思っていたけど何で里の人らは怪訝の表情を浮かべていたんだ?」

 ......そういえば何故だ?今まで疑問に思ったことがなかったが、ワシはあの時、周りの連中が怪訝の表情を浮かべていたのに特に何も思うことはなかった。
 記憶にあるのは先ほど述べた通りだ。そしてあれは実際に起きたこと。
 しかし理由は分かっていない。
 考えろ、昔何があったのかを、ちゃんと思い出せ....

「.....その様子からして、思い当たる節もなさそうだな」

 青年の呟きに確信を突かれた。
 しかし思い当たらないからと言って、この疑問を無視する訳にもいかん。
 何かあったはずなのだから。

「考えられるのは二つ。一つ、単にあんたが忘れているだけ。一つ、実は里の人らがあんたに内緒でレイオをどうかした、って所だろ」

 青年は指を立てつつ説明する。

「ふむ....オレが忘れている、というのは考えたくはないが可能性としてはそちらの方が高いな」
「.....そう来るか」
「ん?どういう意味じゃ?」
「いや....あんたの話の流れではどちらかと言えば後者の方が可能性的に高いから、てっきりそっちで考えると思ってたんだが」
「ふっ、そんなことはあるはずがないからな。ワシが言うのも可笑しいが、時が経てば多少の記憶の齟齬(そご)が生まれよう。それを他者の間違った意見に間違ったまま賛同すれば、それこそ大事を起こし得る。合理的な考えが必要だが、今の場合では前者の方が可能性がある」

 そう笑みを浮かべながら、淡々と答える。
 それにいくら虐げられていたとはいえ、十歳(とお)の子供を里の者らがどうこうする意味もない。
 例えば、レイオがホーメイとメリッサの子ではなく他の者との子だったとしよう。
 確かにそれが外に漏れれば多少エルフの風評が飛び交うやもしれんが、だからと言って困ることの方が少ない。
 我々は今も昔も基本的には森で自給自足の生活をしている。
 時折人間たちの街へ行くこともあったが、本当に稀なため気にする必要はなかった。
 それにメリッサとレイオはほとんど家から出ることもなかった。ホーメイは彼女らのために懸命に努力していた。
 それでもう一度問うが、子供一人をどうこうする意味が本当にあると思うか?
 答えは「ない」だ。
 故に、ワシの記憶に齟齬が生まれただけだろう。
 そう結論付けた。



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