異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
変わりなく、そして聖樹
ワシらは青年のことを無視して、ドライアドが訪れたという調理場に向かう。
それに対して青年が何も言わなかったのもあり出来たのだろう。
そして駆けて件の場所に辿り着けば、数百年前に見たあのドライアドがそこにいた。
緑のロングヘアで白色のドレス服にツタの模様が這っており、綺麗な翠眼。
そんな彼女がゆっくりとこちらを向いた。
彼女の美しさは衰えるということがなかったようで、その美しさに歳を経て枯れかけているワシですら心躍りそうになった。
「御待たせして、申し訳ないっ!」
ワシがその心を抑え込み、荒い息を堪えてそう述べた。
「いえ。では、ついて来て下さい」
凛とした心地の良い声が耳に届く。
彼女がそうささやけば、踵を返してとある場所の方へと向かった。
その方角に、というよりも彼女が訪れた時点でどこへ向かおうとしているかが分かっていた。
場所はこの森の中心にある“聖樹”に行こうとしているのだ。
聖樹は精霊様の加護を受け、魔力によって成長した樹木である。
この樹木の周りには魔獣は寄って来ず、植物は高品質に育つが、その分魔素を多く含むため、食用に向く食べ物は育たない。
それ故に離れた位置で食糧を育てている。
そして以前に述べた滅多に魔獣が里に侵入して来ないというのが精霊様の加護のお陰である。
この加護により魔獣は愚か、人間もこの里に入ることが難しい。
そのはずだったのだが.....
なぜあの連中は入って来れたのか。以前里を襲ったボアアガロンという組織もそうだが、なぜ入り方を知っているのだ?
外の者に教えた憶えはない。
故に.....考えたくはないが、漏らした者がいるのだろう。
そのことも重要なのだが、今は精霊様からの呼び出しについて考えなくてはならない。
恐らく侵入者についてだろう。
言い分が通じるような結果ではない。さすがに被害が大き過ぎる。
ましてや忌み子を森に招き入れている始末。
さて、そうなると我々はどうするべきか?それとどうなるのか?
ワシが長の座から堕とされるので済むなら、喜んで堕ちる。
しかしそうもいかんだろう。侵入を許しただけならまだしも、あそこまで暴れさせた挙句逃げられたのだから。
まあ、この身一つでなんとかしてもらえるように頼んではみるが、そう上手くはいかんだろうなぁ。
本当に、忌み子は災いを招くな。
などと考えていると聖樹のある場所まで着いた。
その場所とは、あの女と東が再び出会った場所から少し先に行った所だった。
あの時、警備隊や護衛隊が周りに広がって護っていたのは、長とそして聖樹へと続く道だったのだ。
故にあの女から引くことなく、その場に残っていたのである。
そして今、彼らの目の前に広がるのは先の方までずっと続いている木々。
そしてその途中には地球の神社の木など巻かれているしめ縄のような物が張られていた。
そのしめ縄がどれほどあるのか、目をやっても全く終わりが見えない。
それほど広範囲にしめ縄が張られているが、見て取れる。
では内側には何があるのか?
そんなの決まっている。
ドライアドがそのしめ縄の先へ進むので、ワシらもそれに続く。
そしてしめ縄を通った先には、先ほどまではなかった、木々の道の先にそれはそれは背の高い樹木がそそり立っていた。
この樹木こそが聖樹なのである。
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