異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
スープ、そして脅威
東の目覚めから小一時間後。
長は東のいる牢樹から離れてまだ残っていた里の後始末に励んでいた。
そしてそれがひと段落し、いつの間にか治りかけている自室で休憩に入れば時刻はすでに昼を超えていた。
空腹を感じながらも解決していない仕事にもうひと頑張りする必要があった。
「ふぅー....それで、どうなった?」
「はっ!」
椅子に腰を下ろしながら、横で控えていた青年の見張りの者があの後についての報告に耳を傾ける。
ワシらと一緒に牢樹から出た忌み子が料理を持って再び中へと入り、青年と一緒に飯を食べたそうだ。
それを聞いた時は忌み子も殺せると思ったが、煮汁(スープ)は全部青年が食したそうだ。
....さすがにそれは可笑しいな。他の食事もある中で煮汁(スープ)だけは全部。
好物が入っており食べ易いからと言って忌み子の分ももらったそうだが、本当にそれだけか?
やはり怪しんで....いや、そうだとしてもなぜ他の物ではなく、煮汁(スープ)を選んだ?
好物、と言ってしまえばそれだけだが....!まさか!まさか毒の有無が分かる能力を有しているのかっ ︎
そんな能力まで有しているのだとしたら、あの青年に毒薬は意味をなさんということか ︎
そして気を失っていても能力を発動させることが出来るから暗殺も不可能。
だからといって真っ向から挑んでも勝機は薄い。
.....どうやって倒すんじゃ?
そして案の定毒薬が効いている様子はないとのこと。
さほど時間が経っていないのもあるが、それでも昨日の時点でもう効くとは思っていない。
計画倒れだが、さてどうしたものか....
「長様。少々宜しいでしょうか?」
色々と衝撃が大き過ぎ、どうしたものか悩んでいた所で牢樹で見張りをしているはずの者が訪れた。
「貴様!見張りはどうした!長様に用があるのなら、私が戻るまで───」
「まあ、待て。何があった?」
「はっ。牢樹に捕らえている男が、長様に話があるので会わせてくれっと申しておりまして....如何致しましょう?」
話。果たして何についてなのか。
毒のことがやはり気づかれていることか、それとも出せと要求か。
拒否したいがそうもいかんな。逆らえば里の崩壊、といった所か....
忌み子が連れるだけあって最悪な者を共にしているな。やはりあの時、始末出来ていれば....!
そう悔やまずにはいられなかった。
「.....あ、あのぉ...長様.....?」
「っ!」
「ひっ ︎し、失礼致しましたっ!!」
数分ほど黙りきり、考え込んでいると不意に声をかけられたため、そのままの表情で牢樹の見張りの方を向けば、怯えた表情を浮かべた。
「───!」
どうやら酷い顔をしていたようだ。
そのことを数秒遅れてから気づき、すぐ様表情を戻す。
「恐がらせて悪かった。話の場を設ける故、少し待つよう伝えよ」
「....!は、はっ!」
牢樹の見張りは逃げるように去って行った。
いや、実際逃げたのだろう。いかんな。気を引き締めねば.....
「先も言ったように話の場を用意し、そこに護衛団と警備隊の団長と隊長、副団長と副隊長を呼び、さらに手の空いている隊員を数人気づかれないように配備せよ」
「はっ!」
指示を受けた見張りが部屋を去る。
「どう、処刑したものか......万が一の場合は、精霊様のお力をお借りするしかあるまいか......」
そして誰もいない自室でたった今思いついた不甲斐ない手段をボヤく。
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