異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
ノーモーション?、そして二撃
「へぇー、面白い事思いつくね」
彼はそう不敵な笑みを浮かべ、同じく正眼の構えをとる。
こちらの武器は『ウォーミル』を使っているとはいえ普通の剣よりも強度は劣る。
そのためあまり剣を交えるのは控えたいが、そうさせてくれるほど相手も優しくない。
まあ折れないように気をつけるしかないな。
そう決め地面を蹴る。
─────────
───────
数十、数百と剣閃を走らせ合い、もう時期戦い始めてから三十分は経とうとしていた。
息も絶え絶えの中、互いに切られた箇所から血が垂れていようとも斬り合っていた。
その間気をつけてはいたが、武器が折れなずに済むことなどなく何度として折れた。
その度に直しているが、その一瞬の隙に切られてしまうことも多々あった。
それでも武器はまだ持ちそうなので、攻める。
この武器を振り下ろせば『風圧』により突風が起こる。それを利用すれば───
「ふっ」
「くっ!」
真っ正面にいればその威力によって身動きもしくは吹き飛ばされる。
しかし武器を振り下ろし、それによって起こった突風を喰らっても彼は踏み止まった。
だが、それが好機だ。
少々動きにくくなっている相手に武器を振り下ろす、フリをして中段回し蹴りをお見舞いする。
「ぐふっ ︎」
風の抑止力が功を成したのか、わずかに彼の反応が遅れ左肋骨辺りに直撃した。
その蹴りの威力によって彼は横へと吹っ飛んだが、一メートル強ほどで止まった。
「うっ ︎」
その時だった。上から強めの風がまるで叩きつけるように吹いた。
どうやら先ほどのフリの際武器を多少振ってしまったようだ。逆にいえば、それだけでこの威力なのだから恐ろしい武器である。
そのうち剣を振る速度に風の力を載せることとか出来たら良いんだが、それはこれが終わってから実験すれば良いか。
今は彼にこの武器を対策される前に倒すのが目的だ。
先ほどの蹴りも利いているようだし、続けて行かせてもらう!
そう決め地面を蹴って少し離れた間合いを詰めようとしたその時だった。
「いいぃぃっ ︎」
彼はあの線をすでにこちらへと飛ばしていた。とっさに身体を捻ってそれを避ける。
いつ放ったんだよ!ちゃんと見てたけど、剣を振った素振りはなかったのに。
まさかノーモーションで撃てるんじゃないよな?そうだったらかなり面倒だな。
あの切れ味と威力のある線をノーモーションで放てるなら戦闘はより厳しくなる。
というか、危うく右腕までなくなる所だったぞ。
「あらら、避けられちゃった」
彼はそう残念そうに言うが、本気で悔しがってはいない。むしろ今の一撃は避けられても良い、と言わんばかりの軽さだ。
この野郎....
「そりゃあ、残念だったなっ!」
お返しとばかりに下から武器を勢いよく振り上げる。
「ぐっ、ああぁぁぁっ ︎」
その風圧に最初は耐えるかと思えたが、すぐに地から足が離れ、そのまま押され後方へ飛ばされる。
俺は追撃するために彼を追う。
彼は木に何度かぶつかったが、風の威力ですぐに突き抜けて進んでいく。
それでも彼は風に抗いながら剣を振ろうとしている。多分能力を使おうとしているのだろうが、やはり振らなければ発動しないのだろうか?
ならさっきのは俺が確認出来ずにいただけなのだろう。
今はそういうことにして、もう時期間合いに入る所まで追いついた。
そして拳で殴りかかろうした時だった。
「....っ!」
その二撃の線は走った。
一本は俺が今、殴りかかろうして構えていた手を肘まで切断して。
そしてもう一つの線は俺を無視して後方へと通り過ぎて行った。
すぐに『千里眼』を発動し、その線の先を観る。『千里眼』に角度など関係ない。三百六十度、全てを観ることが出来る。
するとその線が向かう先にはエルフたちとエルフの長の姿がそこにはあった。
「ちっ!」
距離を置こうと思い多少離れてはいるが、この距離では走った所で間に合わない。
ゲートがあればまだなんとかなったかもしれないが、そんなことを言ってももう遅い。
今は即興で思いついたこのやり方に賭けるしかない!
地面に落ちかけている武器の氷の部分を口でキャッチし、地面に向けて身を捻って斜めに武器を振る。
するとそれによって起こった風が地面に当たり、反射して俺の身体を押す...ことなどなくただ砂を巻き上げただけだった。
「(くそっ!やっぱりダメか!)」
そう悔やんだ時だった。
「ゔおっ ︎」
唐突に森の奥の方から強風が吹きそれによって大量の葉っぱがこちらに流れきて、俺の身体を押した。
なんだ!なんだ!!何が起こってるんだ⁈
そう思っているとぐんぐん押され続けた俺の身体は、線を激突する寸前の所で追い越した。
また、それと同時に風の威力も弱まった。
何がなんだか分からないが、今はこのチャンスを活かす!
彼らが能力に当たる前に、首と身体を捻って再び武器を振る。
その風によって彼ら全員を押す!
範囲や威力は弱いもののあの攻撃を避けるのには十分にあったため、彼らは寸前の所でそれを避けた。
というか避けようと思えば避けれはしただろうに、今誰も避けようとしなかった気が.....
まあ、何はともあれ無事ならそれで良い。
こっちは無事ではないがな。
そう心の中で苦笑しつつ、彼の方を向く。
「 ︎」
しかしそこに彼の姿は、なかった。
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