異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

地下、そしてコロッセオ?

 
 初老が鍵を受け取り奥へ進む。
 建物の中は受け付けを抜けると横丁字路で左に続く廊下の先には二つの扉。
 その扉の近くは少々濡れている。
 またシャンプーの匂いも若干だが漂っている。
 多分お風呂場で、二つあるから男女別なのだろう。
 さらにその先には十字路になっており、先にまだ廊下と十字路が続き、左右の廊下には二つずつの扉が等間隔で置かれている。
 それがさらに縦に三回分続いている。
 しかし最後から二つ目の別れ道の奥の方には階段が見える。それが左右どちら共に見える。
 逆に最後の方は今まで通り壁である。
 そしてその廊下のさらに奥の方に進むと、一つの扉がある。
 今まで木製の簡素な扉だったが、こちらの扉は石造りの扉だ。
 正直色合いが合っていない。
 その扉を初老ではなく他の男性数人で押すとゴゴゴゴッと大きな音を立てながらゆっくりと開いた。

「「「うっ ︎」」」

 扉が開いた瞬間、先ほどまで香っていた甘い匂いと男たちからの臭いが強くなり鼻を刺した。
 それに眉根を寄せていると、息が絶え絶えになっている男たちの横を初老は通り過ぎ、螺旋状の階段を降りて行く。
 薄暗いというのに平然と降りていく。キリたちも顔をしかめめながら、その後に続く。
 階段は石段になっており、目を凝らすと少々ヒビは入っているものの磨かれた石が使われている。
 それに対して壁は普通の石造りで、松明も点々と置かれている。足元だけがこのように良い物を使っている。
 降りれば降りるほど臭いがキツくなっていく。
 かなり辛い。
 そんなことを考えながらも下ること二十数分ほど。ようやく下に着いた。
 そこは石段の時よりは明るい。
 しかしそれはこの通りに松明などの光源が存在する訳ではなく、その奥から差し込む光によって照らされているからだ。
 その光の差す方へ進めば───

「「「っ ︎」」」

 そこにはここが地下であるとは思えないほど広大な空間が広がっており、そこにはアルタイルで行われるあの大会の時に使われていたコロッセオがあった。
 少なくとも外壁はほぼ完璧に模倣されている。
 まるでアルタイルの舞台をここに持って来たかのような精巧さである。
 それを見て驚愕のあまり立ち止まっていると男たちが三人を押し進ませる。
 通路を抜けるとそこには見慣れた風景が広がっている。
 先ほどと同様、中までも同じなのだ。
 中央の舞台から観覧席に通路など。挙句は王の座席すら模倣されている。
 ここまでくると感心する域にまであるが、今は感心している場合ではない。
 こんな所に連れてきたということは、つまり戦わせる気なのだろう。
 それならば三人に分がある。
 彼女らとて冒険者を営んでいるのだから腕は立つし、キリとサナはすでに青ランクまでいっている。
 相手が複数であり全員が武器を所持していてもこの人数程度なら他愛ない。
 しかし自信を持つのは良いが、それが戦闘時に仇となることもあるため警戒は常にしている。
 例えば、観覧席に数人ほどの気配を感じている。

「(呼吸が荒いわね。本気で隠れる気があるのかしら?)」

 その潜伏の甘さに少々怒りを覚えながらも、サナは気がついていないフリをする。

「それにしても、何この臭い....」
「臭いね」
「生臭い臭いも混ざってるから余計に臭いわね」

 そう小声で愚痴を言っていると初老が突然止まった。
 そしてゆっくりと王座がある方に目をやる。
 それが気になり、三人も追ってはみるがただ椅子があるだけで、他には何もない。
 どうやらここだけはアルタイルと違うようだ。あちらは椅子が二つあった。


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