異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

煙、そして的中

 
「戻ってみますか?」

 悩み続けているキリを心配してニーナが提案する。
 それはキリにとってありがたい提案ではある。しかしニーナがそう提案してくれたのは彼女が歯切れの悪い様のままだからだろう。
 そのためニーナは気を利かせてくれたのだろう。
 そのことを申し訳ないと感じてしまっているため、またキリは決めかねているのだ。
 こんな時は誰かが背中を押してやるのが一番なのだが、生憎(あいにく)とこの場にはそうしてくれる者はいな───

「そうね、戻って確かめた方がスッキリするから良いかもしれないわね。その代わり、情報収集の時にかなり能力使ってもらうから覚悟してね?」
「....うん、ありがとうね」

 そう思われたが、サナが淡々と述べ彼女の背中を押してくれた。
 それも、さほどキリに負荷がかからないように配慮されて。
 そしてそれは言い知れぬ不安感によってキリの足を止めさせていた重荷を払拭するには十分な救いことばだった。
 サナとニーナに感謝しつつ、キリは踵を返した。
 それに続いてサナとニーナも村へと向かう。気のせいかキリの走る速さが徐々に上がってきているような、そうサナには感じられた。
 それから数十分ほどが経過し、彼女らがもう間もなく村に到着する辺りまでたどり着いた。
 ちょうどその時だった。
 村の方角から煙が立ち昇っているのが見えた。

「煙 ︎」
「嘘っ、火事」
「急ぎましょう!」

 全員驚きと焦燥に駆られながら再び走り出した。

「っ ︎そんな、何が....」

 さらに数分して三人が村に着くと復興中であったはずの村が再び崩壊していた。
 否、正確には崩壊であった。
 村には彼女らが訪れた際には見かけなかった男たちが村のあちらこちらにいる。数人だが、獣人も混ざっている。
 そこまでなら復興を手伝いに来た村の者たちか冒険者などかと思えたが、彼は全員武器を携えていた。
 そこだけなら問題はなかったが、男たちの雰囲気が可笑しかったため、三人はとっさに木陰に身を隠した。
 そこから辺りの様子を窺う。
 棍棒、農具、剣に刀、槍などを持った男たち。そんな彼らの目はどこか焦点が合っておらず、遠くを観てニヘニヘと笑っている。
 その笑みは下卑ており、見る者を不快にするには十分だった。
 また、そんな彼らから発せられる匂いに鼻の良い獣人の姉妹は眉根を潜めた。
 嗅(か)いだことのあるようでなく、この匂いに引っかかっている記憶とはまた違うように感じられた。
 そんな男たちが何人も集まっているのだ。ただ事ではない。
 ましてや数軒の家からは先ほどと同じように煙が昇っている。
 一体この数十分の間に、何が起こったのかっと一同は模索する。

「キリの予感が当たったわね」
「そうね、残念ながら」

 二人とも苦笑しながらそう言っているが、全然笑い事でないことは理解している。
 笑ってでもいなければ今すぐ飛び出して行きたくなるからだ。無論無策で突撃するほど、二人ともバカではない。
 だから二人とも止まって男たちの動きを観察しているのだ。

「どうします?」

 ニーナが声を潜めながら訊いて来た。
 どうするかで言えば答えは先ほども述べた通りである。

「彼らが何者なのかを断定出来ていないから、もうしばらくは様子見かしら」
「そうね。正直彼ら、異常だし」

 キリの提案にサナが賛同する。その後ニーナも少し考え込んでから頷いた。
 これにより今からの全員の方針が決まった訳だが、ニーナが浮かない表情を浮かべていた。

「ニーナ、どうしたの?」
「モアちゃん、大丈夫かな....」
「──今は祈るばかりね」

 どうやらモアの安否がニーナの気がかりだったようだ。
 それを言われて二人も暗い面持ちになってしまった。

「───っ!二人ともっ!」

 落ち込んでいるとサナの耳がピクリッと動いたかと思うとばっと顔を上げた。
 サナに促されて数秒遅れて二人も顔を上げる。

「「っ ︎」」

 そしてそれを見たとたん二人は思わず息を呑んだ。
 さっきまで彼方を見ていたはずの男連中全てが、彼女らが隠れている木の方へと向かって来ているのだ。


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