異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

説明、そして同伴者

 
 驚愕で固まってしまっている彼女らはもう無視で、話を進めた方が良いだろう。

「それで、彼がエルフの里への行き方を知っているらしいんだ」
「「「「「 ︎」」」」」

 本題を直行で述べると固まっていた彼女らがリプレイのように再び驚愕の表情を浮かべた。
 いや、さっきまでの驚愕の表情だけでなく怪訝な面持ちも混ざっている。
 すると俺との距離が一番近いサナが俺の腕を引っ張って自分の元に近づける。

「ちょっと!恩人なのは分かるけど、信用出来るの?」

 そう耳元でささやく。
 ま、そこだよな。

「正直断言なんて出来ない。だから──」

 サナにそう小声で返してから、みんなの方を向く。

「彼の案内へは俺一人だけを連れて行ってもらおうと思っている」
「「「「!」」」」

 これが彼女らが抱いている疑問への返事だ。
 ただゲートが使えないことを察してもらう必要があるが、まあ多分大丈夫だろう。

「みんなには当初の予定通り、情報を集めて探してもらいたい。時間をかけさせることになるけど頑張って欲しい」

 これからの説明を終えたが、ニーナとユキナは考え込んでいてサナとキリはお互いを見合わせた後に俺の方を向き頷く。
 どうやら二人は了承してくれたようだ。
 その数十秒後にニーナとユキナが顔を上げてこちらを向く。

「「私(わた、し)も行く(きます!)」」

 そう示し合わせたかのように同時に言う。
 全員交互にタイミング合うな。
 ニーナがそう宣言するのは意外だったのかユキナがニーナの方を驚きの表情で観ている。
 対するニーナは動じずじっとこちらを見ている。
 俺やキリも意外だったのでニーナの方を向いたがサナは呆れた顔だが笑みを浮かべて見つめている。
 ユキナの方は最初のエルフの里の宣言のことも考えると、今回申し出るのも予想は出来ていた。
 確かにこの情報でエルフの里に行ければ彼女がいた方が良いだろうし、デマだったとしてもゲートの使えない状態でも彼女なら帰還出来る。
 彼女もそれを踏まえての申し出なのだろう。
 対するニーナはどうしてだろうか?
 エルフの里のことについてはあまり詳しく知っていないと言っていた。
 しかし彼女の機転の良さや細かいことにも気がつける洞察力はエルフの里で今後の策に対して見つけてくれるかもしれない。
 それに彼女の能力はまだまだ応用が利くはずだ。
 エルフの里でやもし彼が何かした際に色々助けられるだろう。
 しかしそれはユキナにも言えることだ。
 さて、どうしたものか.....

「早くしてくれない?それにあんまり大勢で行きたくないんだけど」
「分かった。しかしすまないがもう少し待ってくれ」
「.....」

 待たせ過ぎたようで機嫌を悪くしてしまった。
 不機嫌な表情でこちらを睨んでいる。
 これ以上待たせてより機嫌を損ねて今回の件をなしにされては敵わない。
 ここは──

「ニーナには悪いが、エルフの里へはユキナを連れて行こうと思う」

 決断の結果ユキナを選んだ。
 対応力や洞察力などでニーナに頼りたかったが今回はユキナの能力や情報も俺らよりも多いので同行してもらうことにした。
 ニーナが気を悪くしないと良いのだが....
 そう不安感を抱き、再び考え込んでしまったニーナに視線を向ける。
 こちらの視線に気がついたのかそれともタイミングが合ったのかニーナがこちらに向き直り、こくりと頷きにっこりと笑みを浮かべた。

「分かりました。ではお願いしますね、ユキナ」
「ん、任せ、て」

 どうやら杞憂だったようだ。

「....決まったの?」
「ああ、待たせてすまなかった。案内を頼む」
「.....」

 時間をかけ過ぎたのか少々声色が低くなって彼に催促された。
 なのですぐに返答し、頭を下げて頼み込む。
 しかし数十秒以上経っても動くことがなかったので頭を上げるとさっと翻ってスタスタ歩いて行ってしまった。
 やはり待たせ過ぎたのだろうか?
 そう思っていると再びサナに腕を引っ張られた。

「あの人、気をつけておいた方が良いわよ」
「ああ、一応警戒はしておくよ」
「....多分あなたが考えている事と今の意味、違うわよ」
「?どういうことだ?」
「さっき彼の───」
「おいっ!行かないのかっ!」

 声を潜めて会話をしていると男が今まで出したことのない声量で怒鳴った。
 サナの話も気になるが彼をこれ以上怒らせる訳にはいかないので、サナには悪いが会話を途切らせて彼の元へと向かう。

「悪い、悪い」
「.....」

 やはり不機嫌になってしまったのか鼻を鳴らしながら翻り、部屋を出る。

「ユキナ、行こう」

 一緒に行くユキナに声をかけるため振り返るとユキナとサナが何かを話している。
 多分先ほどのことを話しているのだろう。
 しかし俺が呼ぶとユキナが数回頷いてからこちらに駆けてきた。

「行こ」
「....ああ、行こう」

 また彼女のことを考えてしまったが今は気を置いていられないで、それを振り払って彼を追う。
 しかし東は今回の選択によって最悪を呼ぶことになることを彼は知る由もない。


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