異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
場所探し、そしてお尋ね
リハビリを終え、迎えた模擬試合当日。
キリやサナがみんなにも聞いて回ったようで模擬試合にユキナとリリーも参加するようで、それぞれ軽装で集まった。
いつもより早い時間に朝食を軽めに摂(と)ってからゲートで良さそうな場所、今日は朝から雨が降っているので濡れて地面が悪くなっている場所を探す。
足場の悪い場所を探すのは地形の良い場所ばかりで魔獣と戦う訳ではなく、また泥は足を取られ易いので戦闘面でも体力面でも鍛えられる。
基本的には庭や平原でやる。
おおよその当たりをつけてゲートで地面を確かめながら探すこと数分。
数回目で良さそうな場所が見つかった。
場所は王都からアトラス州へ向かう途中の東側にあるちょっとした丘。
その丘はそこらかしこに石や岩などが転がっている。なのでそれも混えてこの場所は模擬試合に適している。
場所が決まったので早速出発!
「旦那様、お客様がぁ、いらっしゃってます〜」
と、思った所でルーシィさんが部屋にノックしてから入ってきて来客の報(しら)せを持ってきた。
タイミング悪いな。
「えっと、誰が?」
「冒険者ギルドの者だとぉ、申してました〜」
「ギルドの、ってティアさん?」
「いいえ〜、ファブル様と仰っていましたぁ」
「ファブル?」
聞いたことないな。ちょっと行ってみるか。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
みんなに謝ってから応接室へ向かう。
部屋の中に入ると中肉中背の紳士的なご老公が立ち上がって礼をしてきた。
「どうも、お初にお目に掛かります。私、冒険者ギルドでギルドマスターティアの秘書をしておりますファブルと申します」
「ご丁寧にどうも、桐崎です。とりあえずおかけください」
「失礼致します」
ファブルさんは再び一礼するとすっとソファに腰掛けた。
それに伴って俺も反対のソファに座る。
「それで、本日は何用で?」
「はい、ですがまずは今回こちらに伺わせて頂いた件について本来ならばギルドマスターティアが伺うべきでしのですが、彼女は急な用件で来る事が出来ない事をお詫び致します」
そう言ってファブルさんは立ち上がって深々と礼をする。
俺はそれを解して、話の続きを待つ。
彼は少し間を置いてから厳かに口を開いた。
「実はキリサキ様にお伺いしたい事がございまして....」
「伺いたい、というと?」
何かしたかな?そう思いながら少し言いにくそうにしている彼の答えを待つ。
「その.....ですね。こちらにアンタレス王国で窃盗(ぬすみ)を働いた者がいる、と報(しら)せが入りまして....」
「え....」
ファブルさんの発言に血の気が一気に引いたのを感じた。
「え?は?...え?」
思ってもいなかったことを言われたため動揺が隠せずに少しの間あたふたしてしまう。
「で、でもあれは何もしてないユキナを勝手に奴隷として売られそうになったからで!いや勝手に領地に入ったり、槍折ったり、兵隊たちに手を出したけどこれは彼女を守るための不可抗力で!」
「落ち着いて下さいキリサキ様!私が今回の件で聞いていますのは少年の話です」
「?だから俺がユキナを盗んだって言いたいんじゃ?」
「いえ、聞いていますのは、『とある男の家宝の頸鉄鎖(ペンダント)を少年が盗まみ、さらに暴行まで加えられた』と」
「.....ん?」
なんのこっちゃ。全く身に覚えのないことを述べられた。
「えっと、なんのことだか....」
「こちらがその少年の絵です」
「 ︎」
そう言われて茶封筒から出された紙に描かれていたのは、リリーだった。
「何かの間違いじゃ?」
「いえ、しっかり証言を得ているとの事ですのでそれはないかと」
「うえ.....」
驚きのあまり変な声が出てしまった。
落ち着け、落ち着いて考えよう。
確かに俺らがアンタレス王国に行った時にリリーは男に追われていた。途中で聴いたのは「へへ、こいつはサヘル様に渡すか」からだった。
なので何があったのか訊いてみた所、急にあの時の男が「この泥棒がっ!」と殴ってきた。
否定をしても聞かずに「早く返せ」とまた殴ってきたため逃げ出したそうだ。
警邏ーーアンタレスでは違う名称らしいーーへ向かおうとしたが途中で追いつかれ殴られたそうだ。
すぐに違うと言いたかったが脚がすくんでしまったのと恐怖で何も言えなくなっていた所さらに殴られた。
さらに知らないうちに自分のポケットの中に指輪が入っていた、とのこと。
念のため彼女の能力を彼女自身にかけてもらった。
効果は『桐崎 東に対して嘘をつけない』。彼女曰く、能力を具体的にするとより効果が確かになるらしい。
なのでその時の彼女は俺に嘘をついていない、はずだ。
だから話が食い違っているのだ。
リリーは指輪が、その男は家宝のペンダント。どう考えても間違えるような物ではない。
さて、ではこれは一体どういうことなのだろうか?
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