異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

防衛隊、そして防御技

 
 バジルに注意しながらも俺らはワイバーン討伐隊へと追いつき、街へと帰ってきた。
 街には最終防衛隊が幾人かいた。
 聞くと、街の住人や俺らが西へ行って帰って来るまでの間にここを訪れた冒険者などにも協力要請を頼んだ結果がこの防衛隊らしい。
 相手が相手だけあって冒険者の中にはそれなりの腕の者もいるようだが、それ以上に名を上げようと軽いノリの者の方が多い。
 そんな彼らにワイバーンのことを伝えると、まあさっきと同じように賛否両論状態になった。
 何人かで言い合いを繰り広げているがやはり俺の意見を信じている者は少ない。

「だいたいなんでこんなに人がいて去って行くのを観たのがこの小僧だけなんだよ ︎」
「「「そうだ!そうだ!」」」
「だから偶然だと言ってるだろう!」
「それじゃあ、納得出来るか!」
「街に被害が出てからでは遅いんだぞ!」
「その子どもが見間違えた可能性だってある!」
「確かな証拠を持ってこいっ!!」

 という感じのやり取りが繰り返されている。
 討伐隊の方で揉めていた時とほとんど会話が変わっていないのがまたなんとも言えないな。
 それに対して当の本人である俺はだんだんと面倒に思えてきてしまった。
 もうこれ以上揉められて結果この街を見捨てられたりして家庭内暴力の可能性を無視するのも、ギルドから討伐依頼を受けて来る冒険者にも少々不憫(ふびん)な想いをさせるのも忍びない。
 信じてもらえるかは分からないがやってみるだけやってみよう。
 半ばヤケになり、三頭のワイバーンの下と、街の外にゲートを繋ぐ。
 ワイバーンには悪いが少し高い所から落として地鳴りを響かせてもらう。

「な、なんだ!今の」
「何かデカい物が倒れたのか?」
「もしかして、違う魔獣が攻めて来たんじゃ ︎」
「嘘だろ ︎」
「今の音の方角って!」
「俺らが来た方角じゃ!」
「ワイバーン達か!」

 そう疑問を投げ合う中、二人が走り出した。
 両者ともフードとローブで性別は分からないが、片方は背丈が高く、肩も広いから多分男。
 もう片方は隣を走る男よりも低く、肩辺りの背丈。ローブのせいもあるが特に突出ている様にも見えない。それに脚が内股ではないし多分こちらも男。
 武器は双方とも剣。背の高い方が俺と同じタイプの剣で刃の幅が広く、普通の剣より折れにくい。
 低い方はロングソード。ただこちらは刃の幅が狭いな。スピード重視なのだろう。
 まあ鞘の形からの予想なので合っているかは抜いて観てみないと分からない。
 そうこう言っている間に言い争っていた討伐隊と防衛隊の数人が街の外へと出た。

「な、なんだよ...これ」
「冗談にしちゃあ、厳しいぜ?」
「ワイバーンが、三頭とも....」
「い、急げ!すぐに全員を呼び集まらせろ!!」
「ここは絶対に死守するんだ!」

 予想通り混乱するよね。
 いきなりワイバーン達が街の外に現れたらね。

「ストーープッ!ストープッ!待ってくれ!こいつらは今動けないから!」

 全力の大声でこの場を静止させようとする。
 しかし俺の声が聴こえていないのか聴こえていてあえてスルーなのか。
 いや動けないとか聴いたらさすがに黙るか。じゃあ聴こえていないだけか。

「こいつらはっ!今!動けないからっ!待ってくれっ!!」

 さっきよりも大きく叫ぶがやはり誰も聴いておらず戦闘体勢や隊形、仲間を呼びにはたまた逃げるために走って行くなど。
 その中でさっきのフードの二人が剣を抜き、ワイバーン達へと襲いかかる。
 三本の閃光が輝き、ガキィンッ!という金属同士が当たる音と、ガッ!という音が一瞬のみ響く。

「「 ︎」」
「だから、待てって言ってるだろ!」

 剣で背の高い方の剣を防ぎ、左腕で背の低い方の剣を止める。
 そして両腕に力を入れ、それぞれの剣を弾き返す。
 腕で受け止めると言ってもさすがに生身では無理なので『ウォーミル』を使った。
 毛穴からは極僅かに水蒸気が出ているそうだ。後は脂汗なども。さらに筋肉や皮膚には水や血が流れている。
 それらを凍らせ、筋肉の収縮とで剣撃を防いだ。
 ただこれ、連続して使えないのが欠点である。
 まず腕の皮膚を凍らせるのだがこれがすっごく痛い!冷たいという感覚が消え痛みだけが残る。これが欠点だ。
 こんなバカなことをやるな、と言いたくなるが実はこれ防御面では優秀なのだ。
 かき氷機で氷を削れるのは下が削るのもあるが押す力があるから削れるのだ。それに凍った肉って包丁じゃあ引いてもほぼ全く切れない。
 剣を引いたところで押す力がなければ削れない。
 それに今回の攻撃は俺が剣を強く押して受け止めているので相手の押す力が弱まったいる。
 これがあの女と戦っていた時に思いついた防御技だ。
 彼女に腕を貫かれた時は焦ったが、とりあえず喜びによって出来た隙を突いて身体を捻って攻撃し、距離を取った。
 そしてすぐに刺された所に触れ『ウォーミル』で応急処置をした。
 あれは本っっっっ当に痛かった!
 血液の温度を急激に上げて火傷が起こるほどの熱にし肉を焼き引っ付けた。絶叫しなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。
 もちろん他の血管に影響がないように『ウォーミル』で挟んで、怪我した場所だけ。
 それによって思いついたのが逆のやり方のこの防御技だ。
 そしてやって後悔したのは言うまでもない!


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