異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

後処理、そして疑い


彼女らの霧を辿り、ワイバーンが倒れている場所へと着いた。
周りに気配は感じないから多分撤退したのだろう。
ワイバーン達は今は『麻痺』によって数十分は全く動けない。まあ呼吸などは出来るようにしてあるので死にはしない。
それを見抜いてこいつらを置いて行った。中々に良い判断力だと思う。
というかさすがはワイバーン。あの高さから落ちてもそこまで重症には見えない。
その強固な身体のお陰で助かったとも言えるけど。

「多分回収しに来るよな?」

そう考えるとまたこいつらを使って街の方へ行かれると厄介だな。
ここは事前に『ウォーミル』を使っておくか。そうすれば襲って来てもまた墜落させることが出来る。

「よし、こんなものかな」

三頭に『ウォーミル』を使い、ついでに動けない時に魔獣に襲われないようにキリクル玉を潰して置いて置く。
ワイバーン達には辛いかもしれないがこれで他の魔獣達はしばらく近寄って来られないので許して欲しい。
念のため水は置いておこう。

「じゃあ」

俺はゲートを最初に彼女を見た場所へ繋ぎ、その場所へ飛ぶ。
ワイバーンに遭遇した討伐隊の人たちの中にはその場で腰を抜かしたり気を失ったりしてまだ近くにいるので彼らを起こしてから街に帰らなければならない。
俺一人帰ってワイバーン達追っ払ったって話ても信用されるとは思わない。
それにワイバーン達が先に動けるようになったら彼らが危ないし。なら面倒でも一人一人起こして一緒に帰った方がまだ良い。
ただ討伐した訳じゃないから証拠になる物がないから彼らや街の人々に追っ払ったって信じてもらえるか、これも怪しいところだけどね。
そう思いながら一番近くにいるおっさんから起こして行く。起こせば起こすほど後は楽だった。
両方の眼の能力を使えば離れた場所にいても探せるので問題ない。ただ集まった人数が出発前より少ないのは残念だが、帰還出来たと祈る他あるまい。
さすがに全員分の色は覚えていないのだから。
さて、とっとと帰らないとな。

「そんな事信じられる訳ねーだろっ!」
「しかしこの場にワイバーン達がいない以上、信じる他ないだろっ!」
「だからそれが出来ねえって言ってんだ!」

と思ったけれど、残念ながらまだ無理そうだ。
彼らを起こした時にワイバーンは?と聞かれたので「どこかへ飛んで行った」と言ったが俺だけが知っているということで賛否両論になっている。
気持ちは分かるけど今はここから離れないと結局ワイバーン達が動けるようになってまた現れるかもしれないから早く帰った方が良いんだけどな。
でも「今動けないからさっさと帰ろう」って言っても信じられないだろうし、なんなら討伐しに行くだろうからダメだな。
そこから数十分くらいは言い合いしていた。
そこで少し流れが悪くなっていった。
俺のことを信じていた人たちが疑っていた人たちの意見を聴いていくうちに徐々に疑う側へと移っていった。
マジかよ.....
そのせいか俺への攻めの問い詰めが激しさを増してきた。
いや、どうしようか。

「!おい、もしかしたら既に街の方へ行ったかもしれねえぞ ︎」

どこからともなく聞こえた聞き覚えのある声。その声により周りが一気にざわつき始めた。

「た、確かにありえる」
「今すぐ撤退だ!走れっ!」
「遅れた奴はブッ飛ばす!」

そう言って全員走り出す。俺だけ置いて。

「助かったけど、なんでここにいるんだ?」

そう言いながらその男がいる方を向く。

「バジル」

そう言うと彼は木の影から姿を現した。
以前と特に変わりない姿の爽やか笑顔を浮かべるバジルが立っていた。

「やあ、久しぶり。あはは、バレてたなんて」
「バレたくないなら、声出すことないだろ」
「困ってそうだったからね」
「ああ、それは感謝してるから俺の質問答えろ。なんでここにいる?」

笑顔で誤魔化そうとしているがそんなのでは無理に決まっている。
まあ、おおよそ想像が付くけどな。
魔獣を従えさせる能力なんて他にもある可能性は大だが、俺が思いつくのは彼くらいだ。
というかこの予想が当たるとこいつワイバーンまで従えさせられるのか。

「んー?僕は仕事でこっちに来ていたんだよ。まあ森で迷っちゃってウロウロしてたら声が聴こえたからここに来ただけだよ。安心して行ってみるとアズマが困ってたから話の内容を聞いて嘘をついただけさ」

バジルは笑顔のまま嘯(うそぶ)く。
ウロウロしていたと言ったがその時にワイバーン達の鳴き声が討伐隊の悲鳴に気づくことなく。
また逃げて行った討伐隊の誰かとの遭遇などもなかった。
可能性としてはありえるが低い確率だ。

「そうか。俺はこれから街に行くから一緒に行こう」
「そう言ってくれると有りがたい。アズマが一緒なら森は怖くないな」

バジルが再び笑顔で嘯く。
本当に怖いと思っているのなら俺を助ける前に姿を現して街へ向かった討伐隊と一緒にいた方がより怖くないだろう。
まあ、別に良いけど。
少しバジルを疑いながら俺らは討伐隊の面々の後をかなり遅れて追いかける。


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