異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
確認、そしてお金
少女は少し黙り込んだ。
「で、でも....あのお兄さんが...知らなかった、だけ....ですよね」
少女は独り言を言うかのような、もしくは俺に確認するかのような。そんな弱々しい声で呟く。
さて、俺はどう答えるべきか。確信はないが知っていた可能性は高い。
ゴルゴッコの実はその危険性から普通の店などでは売られていないし、販売するためにはギルドから許可を得ないといけない。
また必ず効果や対策なども購入した際に説明される。
水や酒に弱いとはいえそれで完全に魔獣が寄って来なくなることはないなど。
ということを伝えるべきか、否か......
「....そうかもね」
ここは止めておく。
それのおかげなのか少女は少し安堵の表情になった。
「おや、旦那様。お帰りでしたか」
ドアが開いた音がしたので振り返るとメルマンさんがタオルを持っている。
「メルマンさん、少年の具合いの方は?」
「ご安心を。問題なく処置も完了しました」
「だ、そうだ」
再び少女へと視線を向けるととても嬉々とした表情になっていた。
メルマンさんは持ってきたタオルを水に浸してからしっかり絞り、浸していないタオルを敷いてから少年の首裏辺りに置いた。
その後他のタオルを脚の下に置いたりと色々やり始めた。
あ、そういえば、
「君たちが着ていた装備だけど結構汚れてたから洗おうと思ってるけど問題はなかったか?」
こう訊いているのは武具を他人にどうこうされるのを嫌う者がいるからだ。
壊されたり傷付けられたりするのが嫌なのだろう。
散らかった部屋を誰かが勝手に掃除してしまうと必要な物がどこへ行ったのか分からなくなるから掃除されるのを嫌うのと同じだろうか?
それと傷や破損の部位もあるから修理に出しても良いか訊きたいし。
彼女らが使っている武具はどれも店で売っている初心者用でセットで売っている物。サイズ調整は金を出せばやってくれる。
「大丈夫、ですけど。そこまでやって頂く訳には....」
「気にしなくて良いさ、それと破損しているみたいだし俺の知り合いの鍛治士に少しの間修理に出そうと思ってるけど、それも問題ないか?」
「!...えっと、私達....あ、あんまりお金がなくて....は、払えないと思います.....ごめんなさい」
?なんでこの子、謝ってるの?お金がない家なんていくらでもある。
現に俺の家がそうだった。父さんが死んでからしばらくは保険金でギリ生活出来たけど、中学の頃くらいから厳しくなった。
だからその頃からバイトしまくって何とか日々の食事代を稼いだりして生計を立てていた。
これは全員が平等ではないから起こる問題。それによってお金がない家に生まれた子は苦労する。
苦労している子がお金がないからとなぜ謝る必要がある?ないだろ。
「(だから)謝る必要はない。そのことは君が謝ることではないし、その少年も、そして君らの親が謝ることでもない。だから気にするな」
全部悪いのは誰なのかで言えばある意味では神様なのかもな。
「さて、こんな辛気臭い話はお終い。修理費は俺が出そう」
「え、でも....」
「辛気臭いのは終わりと言ったろ?それにこれは俺が出したいから出すと言っているだけのこと。君が考えるのは修理しても良いかどうか、それだけだ」
かなり強引だけどこの際理屈はゴリ押しで何とかしよう。
少女は少し考え込んだ後、小さく頷いた。
「よし。それと動けそうなら風呂に入ると良い、身体が温まってよく眠れると思うしな」
目線をメルマンさんに向けると彼は頷いた。問題ないようだ。
一応病み上がりだし誰かに付いていてもらおう。
「あ、ありがとうございます!」
少女はベッドの上で深々と頭を下げた。
俺はそれを微笑ましく思いながら部屋を出た。
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