異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

アイス、そして真実

 
 今度こそアシュさんから離れ、街まで走って行くことが出来た。これでようやくゲートを使って帰ることが出来る。
 そう思いながら荒い息を整え、路地裏に入りゲートを家に繋ぐ。
 ゲートを潜ると家に着く。

「あ、アズマ。おかえ、り」
「ただいま」

 家に着くとちょうどユキナがお風呂から上がったようで水玉模様の入ったピンクのパジャマを着て、頭から薄っすらと湯気が立っている。

「メルマンさんってどこにいるか知らない?」
「彼な、らさっきタ、オルとか持っ、てどこ、かへ走って、った」
「そのどこかは」
「....知らな、い」

 まあ今お風呂から上がったようだしね、仕方ない。

「ごめんな、さい」
「いや、風呂上がりだったんだ。気にするな」

 そうフォローしてから別れる。
 ユキナは部屋に向かって...ということはなく食堂に向かった。
 みんなお風呂上がりに食堂に行くようになった原因は俺にある。
 ただ単純だ。俺がアイスを食べたいから一日かけて王都中を廻り回って材料集めて試行錯誤しまくった。日本で数回作っていたのでだいたいの手順は憶えていたから。
 なので作ってみたらみんな気に入ってしまい食べ過ぎで数人腹痛を起こした。
 メルマンさんが大忙しとなり、『一日一アイス』という決まりが出来た。
 それでユキナたちはお風呂上がりというベストタイミングでアイスを食べている。
 そんなことを思い出しながら医務室へ向かう。
 ユキナの話ではタオルを持っていたそうなのでもしかしたら何かあったのかもしれない。俺にも何か手伝えないかと思ったからだ。
 医務室のドアを開けるとちょうど少女の方がベッドから上半身を起こして遅めの昼食?を食べていた。
 しかしドアが開いたので視線はこちらに向いていた。そして慌ててベッドから下りようとするのを止める。

「身体は大丈夫か?」
「は、はい!お陰様で助かりました!あ、ありがとうございましゅ!」

 少女は頭を深々と下げて最後噛みながらもお礼を述べた。

「成り行きみたいなもんだったし気にしなくて良いよ」
「で、でもそれでは....」
「それよりも起きたばかりで悪いけど君に訊きたいことがある」

 少女が何か言いたげだったが無視して俺は宝物庫からゴルゴッコの実を取り出す。

「これは知ってるか?」
「はい、ゴルゴッコの実、ですよね」
「どういう物なのかは」
「しっ、知ってます!ケットシーという魔獣の背中に実る実で、ゴブリンが寄ってくる実です。ただ寄ってくるかは賭けみたいですけど」
「うん、だいたい合ってるな。ただ少し違う部分もあるみたいだな」
「?」

 俺はそこからゴルゴッコの実について話した。
 まずゴルゴッコの実について話前にその実を実らせるケットシーについて話した。
 ケットシー、地球ではケット・シーと呼ばれるアイルランドの猫の妖精。こっちのはどちらかといえばモモンガに近い見た目だ。
 そのケットシーの背中にデキモノのようにゴルゴッコの実は出来る。オナモミを想像すると簡単だろう。
 そしてそのゴルゴッコの実の匂いは魔獣たちを寄せつける。その数は多く、賭けで寄ってくるなどない。
 実の匂いは魔獣たちにとって理性を失う可能性すらあり、魔獣はゴルゴッコを求めて集まった魔獣同士で戦う。
 そしてその勝者をケットシーは捕食する。
 そのケットシーの討伐難度は『赤』。勝ち残って疲労している魔獣が勝てる相手ではない。
 ただその匂いの沈静が結構簡単で、まず水に溶けやすい。アンモニアに似た性質だと思った。これによりケットシーは湿地帯や雨の降る場所を嫌う。
 またアルコールにも弱い。詳しくは知らないけどさっきの理屈通りアンモニアと同じならアルコールによる消臭効果なのではないかと思っている。
 現に少年が持っていたゴルゴッコの実が入った袋の中には酒が入っていた。
 それに加え魔獣が寄ってくる量もそんなにだったのであながち間違いでもないのだろう。
 これらの話を聞いていくうちに少女の顔色は徐々に悪くなっていった。
 無理もない。

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