異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
攻略者?、そして悲鳴
目的の物を手に入れることが断たれてしまったし、色々な謎も見つかるしで踏んだり蹴ったりだな。
とりあえず帰ってまた何か考えるか。
そう思いゲートを繋げるためにこの場から離れ、ようと思ったけど少し良い案が思いついた。
「なあ、頼みたいことがあるんだが」
「何か?」
「悪いんだけど、このダンジョンの最下層である物持ってきってくれないか?」
「.....」
思いついた良い案とはアシュに最下層まで行ってもらってあの転移の机を持ってきてもらうというなんとも素晴らしい考えだ。
他人任せだが、彼女の実力なら余裕だと思う。
「....残念ですが、その頼みを聞く事は出来ません」
と、あっさり断られてしまった。
まあ、さっきまであんな探り合いしていた相手の頼みなんて聞けないよな。ましてやダンジョンへ行ってくれなんていう頼みは。
「そうだよな、悪かった変なことを言って。どうか忘れてくれ」
俺がそう言って立ち去ろしたが、次の彼女からの質問に足を止めた。
「何故貴方は、あの卓を求めているのですか?」
「卓?さあ、何のこ...」
「探りはもう良いではないですか」
「....はぁ、何で知ってるの」
「何故求めているのです」
「.....欲しいから、それ以外に理由はないさ」
「....」
彼女は何かを考えているのか黙ってしまった。
おおよその検討は付いているけど、一応訊いておくか。
「あんたこのダンジョンを攻略しているな」
「.....」
しばらくして彼女は頷いた。
彼女の実力なら攻略出来ていても何の不思議もない。それは分かる。しかしではなぜ彼女は転移の机を知っているか、が問題になってくる。
転移の机があったのは隠し部屋内。その隠し部屋の入り口は壁に見えるような幻覚がかけられていた。俺は魔眼で分かったからこそその部屋に入ることが出来た。偶然見つけた可能性は低い。
誰が好き好んで何もないボス部屋を隈(くま)なく探す人間がいるものか。ましてやヘトヘトになっている状態で(俺たちはしていたけれど)。
つまり普通なら見つけられるはずがないのだ。
と言っても彼女が俺と同じ能力を持っていれば話は変わるけれど。
だが、それを差し引いても彼女の発言は明らかに最下層までは行っているはずだ。なぜなら俺は転移の机について誰にも話していないのだから。
デオルさんに話したのは存在するか訊いただけで詳しくは言っていない。
「まあ、いいや」
俺はそう言い残し今度こそこの場を離れる。
少しのつもりだったのにまあまあ時間がかかってしまったな。
歩くスピードを上げて彼女から離れる。気配を殺しながら、眼で捉えることの出来ない所まで歩き、いやこれはもう走ってるな。
彼女がどれくらいの範囲を見渡せるのか分からないので、街の近くまで行っておこう。
「うわあああぁぁぁぁっ!」
「!」
彼女から結構離れてあと少しで街へ着く辺りで叫び声が上がった。これは男性だな、大方森の中で魔獣と出会(でくわ)したのだろう。
声の方向へ進路を変えて全力で向かう。
「間に合ってくれよ」
そう祈りながら進んで行き、木と木の間から男性が上体だけを起こして倒れているのとさっきのトロルの姿が見えた。
くっ、間に合えっ!
しかし俺の願いを無視してトロルは振り上げていた太い棍棒を男性へと振り下ろす。
「ふっ!」
「 ︎」
瞬間アシュさんがトロルの横側にある木の間から現れ右腕でトロルの首を切断した。
トロルの首がボドッと地面に落ちると少し遅れて身体が重い音を立てて倒れた。俺は首が落ちる辺りで男性の所に着いた。
「怪我をしていますね、薬はお持ちですか?」
「....へ?」
彼女は男性の方へ向き直るとそう尋ねた。男性は混乱しているのか間の抜けた声を上げたがすぐに首を縦に振った。
男性の格好は冒険者の装備だ。
「.....」
「何か?」
「いや、なんでもない」
俺が彼女をじっと見ていたためそう問われたが誤魔化す。
彼女を見ていたのは彼女がトロルの首を切り落とした時に彼女の腕が薄くだけど青白く光っていたのが気になったからだ。
しかし今は光っていない。
....っと、そんなことより!
「悪いけどこれを使ってあげてくれ」
そう言って俺はアシュさんに治癒核の欠片を投げる。それを彼女は見事にキャッチした。
「これは...治癒核?」
「ああ、俺は急ぐんでアシュさんに任せる」
「良いのですか?これはこの大きさであってもかなりの品ですよ」
「別に構わないさ、彼のその脚を見てその程度で惜しんでいても仕方ないしな」
彼女は男性の脚の様子を見て薬について訊いていたが失礼ながら多分そこまで良い薬ではないだろう。
医者や薬師が調合した薬は高すぎて普通の冒険者では買えないらしい。なのであまり持っている物は期待出来ない。
話を戻すが、男性の脚は完全に折れているのが一目瞭然の状態。それにズボンで隠れているが血が滴り落ちている。
これは流石に放って置く訳にはいかない。
なら自分でやれとも思うけどやっぱり女性にやってもらう方が、なんか良いじゃん?
「じゃあ、後よろしく」
それだけ言って俺はとっとと街を目指す。
背後からアシュさんの声が聞こえたような気がするけど気のせいだろう。
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