異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

他の魔獣達、そして助け

 
 逃げ始めてからかなり時間が経ったと思いますが、まだ森から抜け出せていません。
 ずっと真っ直ぐ走っているのでそろそろ出るはずなのですが、その気配は全くありません。
 それにニグを抱えながら走るのは思っていた以上に辛く、大変です。
 見え難い森の中で迫り来る木々を避けながら全速力で逃げます。茂みで時々痛みを感じましたが、今は気にしていられません!

「グギャァッ!」
「 ︎」

 逃げていると突然ゴブリンや新しく来た魔獣とは違う魔獣が現れました。
 ゴブリンをそのまま大きくしたような感じですが、顔は怒っているのか険しくなっていて腕や脚は筋肉質な魔獣(トロル)です。
 この魔獣の周りにはさっき見たゴブリンが四体くらいいます。
 武器は大きい魔獣(トロル)が太い棍棒、ゴブリンのうち二体が槍、残りはそれぞれ小刀と細い棍棒です。
 マズいです。
 長い間走り続けてかなり体力が消耗しているのと、不慣れな地形に初めての討伐という最悪の条件が揃っている今、魔獣と戦って勝てるはずありません。
 けど、万全でも勝てませんね。
 そんな事を思いながら、この場をどう切り抜けるかを必死で考えます。
 せめてニグだけでも逃げて欲しいのですが、あれから全く目を覚まさないのでそれは無理そうですね。
 となると残された選択肢はやっぱり『逃げる』になります。
 しかしもう走って魔獣達から逃げ切れる体力は残っていません。

「グギャァァァァァッ!」
「「「ガァァァッ!」」」

 魔獣(トロル)が叫ぶとゴブリン達がこちらへ走ってきます。
 ニグを背中から下ろして小刀を構えます。
 やってやります!

「失礼」
「....え?」
「グガアァッ ︎」

 そう声が聞こえると鈍い悲鳴とともにゴブリン達の動きが止まりました。

「大丈夫か?」

 何が起こったのか分からず呆然としている私にその人は声をかけてきました。
 黒髪、黒眼の珍しい外見の男の人が少し鋭い目付きでこっちを見ています。

「?どうした?」
「あ....いえ...あの、お兄さんはどこから現れたんですか?」
「どこからって、そこの木の上から」

 お兄さんはそう言うと私達の背後にある一本の木を指しました。

「木から...ってどうやってですか?」
「枝伝い」

 お兄さんは何でもないかのように言ってのけました。
 す、凄いです。

「....って!そうじゃないです!後ろの魔獣!早く逃げないと!」
「ああ、大丈夫大丈夫。全員動けなくさせたから」
「.....はい?」

 え?お兄さん今、何て言いました?

「動けなくさせたって....どうやって?いつ?」
「ついさっき。俺の能力で全身を麻痺させただけ」

 そんな、見えなかった。

「ところで怪我してるみたいだな。診せてみろ」
「!そうです!早くニグの怪我をなんとかしなきゃいけません!」
「いや君だから、重症なのは君だからね」
「.....え?」

 そう言われて初めて気が付きましたが、ゴブリンによって出来た怪我からはかなりの血が流れていて周りが少し紫色に変わっていました。
 それに足にも切り傷が幾つもありました。

「ほら、これで治せ...い....おい.....」

 お兄さんが何かを言っている途中で声がどんどん小さくなっていって徐々に聞こえなくなっていきます。
 それにすっごく眠いです。
 そして私の意識が完全に闇へと落ちて行きました。


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