異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
留守、そして正体
裏路地に入ってしばらく進んで、人の気配がなくなった辺りでゲートを開いてデオルさんの商会へと飛ぶ。
そしていつものように受け付けにいる人、今日はネルドさんか。に、デオルさんを呼んでもらう。
「悪いけどデオルさん今商会の集まりで出かけてていねえぞ」
「え...いつ頃帰る?」
「さあなぁー、結構揉めてそれで遅れるのはしょっ中あるしなぁー。早くて一週間、かかればあって一ヶ月だなぁー」
「そんなに....」
一応ボスが使っていた魔道具については警邏とギルドに話してはある。
それなりの対応で捕縛されているとは思うけどやはり訊きに行った方が良いかもな。念には念を入れた方が安心出来るし。
「どこで集まってるか分かる?」
「知ってはいるけどそうそう会えないぞ?何分競う相手多いからなぁー、いくらあんたがデオルの旦那のお得意様っつても厳しいと思うぜ」
「参ったな....どうするか....」
「ま、運がなかったって事で諦めな。帰って来たら連絡してやっからよ」
「そうか....分かった、ありがとう」
「おう」
ネルドさんお礼を言ってから踵を返す。
仕方ない、神様に訊くしかないな。
「ま、王様の紹介状とかあれば別かもな。なんてな、ははははっ」
「!それだっ!」
「ははは....は?」
俺はネルドさんからデオルさんがいるその集まりの場所を聞いて礼を言ってから近くの路地裏に入りゲートを開く。
ちゃんと路地裏に向かっている間に神様に連絡は入れてある。
ゲートを潜ると神様が少し呆れた顔で椅子に座っていた。それは当然だった。
ゲートを潜ってから気づいたがどうやらお客さんが来ていたようで、時間が止まっているのでちょうど茶を飲もうとした所で止まっていた。
「なんだ、お客いるならまた時間をズラしたのに」
「...別に構わないよ。彼の話は断るつもりだったからアズマ君が来てくれて嬉しいよ」
「それを俺に言われてもな」
「神様は正直だから」
「...ふっ」
「あぁ、今鼻で笑ったね」
「さあ」
ちょっとした茶番が入る。
「まあ、それは置いておいて。ちょっと一筆書いてくれない?」
「...はい?」
疑問符を浮かべている神様を横に宝物庫から紙とペンを取り出す。
その後一筆書いてもらい、そそくさと帰りネルドさんから聞いた場所へ向かうための支度をしに一旦家へゲートを切り替える。
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話は東たちがボスを警邏に渡し別れた後に遡る。
その者は狭い路地裏を歩いていた。
「遅かったですね」
しばらく進んで行くと暗闇から声が聞こえてきた。
「少し面白い子がいたからね、気になっちゃって」
そう歩いてきた者が答える。
その声はどこか弾んでいた。
「またですか....あまり遊び過ぎないで下さいよ。後処理をするこっちの身にもなって下さい」
「ふふふ、善処する」
歩いてきた者は不敵な笑みを浮かべる。
声の主は「はぁ」っとため息を吐いてから自作の葉巻に火を点ける。
その火を点けた道具はマッチのように強い摩擦を起こすとすぐに燃えるように調合された粉を使って火を起こしている。
その着火された際の火で互いの顔が露わになる。
声の主は清純そうな顔の男性。
そして歩いてきた者は東たちとボアアガロンの捕縛依頼に参加していた冒険者、アルだった。
「ちょっと、人の前で吸うの辞めてくれる?臭い着くだろ」
「はいはい」
男は言われた通り葉巻を吸うのをやめる。
「ていうか、いい加減その姿戻しては如何です?それとも気に入っているのですか?」
「ん?ああ、そういえばまだだったわね」
アルはそう言うと固有能力を解除する。
男は能力が解除された時の容姿を思い出す。金色色の髪を腰くらいまで伸ばした顔立ちの整った、美女という言葉がピッタリな女性。
「っん、はあーやっぱりこっちの方が開放感あって良いわね」
「それ毎回言ってますよ」
「あら、そお?」
見えはしないけれど腕を伸ばし伸びをしているのだろうということは男には分かっていた。
それがいつものことだからである。
『変身』それが彼女の能力。認識さえすれば任意で変身出来る。これほどこの手の仕事に向いた能力はない。
「それで」
「?それでって?」
「いたんでしょう?気にる奴が」
「ええ、あの子はかなり面白そうだったわ。今までのどの子達よりも良い子よ、あれは」
「ほほう、貴女がそこまで褒めるという事はその通りなのでしょうね。最も、それでも貴女はすぐに壊してしまいそうですが」
「あのねえ、毎回言っているけどすぐじゃないの。ちゃんと私が満足してからさらに壊して楽しんでるの。勘違いしないでよね」
「はいはい、そうでしたね」
軽く笑いながらそんなやり取りをする二人。
「ところで先日のあの子どうしてるの?」
「...大丈夫ですよ。ちゃんと保存していますから、いつでも楽しんで下さい。ただし仕事を優先的に、ですが」
「ふふ、やった。あの子自分で回復する能力なのよね。少しくらい激しくしても大丈夫よね、きっと」
「あの少年も貴女に見つかってさぞかし嘆いているでしょうね」
「まあ今回の仕事に必要な事だったし、都合よく来たからさ。私ってやっぱり運、良いよね?仕事も楽に進むし、新しい玩具も見つけられたし」
そう無邪気な子供のように彼女は笑う。
男は分かっている。仕事が楽に進んでいるのは彼女にそれだけの技量があることを。
それを踏まえた上で軽く頷く。そしてしばらく考えてから口を開く。
「アル・ソルデシア、でしたかね。まさかあの貴族の末っ子が冒険者となっていたとは、知った時は多少驚きましたね」
「そうね....まだこの後仕事あるから、終えてから帰るわ。て事で先に行って報告をお願い」
「分かりました。帰ったらすぐに遊べるように準備して置きますので」
「さっすが!じゃ、またね」
そう言ってその女はきた道を戻る。
「本当に恐ろしい女ですね。腕は確かなのですが、あの性格さえ何とかなればもっと良いのですが。今回はどれだけ汚されるでしょうかね、切れ味の悪いナイフの選り好みが一番大変ですが」
そう独り言を呟いてから男はスッと暗闇に溶け込んだ。
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「うおぉぉぉっ」以外のかけ声が思いつかないのはヤバいかな?
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