異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
ガーズ、そして開始
馬車に揺られてから二時間半ほどで馬車が止まった。
馬車から降りるとそこには見たことのある景色が広がっていた。エネリアから王都へ向かうための道だ。
後ろを振り返るとかなり近い距離の所で王都の門が見える。
「やっと来たか」
数人の男がそれぞれ馬に乗ってやって来た。
やっとってそれはこっちの台詞なんですけど。一日待たされたし。
「ガーズは時期にやって来る。その時を楽しみにしておけ」
「俺ガーズ苦手だけどあいつらが骨があるかどうかは分かるからな。怖いけど仕方ねえな」
「今回も血が見れそうで楽しみだぜ」
「今回も全員食い殺すんだろうな」
そんな会話が今だ馬に乗っている男たちかあ聞こえてくる。
食い殺す?人間が人間を食うのか⁈
全員がそう考えていると背後から重い足音なのにほぼ一定のリズムで近づいて来る。振り返ると少し遠くの方で黒い何かがこちらへ向かってくるのが見える。
目に魔力を流し千里眼を発動させる。
すると二頭の馬を追うように黒色の毛並みを風になびかせてイノシシが走っている。しかも片方の馬には昨日ガーズと戦わせてみろっと言っていたあの男が乗っている。
しかしその男の顔には恐怖している様子はなく、むしろ笑みを浮かべていて気色が悪い。
もう片方の馬に乗っている女は知らないがこちらも恐怖している顔ではなく、笑みを浮かべている。
「あれ、魔獣に追われてないか?」
「本当か小僧⁈」
俺はうなずく。
「なら助けねえと」
「俺とブルスさんが魔獣の注意を引くから二人は・・・」
「へへへ、おい!お前ら!その魔獣がガーズだよ」
「「「「え 」」」」
あの二人を救出する作戦を考えていたところで誰かがそう言った。
あの魔物がガーズ?・・・・・つまりあいつと戦わせるってこととさっきのこいつらの会話からしてボアアガロンの中にバジルと似たような能力を持ったやつがいるということか?
そうだとしたら他の魔獣も操っている可能性を考えてボスたちを捕えないといけないな。
最悪その能力者だけでも先に潰しておかないと危険だな・・・・
「さてと、俺らは高みの見物をしておかねえとな。巻き添え喰うかもしれねえし」
「そうだな」
「俺酒、買ってきてあるぜ」
「おー、気が利くな」
そんな会話をしながら部下たちは馬に乗って去って行った。
あまり離れてもらうのもこちらとしてはやめて欲しい。巻き添えを喰らって欲しいのではなく、ただ遠くへ逃げられ過ぎると全員捕まえることが出来ないからだ。
そんなことを考えている間に魔獣たちはすぐそこまで来ていた。
「でかっ 」
ワオルさんが驚いて声を上げたが無理もない。
イノシシのサイズは四メートルはいっている。二本の鋭い牙はどちらもだいたい一メートルはある。
「がぅぅぅぅっ!」
「こいつが念願のガーズだ、せいぜい死なないように逃げ回るんだな」
「ふふ二コル、可哀想よ。ガーズは馬でも追い付かれるかどうかなのよ」
「おっと、そうだったな。じゃあ勝つしかないな、まあ無理だろうけど。危なくなったら俺様が救ってやるよ」
「あら、優しいのね」
「当然だろ?がーはっはっはっはっ!」
助ける気なんてないだろうに。
大方そう期待させておいてその時になったら助けずに俺らが絶望するのを見たいとかそんなところだろう。
「それじゃあ、生きてたら俺様の部下にしてやるよっ、ドゥクルなんかより待遇良いぜ?」
「生きてたら、ね。ふふふ」
そう笑いながら馬で去って行く。そして部下たちのいる安全な所まで行ってから大声で、
「食い殺せ!ガーズっ 」
「がうぅぅっ!」
そうガーズという魔獣に命令し、それをスタートの合図としていたのかガーズが突進して来た。
幸いなことに二コルが安全な所へ向かっている間に俺らもガーズからそれなりの距離を取り、武器を構えていたのが功を成し、ガーズの突進を回避することが出来た。
しかしガーズの速さが予想以上に速かった。おそらく赤ランクの魔獣だろう。
そうなるとブルスさんやワオルさんだとギリギリだろうがアルはそうはいかない。彼は多少の実力はあれど赤ランクになり立てだ。
そんな彼が相手出来る相手ではない。
指輪を外して殺気でこの場にいる全員を・・・いやかえって危険になるだけだな。
ならやっぱりアルをかばいながら、あの魔獣の相手をするしかないか。
そう覚悟を決め、数日前にリリーに能力を付与してもらった剣を構える。
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