異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

休みを、そして本物

 
 神様に報告を終えた翌日、昼頃にギルマスのティアさんのところの使いという人が家に来た。
 応接室に入ると使いの方が立ち上がって深々と礼をした。

「初めまして、アズマ様。この度ギルドマスターティアより伝達をたまわりました、イデルと申します」
「そんなに硬い言葉遣いじゃなくて結構だよ。その方がこっちとしても楽なんで」
「そういう訳にはいきませんので」
「...分かった、とりあえず話を聞こう。どうぞ」

 諦めて席に着くように勧める。イデルさんはまた一礼してから席に着いた。
 俺も席に着いたタイミングでマリアさんが入って来て紅茶を出してくれた。そして一礼して背後へと下がった。

「それで?」
「はい、今回はアズマ様に対処して頂きたい事がございまして」

 話をまとめると、“ボアアガロン”という冒険者集団がかなり暴れているので何とかしてくれとのこと。
 住民たちが暴れることは日常茶飯事であり、ギルドが一々動くことでもないのだが悪態が目立ち過ぎて街や国のイメージが悪くなりかけている。
 さらには警邏が取り締まっても集団によるリンチ。
 それによって警邏がボアアガロンを避けてしまい、それでボアアガロンたちは好き勝手にやる。
 数日前にもボアアガロンのメンバー数人が何者かにやられて警邏の所まで飛んで来たそうだ。
 はて、どこかで似たようなことを見た気が。気のせいだろうか?
 話を戻して、それで住民の苦情が多いのでギルドが対処に動くことになり赤以上の冒険者に依頼して回っているとのこと。

「どうか受諾して頂けないでしょうか?」
「....分かった、受けよう」
「!ありがとうございます!」

 イデルさんは立ち上がって一礼した。
 喜んでいるイデルさんには悪いけどこっちは少し複雑だよ。休めると思ったのにな。



 ということで受諾した冒険者は今日から王都の巡回。なるべく三、四人のパーティを組んでの巡回をするように言われた。
 それと冒険者の数人が危険だから何か報酬をとごねたらしいが元から捕らえたら全員に報酬を渡すといことだったらしい。
 それを聞いた誰かがその報酬は捕らえた人数分の報酬を各パーティに分けると勝手に決めて行ったそうだ。
 他の人もそれで了承したらしい。
 俺がギルドへ行き、依頼を受けたことを受け付けのお姉さんに話すとついさっき二人ほど来たからその人たちと一緒に行動することになった。

「オレはブルス!実力は赤の結構上らへんだから、何かあったらオレを頼れ!成り立ては辛えからなあ」

 と四十くらいの赤髪のモヒカン、ブルス。

「ハッハッハー!わしはワオル!そこいらの冒険者より腕はたつぞ!だから安心しろ、小僧!」

 と三十くらいの首に届くまで伸びた無精髭を生やしたスキンヘッド、ワオル。
 どうやら俺が赤成り立ての冒険者だと思われているようだ。まあいいか。

「俺は東、よろしく」
「そんな緊張すんな!ガッハッハ!」
「そうだぞ、儂らは怖くないぞ。ハッハッハ!」

 軽めに挨拶をして終了。しかし勘違いされたようだ。

「....あ....あのぉ....」

 背後から弱々しい声が聞こえたので振り返ると緑色の髪を目元くらいまで伸ばして揃えて切った少年がもじもじしながら立っていた。

「ん?どうした小僧?」
「あ、あの...ぼ、僕も...ギルドからた....頼まれた...アル...です....」

 怯えながらも自己紹介をするアル。歳はキリと同じくらいに見える。

「お前さん本当に赤ランク以上なのか?」
「は!はい!....成り立て、ですが....」

 ランクを上げるには主に二つの方法がある。
 一つ目がクエストを受けて魔獣などを討伐して上げるやり方。命賭けだが早く上がるし報酬も高い。
 二つ目が街の人の依頼を達成して上げるやり方。危険はほとんどないがなかなか上がらないし報酬も安い。時々当たりがあれば幸運なくらいだ。
 本当は今回のような戦闘が絡んできそうな依頼は後者の冒険者にはキツいからギルドもお願いしないと思うけど。

「成り立ての小僧が二人かぁ...」
「まあ、儂らで何とかなるじゃろ。二人は隠れておると良い。報酬は減らしたりせんから安心せい」
「ありがとう...ございます」
「どうも」

 おっさんら二人はそう言ってゲラゲラ笑っている。アルは怯えながらも喜んでいるようだ。


 相手が出て来たらどうするかを軽く打ち合わせしてからギルドを出た。
 街の中の巡回をしているが別に騒ぎがある訳でもないのですでに全員散歩感覚となった。

「儂はこの前テリクルトゥを....」
「オレのこの斧スゲェだろ?これな....」
「は...はぁ....」

 巡回し始めて少ししてから二人のおっさんの似た自慢話を巡回しながら聞かされている。
 アルも苦笑いで聞いている。
 それにしても見つからない。イデルさんの話だとしょっちゅう暴れていると聞いていたけど。

「いないなぁ....」
「はは、昼間から騒ぐ奴なんざあそうそう現れたりせんだろ?まあ酒場なら分かるが」
「んじゃあ、酒場に行ってみるか。そこでよく騒いでいるって言われたし」
「おおぉ!良いね!行こうぜ、行こうぜ」
「何だ小僧、酒を飲む気か?」
「飲まねえよ。てか今飲んだら仕事にならんだろ」
「え ︎飲まないの ︎」

 飲む気だったのかよ、ブルスさん。
 ブルスさんが満面の笑みから残念そうな表情へと変わる。


 南の方の小さな酒場へ到着してみるとすでに客がいたらしくバカ騒ぎしている声が聞こえる。
 この酒場はギルドにあるのとは違い、味は落ちるけど値段が安いのが売り。でも客足が悪くて閉店間近。とブルスさんが教えてくれた。
 とりあえず店に入る。

「おう、親父!もっと酒くれぇ!」
「そうだぞ!もちろんタダでよこせぇや!」
「俺たちゃ、ボアアガロンの会員メンバーだぞ!ヒック」

 はい、早速当たり。運がいいのか悪いのか。
 カウンターに座っているのは三人の青年。全員かなり酔いが回っているように見える。
 話を訊くために近づくと男たちも俺らに気づいた。

「ああ?何だおめえら?」
「ここは俺たちの、ヒック、貸切だぞ!ヒック」
「そうだ!そうりゃ!」

 俺らは打ち合わせ通りに動く。

「なあにぃちゃんら、あんたら本当にボアアガロンの会員メンバー何だよなぁ?」
「うっせえぞ、ハゲ!本当に決まってんりゃろが!」
「ほお」
「ぐえっ ︎」

 ブルスが青年の襟を掴み持ち上げる。しかも片手で。

「な!何すんだテメぇ!」
「もう一度訊くぞ。本当にボアアガロンの会員メンバー何だな?」
「いい加減にしやがれってんだ!」

 そう言って持ち上げられた青年の隣に座っていた青年がブルスの腹を蹴る。
 しかし微動だにせず、むしろ睨まれた。

「ひっ ︎」
「こ、こんなことして!覚えてろよ!仲間連れてお前らなんか消し炭にしてやるからな!」

 徐々にセリフが下っ端のやつみたいになって行くなぁ。

「....ふっ!」
「ぐふっ ︎....がはっ!あはっ!」

 ブルスさんが掴んでいる青年に腹パンを決め手を離す。
 落とされた青年は腹を抑えながらさっきまで飲食していたらしき物を吐き出した。
 ブルスさん、やり過ぎ。

「...!て、テメエら!絶対ぶっ殺し、がはっ ︎」
「おい ︎ケン、がぁ ︎」

 叫ぼうとしていたが言い終わる前にそれぞれに俺とワオルさんで鳩尾に決めて気絶させる。

「はあ、はあ。おい、お前ら ︎」

 吐き終えて息を荒げている青年の横に気絶させた青年たちを倒す。

「あ...あの....」
「ひっ ︎」

 最期にアルが声をかけるが完全にビビってしまったようで顔面蒼白の汗ダラダラ状態。

「お!お願いします!命だけは!命だけは!」

 俺らがいつ命取ったんだよ。

「すいません!俺らボアアガロンの仲間じゃありません!ただの市民です!今街で騒がれてるからボアアガロンの仲間って言えばタダで飲み食いできると思っただけなんです!すいません!」
「「「「......」」」」

 まさかというか、何というか。
 恐怖で仲間の場所を訊こうと思ってたけどやり過ぎたな。しかもハズレだったし。

「はあ...後のことは店の方に任せるので。よろしく」

 親父さんも首を縦に振るだけ。

「残念...でしたね....」
「まあ儂は分かっておったがな。こんな弱い奴らがボアアガロンの会員メンバーな訳ないからな」

 ん?

「だな!ボアアガロンは全員青ランクと聞いているからな」
「いや、案外儂が強いだけやもしれんぞ?」

 おい、待て!

「そうかもな!オレならボアアガロンなんざ余裕よ!」
「ほお、なら一つ相手してみるか?」
「ぐっ ︎」
「「「 ︎」」」

 入り口の方からドスの効いた声が聞こえたので振り返るよりも前にブルスの横を小刀が飛んだ。
 俺は位置が良かったので飛んで来るそれを受け止めることが出来た。

「ほお」
「ずいぶんと手荒な挨拶だな」
「ふっ、余裕と言われたからね、つい試してみたくなったんだよ」

 そう言って姿を現したのは、身長二メートルくらいで小太りながらも眼つき鋭い男だった。
 現したと同時に十数人ほどの男たちもぞろぞろ入って来た。ガタイの良いやつやヒョロっとしたやつなどもいる。

「さあ、謝って泣き叫べよ?ボクチンはボアアガロンの幹部、ドゥクルだ」

 そう言い終わると同時に周りにいたやつらが武器を取り出して襲いかかって来た。

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