異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

復元、そして成功

 
「と、言う訳で今すぐこのヘアピンを直すことって出来るか?」
「問題ないですよ。ちゃんと形や柄が分かるように組み立てられているのでね」

 無理を言ってデオルさんに会わせてもらい、事情を説明した。ただし姫様のことなどは話さず、あくまでも大切なヘアピンということでだ。
 デオルさんの能力は想像した物を創造する。ただし創造するには魔力を固めて具現化するそうだ。
 なのでデカければデカいほど、細かければ細かいほど大量の魔力を消費して創造するそうだ。
 ただし無から造るよりも材料を加工して作った方が消費は少ないそうだ。
 ここまでだともう一つの物を造るだけに思えるが、壊れた物の復元も可能なのだそうだ。
 形、柄、色などが分かれば元の形を想像。壊れた部分や破片の結合に魔力を使って補えば復元出来るとのこと。
 これは思わぬ収穫だった。
 やっぱり母親からもらった物の方がいいよな。本当に良かった。
 今回の件は俺のわがままなので消費する魔力は俺の魔力、まあドレインで回復させるということだけど。

「それでは...」
「ああ、頼む」

 デオルさんが壊れたヘアピンに手を翳す。どれぐらい減るか分からないのでデオルさんの腕に手を置く。
 そして手を翳した所から光が発生した。それと同時に慎重に魔力をデオルさんに贈る。
 光を発してから五分ほどして発していた光が弱まり、やがて収まった。

「終わりましたよ」

 デオルさんが手を退けるとバラバラになっていたヘアピンがしっかりとした形でそこにあった。

「おおぉ....」
「これで良ろしいですか?」
「ああ、ありがとう」

 ヘアピンの裏表を何度か見るがどこも壊れていない。完璧に直っているようだ。
 確認を終え、ヘアピンを宝物庫に入れる。

「すみませんがキリサキ殿、催促するようで悪いですがそろそろ...」
「え?ああ、分かってる。約束だしな」

 ヘアピンを直すお礼として新しい商品の情報の提供を約束された。
 今回は『かるた』を提供した。後日しっかりとクレイン商会の店で売られていた。
 もう一度ヘアピンの礼を言ってから多少歩いてから路地裏へ入り、姫様のいる部屋の扉の前にゲートを繋げる。
 ゲートを潜ってすぐに部屋に入る。

「姫様!」
「ひゃぁっ ︎....あ、アズマ様でしたか。変な声を出してしまいまして、申し訳ありませんでした」

 いなくなってから数分で突然戻って来たことで驚いてしまったのだろう。
 まあそれは置いといて、宝物庫から姫様のヘアピンを取り出し姫様に近寄る。

「直ったぞ」
「え?.....えぇ?」

 手のひらの物を見せる。すると目を見開いて驚きの表情を浮かべる。

「どう....して.....」

 次第に目元に涙が浮かび溜まり始めた。

「ありがとう.....ございます......」

 そしてヘアピンを手に取り、胸の所に持って来て、泣いてしまった。
 さて、泣いているところ悪いがこっちももう一度やってみることがあるのでそちらをやらしてもらうとするか。
 静かに部屋から出て、廊下でそれをやるために屈んで地面に両手を置く。
 王城に流れている魔力を吸い上げる。

「ふ、成功した」

 手のひらから体内に魔力が流れて来るのが分かる。
 片手で吸い続けながら反対の手で宝物庫から雷光核を取り出し、王城から吸った魔力の半分を核へと流す。
 強い光を発し続ける雷光核。
 それだけ王城全体に巡っていた魔力量が多いということだ。
 その作業を三分ほど続けてようやく王城全体に流れていた魔力を吸い上げることが出来た。
 周りを見回してみても先ほどまでおもちゃで出来ていた壁や床、絨毯なども元に戻っている。
 雷光核を仕舞ってから念話を使用する。

『終わったぞ』
『やあ、お疲れ様。早速で悪いけどこちらまで来てくれるかい?』
『ああ』

 それだけ話して念話を切り、ゲートを繋いで潜る。
 その後はいつもの通り大会に参加したことへの報酬と姫様の件での特別報酬ももらった。

「そういえば何で最初は王城の魔力を吸えなかったんだ?」
「....ふふ、教えても良いのだけど理解出来ないと思うから止めておく事を勧めるよ」
「そうか、じゃあな」

 また何か企んでいるんじゃないだろうな?神様がまた何かをやらせようとしていることを考えると嫌気の方が強い。
 連続依頼も終わったし、明日は家でゆっくりしていたい。
 しかし東のその願いは叶う事はなかった。

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