異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

終了、そして囲まれ

 
 決勝戦が終わってすぐに表彰式のようなものが行われた。
 まず王様からの一言、次にそれぞれの賞金の授与、最期にアシュにだけアルタイルの王国騎士団への入隊状。
 入隊状には本人の名前、大会の開催日、国王の判が押されているそうだ。盗まれたらとも思ったが他人の事だし別にいいかなとも思った。
 そして閉幕の太鼓が鳴らされた。
 さてと、帰るか。そういえば神様から何も連絡がなかったってことは安全だったんだろう。
 舞台を降り、キリとサナを捜そうとしたら二人スゴい勢いでこちらへと駆けて来る。

「アズマ!急いで帰るわよ!」
「え?あ、ああ、じゃあディグリーさん捜さな...」
「お父さんならもう来てるから!早く!」
「お、おいっ」

 なぜか急いでいるサナが俺の手を取って走り出す。キリも何も言って来ないところを見ると理由は知っているのか?
 そんなことを考えながら通路を抜ける。

「お!来たぞ!」
「貴方!準優勝のアズマさんでしょ ︎」
「「「キャーーーーー!素敵ーーーー!」」」
「え?何?何?何?」
「遅かった...」

 通路を抜けたと同時に大量の獣人の人たちが待機していた。ざっと見でも四、五十人くらいそれも全員若い獣人の男女。
 彼らが俺らを見るなり駆け寄って来て囲まれた。
 それに驚きと恐怖で漏らした俺の声と呆れた声を漏らしたがその声すらも周りの声でき消された。
 混乱している状態が続き脱出も試みたがダメだった。というか数人のお姉さんたちに腕を掴まれているのでまず出来ない。
 流石獣人、腕を振りほどこうにも強い力で掴まれている。
 別に力尽くで解くことも出来るのだが怪我を負わせたくない。ということでこれも断念。
 にしても何でこんなに人が集まって来るんだ?

『やあ、アズマ君。大変そうだね?』
『分かっているなら何とかしてくれ』
『嫌だよー、折角面白そうなところなのに』

 まあ、断るわな。

『ならせめてこの状況が起こった理由を教えてくれ』
『うーん、詳しくは言えないけど。まあ彼らは恋人を捜しているんだよ』
『は?恋人?何でこんな所で?』
『そりゃあ人にもよるけど、大会で優勝や準優勝すれば財産はそれなりで王国騎士団にも入隊が可能になるからねえ。早めの手に入れたいからじゃないの』
『ん?入隊出来るのって優勝者だけなんじゃ?』
『準優勝でも実力がある事は証明出来ているようなものだからね。普通に王国騎士団に入隊しても下位に入隊させられることが普通だからね。それと比べれば準優勝者はそれ以上か多少の優遇を受けて入隊する事が出来るから狙われているんだろうね』
『マジかよ....』

 似た話しが昔ニュースでやっていたような。

『とりあえず頑張ってね』

 そう最期に言って念話は切られた。
 つまりここにいる方々は俺ではなく、俺の財産とかにかれて今、口説きに来ていると?少し泣けて来る。
 賞金も目当てにされているそうだが金貨十枚だからそれほど金がある訳じゃないんだが。
 神様曰く、王国騎士団の下位の収入は月々だと銀貨八枚ほど。日本円だと少ないがこの世界だと普通に良い額だそうだ。
 つまり金貨十枚でもそれなりの小金持ちだそうだ。

「んで、サナ。どうやって脱出するんだ?」
「前回は何とか逃げ切れたけど...今回は前より人数が多いわね」

 神様と話している間にさらに囲んでいる人数が増えている。それも女性がほとんどに。
 逃げ切れたってことは今回も出来るということだな。
 何か方法は.....うーん、これに賭けてみるか?
 宝物庫からある物を取り出し、それなりの魔力を流し上へ投げる。

「うわ ︎眩し ︎」
「目があぁぁっ ︎」
「イヤーーーーー ︎」
「ああぁぁっ ︎」

 魔力を込めた雷光核を見た周りの人たちからの悲鳴があがる。

「きゃっ ︎」
「えっ ︎」

 それにより手の力が弱まり、掴まれていた女性たちの手を解いてキリとサナを抱えてジャンプしてその場を離れる。
 獣人たちは目が良い。だからある程度の光で目眩しとしてちょうど良いと考えたのだ。俺は魔眼を使わなければ蛍光灯の灯りくらいと変わらない。
 近くにあった馬車の近くへ降り、すかさず魔眼を発動してディグリーさんがいるかを確認。
 うん、馬の手綱を握りながら目を閉じているディグリーさんを確認。すぐに馬車の中へ入る。

「ディグリーさん、後は俺がやるから」
「え?アズマく、うおっ ︎」

 荷台にサナとキリを下ろしてからディグリーさんの元へ行き、ディグリーさんが握っていない辺りの手綱を取り、馬を操る。
 早く出たのが幸いだったのか、それとも出口をさっきの人たちで塞がれていたからなのか夜道にはほとんど人がいなかった。
 おかげで少し急いで走らせても大丈夫だった。
 と言っても人気がなくなってからゲートで一気に時間を省いたけどね。

「え?もうザクト?何で?」

 帰り道をショートカットして早くザクトへ帰って来たためディグリーさんが驚いた声を上げている。
 後で説明しないとな。固有能力と言っておこう。

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