異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

エルダースノウマン、そして戦闘開始

 
「にしても赤でこの強さとは...これで今回の依頼はなんとかなるかもしれねえな」

 ガッハッハっと笑うエデルさん。

「はぁ...それでエデル。ファフスとオオルバはどうした?」
「ファフスは近隣の見回り。そろそろ帰って来るだろ。オオルバの後ろで仮眠中だ」
「そうか。なら俺ら分のテントを張るか。エデル、テントの中にあるか?」
「あー...それがな。途中でスノウマンが来てたのに気づかなくてな...その...」
「....はっきり言ってみろ」
「破られたわ。悪い」
「よしそこを動くな」

 ヒューズさんはそう言って拳を構える。あの時の能力を使う気だな。

「謝る!謝るからそれだけはやめてくれ!」
「半分冗談だ」
「半分って...」
「でもどうする?あのテントじゃあ、10人はとてもじゃないけど無理だね」
「アズマ、何とか出来ないの?」
「うーん...」

 色々と方法はある。ゲートで家に帰るや水儒核とウォーミルを使って氷のテントを作るなど他にもあるがどれも使い辛い。
 ゲートはバジルたちの前ではあまり使いたくない。どこかで物が盗まれた時にゲートを使える俺が疑われては敵わない。ウォーミルと氷のテントは熱に弱いため火を使うと常時ウォーミルを発動させていないと氷が溶けてしまうなどがあるためどうにも。
 他の方法にも欠点などがある。

「無理そうだな」
「?アズマがゲートで家にんぐっ ︎」
「しー!バジルたちの前ではゲートのことは内緒にしてくれ」
「んぐ、んぐ」

 リリーがゲートのことを話しそうになったので慌てて口を抑える。

「ん?何か言ったかい?」
「何でもない!」
「そうかい」

 バジルが騒ぎ出した俺らに期待の表情だったが俺がないと言ったので少し残念そうな表情になった。ごめんなさい。
 リリーから手を退ける。

「ごめんね、アズマ」
「いや、こっちも悪かった。先に言っておくべきだったんだから」
「それでも...」

 リリーが続きを話そうとしたその瞬間、降っていた雪が急に強くなりだした。

「マズイな」
「エデル、オオルバを起こしてこい!」
「ああ」
「バジルはフィリブたちをテントの見張りに就かせろ」
「分かった」
「どうしたんだ?そんなに慌てて」
「エルダースノウマンが目を覚まぢやがった」
「なっ ︎」

 ヒューズさんの言葉に驚きの声を上げる。
 みんなの方を見ると他のみんなも驚いた表情を浮かべている。

「驚いている暇があるなら体勢でも整えてろ。もう時期スノウマンが大量に沸き始めるからな」
「集隊か」
「ああ」

 ヒューズさんはそれだけ言うとテントの方へと去って行った。

「どうするの?」
「そりゃあもちろん戦うさ。ただ問題なのがウォーミルなんだ」
「?使え、ないの?」
「ああ」

 正確にはウォーミル自体を発動させることは出来る。ただティアさんの話ではスノウマンもエルダースノウマンも雪の魔獣らしい。なのでウォーミルとは相性が悪いのだ。
 雪は雲の水が周りの水蒸気をくっ付けて降ってくる。この時に周りの気温が高いとその結晶は溶けて雨として降ってくる。
 このことから雪の結晶の一つ一つが小さな水の塊なのだ。
 ウォーミルは水の温度を変化させることは出来るが、雪の塊の全ての温度を変化させることが出来ないのだ。血液や池などと違い雪は水同士が繋がっていないのでウォーミルが全体まで発動出来ないのだ。
 エルダースノウマンの依頼を受け、ここに来てから試したが変化させられるのは手で触れられた部分だけだった。

「それでもこっちの攻撃は通るんでしょ?」
「多分な」

 というか、通ってもらわないと困る。でなければ倒しようがない。

「アズマ、そろそろ出発するよ」
「ああ。こっちは準備出来ている」
「そうかい。それじゃあ行こうか」
「バジル、おまえはここに残れ」
「何で⁈」
「ファフスも目覚めたことに気づいているだろうが、こっちに来る可能性もある。そのためだ」
「それなら他でも」
「ナルガスは喋らないだろう、エデルはこっちを手伝ってもらう。オオルバは待ってる間に寝るから。よっておまえが適任だ」
「...分かったよ。ならファフスを待つことに」
「安心しな、もう戻ってるからな」
「「「「「 ︎」」」」」

 後ろの方から声がしたので振り返ると槍を肩に乗せて立っている男がいた。男は30代ほどで右の眼の少し下から左下へ古傷がある。

「戻っていたのか、ファフス」
「ああ。と言っても今しがたな」
「まあいい。今の状況は分かっているな?」
「あいつが目覚めたから準備して出発するところってとこか」
「そうだ。おまえも追て来い」
「元よりそのつもりだ」
「そうか。なら...」
「出発!さあ、行こう」

 ヒューズさんの言葉を遮ってバジルが大声でそう叫ぶ。

「はぁ...まあいい。それじゃあ急ぐとしよう」

 ヒューズさんがそう言うと俺らが来た方角とはほぼ反対の方へ走り出した。
 数メートル走ったところで俺たちの前に雪の魔獣が現れた。多分これがスノウマンなのだろう。
 スノウマンは見た目はまんま雪だるまだ。と言っても頭は球体ではなく半球体でそこに黒色の目玉があるだけ。
 身体は頭の3倍ほどの大きさで短い手足がそこから生えている。
 全長80センチほどでほぼゴブリンと変わらない大きさだ。

 _______________
 スノウマン:待機
 Lv.38
 特殊:雪の塊。塊の中に核がある
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 やっぱりスノウマンだったか。剣を構え

「きゅう?」
「邪魔だぁ!」
「ぎゅうっ ︎」

 ようとしたら先頭を走るファフスさんがすれ違い様に槍で頭から真っ二つにした。
 ファフスさんはそのまま何事もなかったかのように走り出した。俺も走り去る前に後ろを振り返ると雪がはっきりとは見えなかったがスノウマンの死体の影は見えなかった。多分スライムと同じで溶けたのだろう。
 俺らはさらに先を目指す。

「おぉぉぉぉっ ︎」
「「「「「「「 ︎」」」」」」」

 すると魔獣の叫び声が聞こえた。それに共鳴するかのように雪がさらに激しくなる。
 雪に阻まれながらも進んで行くと影が見え始めた。初めはスノウマンかと思ったが近づくうちにその影はどんどん大きくなっていき、今の影の大きさは3メートル弱はある。

「おおぉぉっ!」
「うおっ ︎」
「くっ」

 影が動きだしたかと思うと拳が先頭にいたファフスさんとヒューズさんの横から飛んで来た。2人はその攻撃を上に飛んで避ける。
 木のような太さの腕とボーリングの玉のような拳。直撃すればかなりダメージを喰らう。

 _______________
 エルダースノウマン:攻撃準備
 Lv.74
 特殊:雪の塊。塊の中に核がある
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 これがエルダースノウマンか。レベルはダンジョンにいた古竜とほぼ同じだから手強いだろう。
 ?気のせいか雪が少し弱くなったかな?さっきも魔眼を使った時も弱まった...よう...な。もしかして...
 魔眼に流す魔力量を増やしてみる。

「 ︎」

 雪が止んだ。いやでも身体には雪が当たっている感覚はある。つまり目で見ると雪は降っていないように見える。雪山でこれほどありがたい物はない。
 魔眼を維持したままエルダースノウマンの方を見る。
 エルダースノウマンの姿はスノウマンを大きくした姿。に似ているが少し違う。目は赤く光っており、手足も1メートル半はありそうだ。ゴリラに似ている気がする。
 さらにスノウマンと違うところは、ちょうど溝のあたりにビー玉ほどの紅い水晶のような物がハマっている。

「もしかしてあれが核か?」

 そんなことを考えている間もヒューズさんやキリたちはエルダースノウマンの攻撃を躱しながら攻撃をしている。

「おおぉぉっ!」
「っと、おっらぁ!」
「!ごおぉっ!」
「うぐっ ︎」

 エデルさんにエルダースノウマンが左で横から殴りかかって来たのをジャンプ避け、そのまま上から殴りかかろうとしたがエデルさんの攻撃が当たるよりも先にエルダースノウマンの平手打ちが当たり、エデルさんは12メートルほど吹っ飛ばされた。
 俺はすぐにエデルさんの元へ行く。

「くっ...」

 エデルさんはバウンドを数回してそのままさらに2メートルほど地面を擦って行ったが、すぐに立ち上がった。
 しかし彼は左腕を抑えていた。殴られた際か飛ばされた際に折ったのだろう。
 俺は宝物庫から治癒核を取り出してエデルさんに渡す。

「すまねえな、小僧」

 そう言って治癒核を左腕まで持っていく。すると治癒核が光り出した。少しして核を退けると赤く腫れていたところや傷が綺麗に消えていた。
 俺はさらにエデルさんの手に触れ、ドレインを発動させる。
 ドレインは吸うだけではなく送る効果もある。今は俺の体力を分けている。治癒核は怪我や痛みなどは治せるが、消費した体力や魔力までは回復出来ない。なので体力を分けている。
 ただ加減を間違えていけないのがこのドレインの難しいところだ。以前ユキナを助ける際に腕輪の魔力を吸った時に腕が破裂したのも加減を間違えたからだ。
 ドレインは吸った物を俺の物に出来る効果だ。ただこれは回復ではなく“プラスする”なのだ。
 神様の話だとあの時は限界を越えても吸い続けたので身体が耐えきれなくなり破裂したのだそうだ。
 水風船に限界まで水を入れてからさらに入れ続ける破裂するのと同じだそうだ。
 なので送り過ぎないように気をつけながらだいたいの感覚でエデルさんに体力を送る。

「これでよしっと」
「何したんだ?」
「体力を回復させただけだ。さっさと戻ろう。こっちだ」
「あ、ああ」

 俺たちは再びエルダースノウマンの方へと戻る。周りがはっきりと見えているので先頭を俺が走る。
 何とかしてあの胸の核を壊せないかな。

「はぁっ!」
「ごぉぉっ ︎」

 そんなことを考えながらやつの背後を取り剣を勢いよく左方から腰くらいまで振り下ろす。

「おおぉっ!」
「っふん!」
「ごぉっ ︎」
「ぐっ ︎」

 痛み耐えながら身体を捻って裏拳で攻撃して来たのを身体を捻って手首の裏あたりを切る。
 しかし切るタイミングが少し遅く、威力が差ほぼ弱まっていない裏拳を喰らってしまい吹っ飛ばされる。
 空中でバランスを整え地面に着地する。
 自分の防御力が高いと言ってもやはりこのくらいのレベルの相手だと結構痛い。
 周りの様子を見るとサナとユキナが何かの魔獣と戦っている。
 魔獣の姿は頭の部分に口が5つに開いており、牙も生えている。身体の部分は子どものゴリラのようになっている。全長は1メートルほど。

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 スノウマン:戦闘中
 Lv.47
 特殊:雪の塊。塊の中に核がある。戦闘の際凶暴化する
 _______________

 え ︎あれがあのスノウマン!さっきと全然違うんだけど!確かに魔眼にも凶暴化するとは書いてあるけど見た目全然違くなるとは。
 
「はーっ!」
「ぎゅうぅっ!」
「ふっ!」
「ぎゅうっ ︎」

 キリの攻撃を軽々と空中で一回転して避けたスノウマンだったが、背後に既に取っていたユキナが双剣で首を切り落とした。
 いいコンビである。
 他の方に視線を移す。

「やぁっ!」
「ぎゅうっ!」
「ニーナ!今っ」
「いっけ!」
「ぎゅうぅっ ︎」

 こっちではリリーがスノウマンの動きを手で抑えている間にニーナの『槍化』の能力で雪を槍状にしてスノウマンの頭を貫き、リリーに当たる前に先から雪へと戻り、地面に落ちた。
 リリーは以前クエストに出かけた際に固有能力を見せてくれた。
言弾ことだま』。それが彼女の固有能力だ。能力はバフ、デバフの付与だそうだ。と言っても彼女の魔力に比例するほどしか付与出来ないそうだ。
 例えば相手に「残りの体力が0になって死亡」や自分、もしくは味方に「あらゆるダメージを無効」などは付与出来ない。出来るのはさっきのような「自身の筋力増加」だ。ただしこれにもリリーの魔力に比例しての増加だ。
 リリーの魔力量はニーナの次に多い。順番だと、ユキナ>>>ニーナ>リリー>>キリ>サナになるのかな。
 他にも色々付与出来るそうだが、あんまり大人数には付与出来ないとのこと。その代わり、一度付与するとまあまあ長く効果は続くらしい。それも付与する際に使う魔力量によるそうだが。
 あっちも大丈夫そうだな。しかしみんな気配だけで戦えてるな。

「ぎゅうぅっ!」
「ぎゅうっ!」
「っと、ふんっ!」
「...ぎゅうっ ︎」
「おらっ!」
「ぎゅう ︎」

 よそ見をしている俺を凶暴化したスノウマン2体が横と背後から攻撃を仕掛けて来たがそれジャンプして避け、兜割の応用で横から来たスノウマンの頭を切る。
 仲間がられてしまい驚いている間に突きでもう一体のスノウマンの心臓辺りを貫く。そのまま右へ剣を押し、身体から抜く。
 スノウマンたちに血などはなく殺されたら倒れて雪へと姿が変わる。その際に地面に赤色の核が転がる。それを足で粉々に砕く。
 このように核のある魔獣は核を破壊すれば死ぬ。ただ核の場所は個体差があり、大きさや場所が異なる。
 しかしスノウマンは一定のダメージを与えれば身体が維持出来なくなり、雪へと戻る。そして少ししたら核が雪を集めて再びスノウマンの姿になるようだ。

「きゅうぅ?」

 雪を集めて戻ったスノウマンの姿は最初に見たスノウマンだった。

「きゅうっ ︎ぎゅうぅぅ...ぎゅうっ!」

 しかし俺の存在に気づいたスノウマンは頭が割れ、5つに分かれ始め、ふっくらとしていた身体はどんどん縮まっていき子どものゴリラのように引き締まった。
 ずっと魔眼で見ていたが、俺の存在に気づくまでは待機だったが気づくと凶暴化に変わった。つまりさっきから俺らが戦っていたのは本当にスノウマンだったようだ。

「ぎゅうぅっ!」
「っと」
「ぎゅうぅぅぅ...ぎゅうっ!ぎゅうっ!ぎゅうっ!...」
「....ふんっ!」
「ぐぎゅぅっ ︎」

 スノウマンが自分の爪を長く尖らせ切り掛かって来た。爪が伸びたことに驚いて少し反応が遅れたがそれからの攻撃は余裕で避け、膝蹴りを腹に決める。
 2メートルほど飛んで行ったのを追いかける。
 こいつがスノウマンの姿に戻る時に見た核の位置は、

「確か...首辺りだったか、なっ!」

 パキンッ!
 ガラスが割れたような音が聞こえた。するとスノウマンの身体が雪になっていった。

「ビンゴ」

 そう言い残してエルダースノウマンに攻撃を仕掛けに行く。

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