七つの名
0.プロローグ-夜道-
こんな時、貴方ならどう答えるだろうか……。
午前一時。
星一つ見えない曇った夜。
等間隔に並び立つ街灯だけが道を照らす。
女子が出歩くには不釣り合いなこの時間に、彼女は一人楽しそうに歩いていた。
「ふふっ、間に合ってよかった〜」
手には賞味期限ギリギリアウトのショートケーキ。日付が変わって今日は彼女自身の誕生日。
「どうせ祝ってくれる人なんて居ないし、自分で祝うなら日付変わってすぐがいいよね〜」
全寮制の高校、その敷地内に設置されている購買は夜11時閉店である。しかし、長期休暇にそこでバイトしていた彼女は知っていたのだ。
閉店作業などを終え、本当に店が閉まるのは日付が変わる頃になることも少なくないことを。そして閉店後のバックヤードには賞味期限切れの商品が山積みになっていることを。
「別にちょっと期限過ぎたくらいじゃ腹壊さないし〜」
腹壊したって死にゃしないし、なんて雑なことを言いながら、購買のおばちゃん(仲良し)から譲ってもらったケーキを手に、自室に向かう。
自室に帰って、賞味期限切れのショートケーキを前に自分宛のバースデーソングを歌って食べる。そして寝る。
そんなちょっとした至福の時に心躍らせながら、いつしか歩いていた足はリズムよくスキップしていた。
そんな幸せの中、その時は来た。
否、居た。
「貴女を迎えに来ました」
「はじめまして、かしら?」
真っ暗な闇をぼんやりと照らす街灯の上から、
『お母様』
男女の声が重なって降ってきた。
さて、ここでもう一度問おう。
こんな時、貴方ならどう答えるだろうか……。
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