俺と妹の異世界人生

神田礫

兄と妹の異世界

「あれが街か。」

「うん、そうだね。」

かなり大きい。
うん、でかい。

「ちょっと距離あるね。どうする?」

「バイクで行こう。バイクならすぐ着くだろう。」

「あ、そうだね。バイクあったんだね。」

(あ、待った。どうしよう。この指輪をバイクに戻す方法聞いてなかった………………………歩いちゃうの?)

「どうしたのお兄ちゃん?大丈夫?早く行こ?」

「なぁ誌乃。実はこれをバイクにする方法、知らねぇんだわ。 てへぺろ(ノ≧ڡ≦)☆」

「はぃぃいぃぃ!!!」


――――――――――――――――――――――――
10分後

「やっと…やっとできたーー!!」

「やっと終わった…」

この様である。
隼斗の中では、異世界をサクッと攻略し、父親を探し、日本に帰るという完璧なストーリーが展開されていた、のだがこの様。
何が悲しくてこの異世界でこんなことで喜ばなくてはならないのか。バカバカしい。

「うんじゃ、行くか、誌乃!」

「そうだね、行こう…」

―――――――――――――――――――――――――
40分後

「やっと…やっと着いた…」

「なんで…あんな事に」

?と思った人もいるだろう。
そんな人達のために説明しよう!
バイクで移動していた時の道中、大型の蛇のようなモンスターや急に大きな穴が開くなど様々なトラブルがあり今にいたる。

「ふざけんじゃねぇ…ふざけんじゃねぇよ!異世界だろ!ここ異世界だろ!!なんで?ねぇなんで?なんで俺が異世界に来てそうそう苦労しなきゃなんないの?おい!!こういうのってさ、絶対に特別な力とか持って楽できちゃうようなもんじゃないの?どうなんだよ!!!」

空に向かって叫ぶ。
そう、この世界に来て全然進歩しない。
やっと街の前まで着いただけ。

(チート?魔剣、聖剣?何それ?そんなのあんの?俺が異世界に来て唯一良かったことと言えばさ、妹という話し相手がいることだよね?ねぇ、もうやんなっちゃう。)

「それより早く街に入ろうよ、ねぇ。」

「お、おう。」

そして隼斗と誌乃は街へと入っていく。

「やっぱとんでもねぇとは思ってたけど。予想以上だな。」

「そうだね。真ん中に城。よくある中世の世界みたい。」

真ん中には城、そしてそれを囲むかのように立てられている建物、店、それら全てを見回るのにどれだけ時間がかかるか分からない。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しばらく歩いた隼斗と誌乃、とうとう見つけたのである。あの、あの、

「「クズ共の集まり?」」

そう、クズ共の集まり、それは俗に言う冒険者ギルドなるものだった。そして、そのギルドの前の看板にそう書かれていたのである。

「仮にも人助けとかもするような連中をクズとか酷すぎだろ。」

「た、確かに。」

まぁそれは隼斗の憶測でしかないのだが。

「とりあえず入ろうぜ、誌乃。」

「うん…」

何やら心配になるがそんなことは言ってられない。

二人はドアを開ける、そして…

「「「「ようこそ!!!クズ共の集まりへ!!!」」」

なんと反応すれば良いか分からない二人は10秒ほどその場で硬直する。
すると、優しそうな見た目の女性が声をかけてきた。

「あ、あの、冒険者登録ですよね?でしたらあちらの方で行ってください…早くしろよこの野郎がぁ!!」

「「ひゃっ!!ひゃい!!」」

硬直がやっととけ、我にかえる。

(もうやだこの世界、なんでこうなの、もう…)

隼斗と誌乃は教えて貰った所へ行く。

「冒険者登録ですね。では御手数ですがこちらに親指を強く押してください。」

言われるがままに従う。
すると赤い液体のようなものが出てきた。
血だ。血を使う登録法なのだろう。

「はい、もう大丈夫ですよ。登録、完了しました!では、こちらをどうぞ!」

受付嬢に凹凸のある鉄のプレートのようなものを渡された。

「どの指でも構いません。凹んでいる所に指を置いて見てください。」

「うおっ、なんだこれ!」

「す、凄い!」

二人とも異世界の技術に驚く。
指を凹みに置くと、凸の部分から光が展開された。

(なるほど、こういう面でちゃんとしているみたいだな。)

自分の指でないとステータスを見ることは出来ない…つまりはプライバシーが守られているということだ。

「では、良い冒険を!」

受付嬢の笑顔を背に二人はギルドを出る。

「なぁ誌乃、今日は宿探して休んで明日行動しようぜ。」

「ねぇ、お兄ちゃん大事な事忘れてるよ。私達、お金を持ってない。」

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁぁああぁあ!!!」

「う、うるさい!!」

(こんの、チクショーがー!!!あんのクソジジイ!金の1つも持たせてくんねぇのか!!異世界不自由すぎだろ!どうしろってんだよ!!異世界転移の特典とかねぇのかよーー!!!!)

「一体どうすればいいのよ…」

詩乃までもがこの状況に嘆いてしまう。
だめだ、この異世界。



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