トカゲな俺の異世界迷宮生活
No.20 2層到達
1層と2層を繋ぐ、唯一の通路。
その長い長い通路を抜けた先に、新たな世界が待っているのだった。
そして今。
偶然か必然か、なんとかフロアボス討伐を果たした俺達は、2層へと降り立っていた。
『うおっ………こりゃスゲェな』
『そうッスね………。こんな光景、日本どころか地球じゃ絶対見れないッスよ』
『うんうん、やっぱり2層は綺麗ですよねー!』
口々に感想を漏らす俺達。だが、目の前に広がる光景を伝えるには、たとえプロのアナウンサーが5分掛けても足りないだろう。
1層とは違い、広く開けた場所。高い天井からぶら下がる鍾乳石、そして迷宮のあちこちで輝きを放つ魔晶石。そして、その輝きを反射する水面。
そう、この2層は、フロア1面が『水』で覆われた世界だった。その水面が揺らめく度に、輝きがゆらゆらと揺れて幻想的な光景を生み出していて。
『………もう、魔王とかどうでもよくなるな』
『そうッスねー。ぶっちゃけここまま余生を過ごすのも悪くないッスかも………』
完全に戦意を削がれた俺とコーキがそう呟く。そして普段はうるさ………にぎやかなリリナさんも、黙ってこの絶景に見入っていた。
そして、どれほどの間そうしていただろうか。
不意に、水面に大きな波紋が浮かんだかと思ったその瞬間―――
ザッパアァァァン!と盛大な波しぶきを立てて、何か巨大な物が跳ねた。よく見ればそれは、地球でいうマグロに似た大きさの魚で。
グウゥゥゥーッと、それを見た俺とコーキのお腹が同時に悲鳴を上げた。
『そういや、お腹空いたッスね………』
『ま、フロアボス戦+レベルアップしたからな。でも水に入って捕るわけにもいかねーし………』
『………釣るしかないッスね』
『だな。でも餌はどうすんだ?』
一瞬目を見合せ、そして同時にある一点に向けた。すなわち、釣り餌としての経験がある、小さな手乗り女神へと。
『………やっぱ?』
『ですよね』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、数分後。
『やっぱ狙うは大物だよなー』
『そうッスよねー。ま、餌が貴重なら釣れるのも貴重なヤツっていう法則があるッスから』
『え、マジで?そんなのあんの?知らんかった』
『釣り好きの中では有名ッスけどね』
その辺で拾った棒切れにコーキが糸を巻き付け、即席で釣竿を用意した俺達は、気ままに釣糸を垂らしていた。気分は穏やかな昼下がりである。
『和むな―』
『和むッスねー』
もはやここが迷宮のど真ん中であることなどとうに忘れ、世間話に興じる俺達。そんな俺達の視線の先には―――
『ちょっ、女神にこんなことして良いとおもってるんですか!?早くほどいて下さい、物理的に叩きのめしますよ!』
『………和むなー』
『………和むッスねー』
『完全スルーですかこの野郎!』
天井から簀巻き状態でぶら下がるリリナさんが。
叫びながら左右に勢いよく揺れる姿は、なんとなくミノムシを連想させる。
『ホントにあんなの効果あるんスか?』
『まあ見とけ。騒ぐリリナさんの足元に魚影が集まってきてるだろ。アレが食らい付けばこっちのモンよ』
『なるほど。さすがアニキ、考えることが一味違うッスね………。恐ろしい子………ッ!』
『誰のキャラだそれは』
何故かセルフでキャラ崩壊を始めたコーキ。誰に対して需要があるのだろうか、その行為は。ここには俺とリリナさんくらいしか見る人は居ないのに。
ちなみに今のところ釣果はゼロ。ビックリするぐらいの難易度である。まあ、餌がその辺に自生していたタール草だから仕方ないのだが。
『草で釣れるんスかね?』
『さあなー?でも餌って言えばコレくらいしか無かったし。やっぱ適当に巨大ムカデ狩ってきた方が良かったかなー?』
『そっすねー。異世界なら肉食の魚くらいわんさかいるだろーし………』
さすがに釣れなすぎて、俺達の頭に「飽きた」といつ言葉が浮かんだその時。
再び凄まじい水飛沫と共に、例の巨大魚が飛び出してきた。もちろん、天井からぶら下がるリリナさん目掛けて一直線に。
『いよっしゃあ!狙い通りヒット!』
『うわぁ………ホントに掛かったッス………』
『いやあぁぁぁ!?なんか来たあぁぁぁぁ!!!』
悲鳴を上げるリリナさんだが、巨大魚はあんぐりと大口を開けて飛びかかる。その口には、鋭い牙が無数に生えていて。
あわやリリナさんが食べられる!とその寸前で。
水面にさざ波が立ったかと思うと、さきほどの巨大魚を超えるレベルの水飛沫が飛び散った。そして、そこから姿を現したのは、首がかなり長い爬虫類のような生物で………。
『き、恐竜……ッ!?』
『マジッスか!?』
その首長竜のような生物は、リリナさんを喰おうとした巨大魚を咥えると、湖の底へと姿を消していった。
その時の波で、水中へと落下したリリナさんが岸へと流れ着いてきた。
『異世界に恐竜っていたんだな………』
『絶滅してなかったんスね』
『そんなことより、私の心配とか無いんですか?』
『『無いけど?』』
どれだけ綺麗でもここは異世界迷宮、怪物がひしめく危険地帯で和むことなど出来ないのだった………。
『あっ、魚………』
『そういえば………』
『お腹減りましたね………』
………和むことなど出来ないのだった!
その長い長い通路を抜けた先に、新たな世界が待っているのだった。
そして今。
偶然か必然か、なんとかフロアボス討伐を果たした俺達は、2層へと降り立っていた。
『うおっ………こりゃスゲェな』
『そうッスね………。こんな光景、日本どころか地球じゃ絶対見れないッスよ』
『うんうん、やっぱり2層は綺麗ですよねー!』
口々に感想を漏らす俺達。だが、目の前に広がる光景を伝えるには、たとえプロのアナウンサーが5分掛けても足りないだろう。
1層とは違い、広く開けた場所。高い天井からぶら下がる鍾乳石、そして迷宮のあちこちで輝きを放つ魔晶石。そして、その輝きを反射する水面。
そう、この2層は、フロア1面が『水』で覆われた世界だった。その水面が揺らめく度に、輝きがゆらゆらと揺れて幻想的な光景を生み出していて。
『………もう、魔王とかどうでもよくなるな』
『そうッスねー。ぶっちゃけここまま余生を過ごすのも悪くないッスかも………』
完全に戦意を削がれた俺とコーキがそう呟く。そして普段はうるさ………にぎやかなリリナさんも、黙ってこの絶景に見入っていた。
そして、どれほどの間そうしていただろうか。
不意に、水面に大きな波紋が浮かんだかと思ったその瞬間―――
ザッパアァァァン!と盛大な波しぶきを立てて、何か巨大な物が跳ねた。よく見ればそれは、地球でいうマグロに似た大きさの魚で。
グウゥゥゥーッと、それを見た俺とコーキのお腹が同時に悲鳴を上げた。
『そういや、お腹空いたッスね………』
『ま、フロアボス戦+レベルアップしたからな。でも水に入って捕るわけにもいかねーし………』
『………釣るしかないッスね』
『だな。でも餌はどうすんだ?』
一瞬目を見合せ、そして同時にある一点に向けた。すなわち、釣り餌としての経験がある、小さな手乗り女神へと。
『………やっぱ?』
『ですよね』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、数分後。
『やっぱ狙うは大物だよなー』
『そうッスよねー。ま、餌が貴重なら釣れるのも貴重なヤツっていう法則があるッスから』
『え、マジで?そんなのあんの?知らんかった』
『釣り好きの中では有名ッスけどね』
その辺で拾った棒切れにコーキが糸を巻き付け、即席で釣竿を用意した俺達は、気ままに釣糸を垂らしていた。気分は穏やかな昼下がりである。
『和むな―』
『和むッスねー』
もはやここが迷宮のど真ん中であることなどとうに忘れ、世間話に興じる俺達。そんな俺達の視線の先には―――
『ちょっ、女神にこんなことして良いとおもってるんですか!?早くほどいて下さい、物理的に叩きのめしますよ!』
『………和むなー』
『………和むッスねー』
『完全スルーですかこの野郎!』
天井から簀巻き状態でぶら下がるリリナさんが。
叫びながら左右に勢いよく揺れる姿は、なんとなくミノムシを連想させる。
『ホントにあんなの効果あるんスか?』
『まあ見とけ。騒ぐリリナさんの足元に魚影が集まってきてるだろ。アレが食らい付けばこっちのモンよ』
『なるほど。さすがアニキ、考えることが一味違うッスね………。恐ろしい子………ッ!』
『誰のキャラだそれは』
何故かセルフでキャラ崩壊を始めたコーキ。誰に対して需要があるのだろうか、その行為は。ここには俺とリリナさんくらいしか見る人は居ないのに。
ちなみに今のところ釣果はゼロ。ビックリするぐらいの難易度である。まあ、餌がその辺に自生していたタール草だから仕方ないのだが。
『草で釣れるんスかね?』
『さあなー?でも餌って言えばコレくらいしか無かったし。やっぱ適当に巨大ムカデ狩ってきた方が良かったかなー?』
『そっすねー。異世界なら肉食の魚くらいわんさかいるだろーし………』
さすがに釣れなすぎて、俺達の頭に「飽きた」といつ言葉が浮かんだその時。
再び凄まじい水飛沫と共に、例の巨大魚が飛び出してきた。もちろん、天井からぶら下がるリリナさん目掛けて一直線に。
『いよっしゃあ!狙い通りヒット!』
『うわぁ………ホントに掛かったッス………』
『いやあぁぁぁ!?なんか来たあぁぁぁぁ!!!』
悲鳴を上げるリリナさんだが、巨大魚はあんぐりと大口を開けて飛びかかる。その口には、鋭い牙が無数に生えていて。
あわやリリナさんが食べられる!とその寸前で。
水面にさざ波が立ったかと思うと、さきほどの巨大魚を超えるレベルの水飛沫が飛び散った。そして、そこから姿を現したのは、首がかなり長い爬虫類のような生物で………。
『き、恐竜……ッ!?』
『マジッスか!?』
その首長竜のような生物は、リリナさんを喰おうとした巨大魚を咥えると、湖の底へと姿を消していった。
その時の波で、水中へと落下したリリナさんが岸へと流れ着いてきた。
『異世界に恐竜っていたんだな………』
『絶滅してなかったんスね』
『そんなことより、私の心配とか無いんですか?』
『『無いけど?』』
どれだけ綺麗でもここは異世界迷宮、怪物がひしめく危険地帯で和むことなど出来ないのだった………。
『あっ、魚………』
『そういえば………』
『お腹減りましたね………』
………和むことなど出来ないのだった!
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