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トカゲな俺の異世界迷宮生活

本城ユイト

No.18 1層攻略戦 ③

一言ではとてもじゃないが言い表せない状況。
あえてラノベタイトル風に言えば、「今まで戦っていたボスが、突然謎のモンスターに補食されてる件」ってところだろうか。

その乱入者は、山と見間違えるかのような巨体。おまけに深い緑色だから、余計にそう見える。ちなみに大きさの比較でいうと、地球のキリン約4頭分(全長50センチのトカゲ視点)である。

『なあ、アレなんなんだよ』

『オイラに訊かれても分かんないッスよ。女神はなんか分かる?』

『相変わらず私にはタメ口なんですね!………コホン、えーとですね、あれはフロアボスですよ』

『へー、そうかフロアボスか………っておい、ちょっと待て!フロアボス!?それってあのチートカブトムシじゃねーのかよ?』

『え?いつ誰が「フロアボスは1体」なんて言いましたか?私はそんなこと一言も言ってませんよ?』

してやったり、と悪どい笑顔のリリナさん。多分本人としては些細なイタズラ程度なのだろうが、こちらからしてみれば大いに死活問題である。

『騙されたってことかよ………』

『嫌ですねぇ、私は嘘はついてませんよ?』

ニヤニヤとしたリリナさんの笑みを見るうちに、俺の中で何かが芽生えた。メラメラと燃え上がるその感情は―――殺意。

『コーキ………』

『分かってるッス………』

互いに顔を見合せ、こくりとうなずく。
そして―――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

迷宮の壁から突き出た岩場。
その上に立った俺達は、

『よーし、準備いいなー?』

『オールオッケーッスよー!』

『『はい、せーの!』』

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???』

コーキの製糸スキルで作り出した糸でリリナさんを簀巻きにして、2人がかりでその身体を空中へと投げ飛ばした。

ちなみにコレはれっきとした作戦の一環だ。断じて仕返しなどではない。大事なことなので2度言おう。断じて仕返しなどではない!

用はコレ、釣りみたいなものだ。餌であるリリナさんをぶん投げて、それに食いついているところを俺とコーキが奇襲して倒す。どうだ、完璧だろ?

『いよっし!後はアレが上手く掛かるのを待つだけだな………ッ!』

『任せて下さいッス。オイラ、趣味でよく海釣りに行ってたんスよ。こんなイージーモード楽勝!』

『そっか。じゃあここは任せたぞ。俺は最終兵器を作りに行ってくるから』

『気をつけて下さいッスね』

コーキと別れた俺は、壁沿いに移動してお目当てのものを探す。確か、前にこの辺で見たような………。

『おっ、あったあった!』

そこにあったのは、壁から生えるようにくっついた赤い水晶。鑑定結果は《魔晶石》。迷宮内の魔力的なエネルギーが結晶化したもので、迷宮の至るところに存在するが、各色ごとに効果が違うらしい。

とにかく俺はその赤魔晶石を壁から強引にへし折って回収すると、別の物を探して迷宮をさ迷い歩くのだった―――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして10分後。
目当ての物を全て回収した俺は、コーキの元へと戻ってきていた。

『いよーうお疲れさん。どんな感じだ?』

『見ての通り、掛かってますよ。順調ッス』

下を見れば、大声で叫ぶリリナさん目掛けて大きな足が何本も振り下ろされていた。だがそこは腐っても女神。まるでいもむしのような動きで危なく全て回避している。

だがその光景は―――女神として、そして1人の女性としていかがなものだろうか。

『まあいいや。とにかくコレの調合を頼むわ』

『え?ああ、了解ッス』

ガシャン!と俺が音を立てて地面に置いたのは、先ほど回収した魔晶石。ただし、赤に加えて白、オレンジも追加してあるが。

そしてコーキは6本ある脚を器用に使って、それらを集めると―――

『ほい、《調合》っと』

バシュッ!と一瞬魔晶石が光を発する。そして、光が収まった後、そこにあったのは―――調合に成功した3色マーブル模様の魔晶石。

透き通るような光沢を放つ魔晶石は、もはや地球のダイヤモンドなんか目じゃない美しさだ。

『さてと、そんじゃあもう一仕事頼む』

『いいッスよ。今度は何をすればいいッスか?』

『えっと、この魔晶石を糸でぐるぐる巻きにして、片方の糸の先っぽを50センチくらい伸ばしてほしいんだけど………』

『お安いご用ッス!この晃樹にお任せあれ!』

俺が見ている前で、綺麗な魔晶石があっという間にコーキの糸で絡め取られてしまう。そして、ものの数秒で俺の注文通りの品が出来上がるのだった。

『はい、これでいいッスか?』

『おお、もうバッチリ!すげぇなその技術、洋服とか作ったら売れるんじゃね?』

『あはは、それもいいッスね。まあそれは後々検討するとして。これ、何に使うんスか?』

『んー?これはだな、こうするのだよ』

伸ばされた糸の先っぽに自分のしっぽの先をくっつけると、その場で頑丈に巻き付ける。これで俺の理想の武器が完成ってワケ。

『その名も「即席モーニングスター」だ!』

『おおー!さっすがアニキ、カッケーッス!』

『ふふん、だろ?もっと誉めてもいいんだぜー?』

『マジ最強!最高!えと………最強ッス!』

『ボキャブラリー死んでんのか?』

なんだか悲しくなってきたのでここら辺で打ち切ろう。それにいくら仕返しで突き落としたとはいえ、さすがにリリナさんも助けなきゃな………。

いや、仕返しじゃないよ?ホントだよ?今のはただのミス!良い間違い………じゃなくて言い間違いッ!

『いやさすがにそれは………ウケないッスよ。そもそも誰も聞いてない会話だし』

『うわおぅっ!?な、なんだよ急に?相手の思考を読むスキルでも修得したのか!?』

『いや独り言がダダ漏れだったッスから………』

『あ、え、そうなの?やだ恥ずかしいッ!』

なんかこう、社会の窓を前開にして街中を歩いたような恥ずかしさだ。いや、そんな経験ないんだけどね?

『そんなことよりアニキ!勇者っぽくあのデカブツ殺っちゃって下さい!ついでに女神も!』

『だから殺るって言うなよ!というかリリナさんへの心配は全然無いんだな………』  

『え?当然じゃないッスか』

『………だよな』

まあワザと当てる気はないが、不可抗力で当たるかもしれない。そう、不可抗力で。決して当たってもワザとではない!

そう心の中で言葉を重ね、俺は今までいた足場からなんの躊躇もなく飛び降りる。そしてその真下には、例の餌―――もといリリナさんと、謎の巨大モンスターが。

思い切りしっぽを振ると、即席モーニングスターが唸りを上げて加速する。そしてその先に付いた魔晶石はモンスターの頭目掛けて一直線に墜ちて―――

その瞬間。
ズッドォォォン!!!という激しい爆発が、迷宮を揺さぶった。それは、俺のモーニングスターの先っちょの魔晶石が引き起こした現象だ。

生物共通であろう頭にダメージを受けたそのモンスターは、その巨体をぐらつかせると、脇の壁に突っ込んでいった。

身体からしゅうしゅうと煙を上げているところを見ると、恐らくもう生きてはいない。つまり―――

『いよっ………しゃあぁぁぁぁぁ!!!』

―――ユレイド大迷宮第1層、フロアボス撃破。

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