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トカゲな俺の異世界迷宮生活

本城ユイト

No.16 1層攻略戦 ①

『というわけで、ボス倒しましょう!』

何故か一番意気込むリリナさんを先頭に、俺達は迷宮の中を歩いていた。もちろん向かう先は、初めて例のカブトムシと遭遇した場所だ。

『ホントにアレが倒せるんスかね?かなりのチート仕様ッスよ、あのステータス』

『だよな。酸攻撃だけでも厄介なのに、その上テレポートとか………。誰だよあんなチート設定したやつ!一発ぶん殴ってやりたいッ!』

実際に1度やられた身としては不満が収まらない俺とコーキは、先ほどから文句を言い合っている。正直な話、不満を吐き出すならば3日3晩あっても足りないくらいである。

『あーもう!そんなに不満なら本人ぶん殴ればいいじゃないですか!』

『本人って………。そりゃどっかの適当な神様が「あーもうメンドいしこんなもんで良いだろ」的なカンジで設定したんじゃ?』

『ま、ぶっちゃけ神様のイメージってそんなモンッスよねー』

俺達が想像する神様のイメージをストレートにぶつけると、さすがのリリナさんも平静ではいられなかったらしい。

頬をピクピクとひきつらせながら、何か莫大な感情を押さえ込むかのような感じで言う。

『あ、あなた達は神様をなんだと思ってるんです?』

『ニート集団とかだな』

『ロクでなしの集まりとかッスね』

またも俺達の脳内のイメージをストレートに吐き出すと、リリナさんは少しの間目を瞑った。そしてゆっくりとまぶたを開け、穏やかな表情でポツリと一言。

『馬鹿な無礼者には天罰喰らわせますよ?マジで』

『『スイマッセンでした女神様!!!』』

怒りが一周して逆に穏やかな表情のリリナさんに、俺達は慌てて伝家の宝刀DOGEZAを敢行する。これさえ覚えておけば過酷な日本社会でもやっていける!
………ハズ無いですよね。そんなに世界は甘くない。

俺が遠い目をしながら世界の厳しさに思いを馳せていると、いまだ絶賛ド怒り中のリリナさんが笑顔のまま言ってきた。

『じゃあ天罰として、もう1回転生と今すぐ生まれ変わるのどっちがお好みですか?』

『そりゃ遠回しに死ねってことか!?』

『オイラまだ死にたくないッスよ!』

『………冗談ですよ。半分、いや1/3くらいは』

『『!?なん、だと………ッ!?』』

ボソリと言葉の最後に付け加えられた本音に俺達が戦々恐々としていると、不意にリリナさんが何かに反応したように首を横に向けた。

とそれと同時。
俺が何気なく使用した《熱感知》が、生物特有のシルエットを捉えた。

『―――ッ!これって………!』

『ええ、間違いありません!来ますよ!』

俺とリリナさんがそう叫んだ瞬間。
迷宮の奥、暗闇の中から大量の液体が飛んでくる。
それはまさに酸の豪雨だ。

『ヤバイッス!』

『と、とにかく避けろッ!』

とっさに近くの横穴に飛び込んだ俺達の目の前で、派手な音を立てて地面が溶けていく。ジュウジュウと煙を噴き上げながらボロボロになる地面を見て、俺の背筋をゾワッとしたものが駆けた。

『もう少しで俺達、ああなるとこだったな………』

『ホント、恐ろしいッスね………』

俺達が2人でその恐ろしさを再確認していると、俺はふと気づいてしまった。この場に無くてはならない大切なことを。

『………なあ、リリナさんどこ行った?』

『えっ、あれッ!?さっきまでここにいたと思ったんスけど………?』

あちこちを見回した俺達は、嫌な予感を覚えながら揃って視線を前へと向ける。そこには―――

相変わらず毒々しい紫色のカブトムシと、その6本ある脚のうちの前2本で押さえつけられた小さな人影があった。

『あっ………』

『捕まってるッスね………』

俺と同じく呆れを滲ませた声でコーキが呟く。
まったく、ボス戦でヒロインが捕まるとか、どこのRPG世界だよ。ネトゲか!

こんな時テンプレ通りなら、聖剣に選ばれし勇者的なイケメンが戦うのだろうが、生憎ここにいるのは勇者か魔王になり損ねたトカゲと蜘蛛だけだ。

『どうするッスか?』

『どうするってそりゃあ………助けるしかなくね?』

『そうッスよね。ここで見捨てたら後味悪いどころか後で復讐されそうッスから』

『だよな………。まず勝てないとは思うんだけど、とりあえず戦ってみるか!』

勇者とは程遠い台詞を言い合いながら、俺達は横穴から外へと飛び出す。そして目の前のカブトムシ目掛けて全力でタックルをかます。

当然カブトムシはテレポートで消え、俺達の一撃は掠りもしないが―――

『………それ込みで予想通りだっつーの!』

『作戦成功ッス!』

拘束から解放されたリリナさんが、パンパンと軽く膝を払って立ち上がる。そして、腰に手を当ててビシッとカブトムシを指差して、

『さあ部下達、やっておしまい!』

『いや俺達がいつ誰の部下になったよ?』

『以外とノリノリッスね、あの女神様………』

女神様からの有り難くない命令。正直自分でやったらどうだ?とか思ってしまうが、ここは本音を控えた方がよさそうだ。だってあの人、目が座ってるもの。

『アニキ、ぶっちゃけあの女神様が戦った方が早いんじゃ………?』

『言うな。世の中にはな、口に出さない方がいいこともあるんだ。その考えには激しく同意見だが、口に出した瞬間に存在抹消されかねない………』

『なるほど。確かにそうッスね………』

『つまり、俺達が取るべき行動はただ1つ!』

とにかく俺は、覚悟を決め、目の前の敵を見据え。
コーキは8本ある脚を器用に使ってリリナさんを後ろに庇う。そして―――

『とにかく勝つしかねーんだよ!』

『こうなりゃヤケクソッス!』

共に叫んで、駆け出すのだった………。

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