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トカゲな俺の異世界迷宮生活

本城ユイト

No.09 迷宮はみんな巨大

広い迷宮の通路を埋め尽くすような巨体。 
天井近くでギラギラと赤く輝く5個の瞳が、真っ直ぐに俺を見下ろしてくる。そしてその顎から時折火の粉が散り、巨大蜘蛛の顔を明るく照らし出す。

それを見て俺は思った。
この世界の生物、みんなデカすぎじゃね?

思い返してみると、巨大ムカデに巨大蜘蛛、タートルなんちゃらもかなりデカかった。まあこの弱肉強食の迷宮じゃ、そうしないと生き残れないのだろう。
さすがは異世界、世知辛い。

『そんな感想言ってる場合ですか!?』

全力で目の前の光景から目を背ける俺に、リリナさんが涙目で抗議してくる。仕方ない、助けておこう。
普段からリリナさんには色々と世話になって………いるかなぁ?

確かに出会った当初は完璧な女神様だと感じたが、どうも最近そんな事無いんじゃないかと思っている。
とくにSな発言が目立つ様になってきた。

『凄いか凄くないかで言えば凄いですけど………正直な話、かなり弱いですよね?』

『確かに、今弱いですもんね』

『なるほど!さすが海翔さん、頭は良いですね!』

今までのリリナさんの無自覚な暴言の数々が俺の脳裏をよぎる。そして確信した。

………やっぱり世話になってない。
それどころか俺のメンタルをタコ殴りだよ。
助けなくて良いかな?良いよね。問題ないよね?

『ごめんなさい!謝りますから助けてぇ!』

涙目を通り越してガチで泣き始めているリリナさん。
ホントに仕方ないな。
この俺が勇者っぽく女神様救ってやりますか!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ドカボキベキグシャ!と轟音が響く。
そんな暴力的な音を遠くに聴きながら、俺は思った。
あっれー?俺、全然歯が立たないよー?

カッコよく飛び出していった俺は、巨大蜘蛛の後ろに控えていた子蜘蛛の群れにボコボコにされた。
だって子蜘蛛なのに俺の2倍くらいの体格なんだよ?
それが10も20もいるんだよ?
勝てるわけないじゃん。

一瞬俺の頭に《逃走》の2文字が浮かぶ。くそっ、迷った時はあれだ!脳内天使と悪魔、カモン!

『はいはーい!天使のリリナです!』

『なんで私が悪魔なのよ………』

天使のリリナさんと悪魔の美奈に、互いの意見を主張してもらおう。分かりやすく、簡潔に!

『ここは逃げないで戦いましょう!そうすればドS女神も虜に出来て一石二鳥!ふっふっふっ………』

『ここは逃げるが勝ちよ!あの残念女神は見捨てて元の世界に帰るの!ふっふっふっ………』

互いの意見がどっちも黒いのは俺の意志が反映されているからなのか、それともモデルの本性が反映させているからなのか。俺は前者だと信じたいな。

とは言え、とりあえず選択肢の再確認は出来た。
助けるか、見捨てるか。
こんな時、前の俺なら速攻で逃走してただろう。
でも、今は違う。
今の俺には、助ける力があるんだから!

俺はカッ!と目を見開くと、目の前の蜘蛛の背中に噛みつく。当然相手も暴れるが、構わない。一匹でも倒せれば、勝機がある!………かも。

そして噛みついた相手がついに倒れた。
その瞬間、反動で俺の身体も吹っ飛ばされる。

壁に叩きつけられ、ズルズルと崩れ落ちた俺の頭に、待ち望んでいた声が響いた。

【《焔の牙Lv1》を修得しました】

そう、ここまで来た目的。
そしてこの場で最大の攻撃になるであろうスキル。

行っくぜぇぇぇぇぇ!!!
心の中で絶叫して、俺は突撃を敢行する。
迫り来る蜘蛛達の脚の下を潜り抜け、噛みついて怯ませ、何とかリリナさんの元へとたどり着く。

蜘蛛の糸にグルグル巻きにされて転がっているリリナさんを背中に乗せ、俺はもと来た道を引き返す。

そして、俺が半分くらいまで突破して、目の前の蜘蛛をぶっ倒したその瞬間。

【種族『トカゲ』がLv5へとアップしました】

そんな声と共に、俺はバリッと脱皮。
傷もすっかり消えたが、それと同時に尋常じゃない空腹感が襲ってくる。

『か、海翔さん!?大丈夫ですか!?』

ぐらり、と身体が揺れるが、俺は気合いで持ちこたえる。そして、最後の力を振り絞って我が家目掛けて駆け出すのだった―――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、俺達は生き残った。
ほうほうのていで我が家へとたどり着いた俺は、空腹が限界を迎えて動けなくなった。

とりあえず大量に育ったタール草を食べて、後で巨大ムカデを狩って来ることにした。俺には空腹よりも、優先すべきことがあったからだ。

それは炎。リリナさんが拾ってきてくれた薪に噛みつくと、すぐに明るい炎が出た。
それは我が家を満遍なく照らし、温かくする。

今回俺が苦労したかいがあった、ということだ。
俺が炎にあたって暖まっていたその時。

『ごめんなさい、海翔さん!』

とリリナさんが突然頭を下げた。
いや、言いたいことは分かるのだが、何だか俺がフラれたようで落ち着かない。いや、フラれた経験無いけどな。

とにかく頭を下げてくるリリナさんを押し止めて、俺は伝える。問題ない、大丈夫だと。
今ほど声が出せればなと思ったことは無い。

だが幸い俺の言いたいことは伝わったのか、リリナさんは普段通りの笑顔を浮かべて一言叫んだ。

『カッコ良かったですよ、海翔さん!』

俺が不覚にも見とれてしまったのは、仕方無いことだろう―――

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