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トカゲな俺の異世界迷宮生活

本城ユイト

No.06 もう帰りたい

ズドォォン!という轟音が響き渡った。
それは、俺がまたしても巨大ムカデを撃破した音だ。
後ろからの奇襲+麻痺毒スキルのコンボで、今の俺には巨大ムカデなど相手にならない。 

『わあ、本当に倒せるんですね!すっごーい!』

そんなリリナさんの歓声を背に受けて、思い切り浮かれる俺。めっちゃ嬉しいんだけど!
という訳で今日のお肉を無事にゲットし、意気揚々と帰宅する。そんな時、ふと思った。
そういえば俺、ここがどこだか知らないな。

だが便利な地図など当然持っていない。まあ持っていたとしても、読めたかどうか分かんないけど。
うーん、としばらく唸っていた俺は、閃いた。
壁はあるんだから、鑑定すればいいんじゃね? 
という訳で鑑定スキル発動。

【ユレイド大迷宮・1層】
【世界最大の迷宮であり、全7層から成る】

なるほど、迷宮か。
どうりで真っ暗な訳だよ、地下の洞窟だったんだね。
うんうん、納得納得………って、違うだろぉっ!

『ど、どうしたんですか!?』

突如心の中で絶叫した俺に、驚いた様子でリリナさんが問いかけてくるが、今はそれどころじゃない。
世界最大の迷宮?全7層?
どう突破すればいいんだよ。

分かりやすくRPGに例えるならば、チュートリアル終了後の初期装備でラストダンジョン的な場所の奥深くに置き去りにされたカンジだ。
つまり、完全に無理ゲーだろ。

『あ、あははは。種族によって転生する場所は様々なんですが………普通は街とか森とかなんですけどね』

つまり、俺の種族『トカゲ』は弱いうえにスタート地点最悪という超ハンデ付きの種族なのだ。異世界に来てはや1週間、これほど元の世界に帰りたいと思ったことはない。
まあ、帰る方法も無いし無理なんだけど………。

『帰る方法ありますよ?』

へー、そうなんだ、すごいね………ってマジか!?
俺帰れんの!?あの世界に!?平和な日本に!?

『ま、まあ簡単ではありませんけど………。あるにはありますよ。日本に帰る方法というか条件』

 なら早速帰りたい!異世界なんてもうこりごりだ!
というか帰った場合、俺死んでるんじゃなかったっけ?そこんとこどうなんの?

『その場合は実は生きてました的なカンジで………』

 ふーん、結構適当なんだな、その辺りは。まあ別に良いけど。で?どうすれば日本に帰れんの?

『魔王討伐です』

 なるほど、つまりゲームでよくある『せかいを・すくった・ほうびに・ねがいを・かなえよう』ってやつだな。テンプレじゃないか。

『ゲームはよく分からないですけど、その通りです』

 うん、普通に無理。だって魔王だよ?そういうのは勇者の役目でしょ。ただの1トカゲの俺には無理だよ。

『………日本でやり残したこと、あるでしょう?』

 いきなり真面目な顔でそう問われて、記憶を探る俺。そういえば新アニメ見てないし、買った某有名ラノベも読んでないな………って、ああああぁぁぁぁぁぁ!!!

『な、何かありました?』

 驚き半分、期待半分の表情で俺の顔を除きこんでくるリリナさん。普段ならまじまじと見つめ返すところだが、今の俺にはそんな余裕がない。

 それは、死ぬ直前の出来事を思い出したから。
 あのとき、美奈みなが大事な話があるって言ってただろ!そうだ、その話を聞くためにも帰らねばならない!

『そうですよ!帰りましょう、日本に!』

 熱く語りかけてくるリリナさんの整った顔を間近で見つめながら、俺は魔王討伐への意欲に燃えていた。 
そう、さっさと魔王ボコってリア充生活を始めるために!

『動機はアレですけど、まあやる気になってくれたなら良かったです』

 いよっし!それじゃあ早速魔王ボコりに行こう!
そう決意して歩き出した俺は、わずか3歩で大きな壁にぶち当たった。 

 そういえば魔王って、どこにいるんだ?なんか魔界にそびえ立つ巨大な魔王城の最上階とか?

『いえ、魔王はユレイド迷宮の最下層にいますよ』

 そっかー、じゃあすぐ近くだな。
 早速行こうぜ………って、え?ユレイド迷宮この洞窟の地下?

『そうですけど………どうしたんですか?』

 いや、本当に待ってほしい。
 確かに例えで『ラストダンジョン的な場所』って言ったけどさ………まさか本物のラスダンだとは。ということは俺、ラスダン出身なの?すごいの?

『凄いか凄くないかで言えば凄いですけど………正直な話、かなり弱いですよね?』

 そんなリリナさんの何気ない一言が、俺のメンタルに亀裂を入れる。俺の心がピシリと音を立てたよ?俺不覚にもちょっと泣きそうかも。

『い、良い意味で弱いってことですから!大丈夫ですよ!自信持って下さい!』

 いや、全然フォローになってないし。
むしろ『弱い』という言葉が突き刺さったよ。

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