夢の中でゲームが始まったって本当でしょうか? (仮名)

踊り狂った猫

陸話:戦闘の終局とその後






 「ハ、ハ、ハ、ウッ」

 息が切れる、傷を見てしまったため尚更痛みが頭にまでやってくる。1秒さえも長く感じるこの痛みから脱却することはまず不可能だ。それこそ、この場に瞬時に回復できる手段があるとは思えない。
 痛みで思考が妨げられながらも、なんとか数分を使い状況を確認する事に至った。
 
 「ふー、ハ、ふー、っーー、ふーー」

陣痛が来ている妊婦のように呼吸し、歯をくいしばり何とか左手で上半身を起こした。
幸いなことに狼は、先の戦闘から動きを見せておらず、最初に対面した時と同じぐらいの距離をとっている。死の局面を迎え彼の脳は通常より何倍も何十倍も動いている、キョロキョロと周りを見渡し、思考に意識を傾けた、

 (先程から、狼は全く動き見せない、何故なんだ、こちらの様子は伺っているみたいだが、あの距離は変わっていない、何故だ、何故、なぜ、ナゼ、なんだ、ひっかかる、既視感がある、どれだ、頭を振り絞れ、酸素を、ニューロンよもっと早く動け、どれだ、どれ、、、、、あ、あった)

 先程まで、虫の息だったのにも関わらず、突然動き出し出したかと思うと、片足を伸ばした状態で体育座りをしたような格好をとると、ブツブツと何かを話しながら、しばらく何かを考えている、と、突然ビクッとした。すると
 彼の顔は、最初は余りにも人間味がない無表情であった、狼に噛まれ、まるで悪事がバレた幼児のような追い詰められた表情をとったかと思うと、少し口角を上げ、ボソッと「確かめてみるか」と呟くと、また最初の表情へと戻ってしまった、

 そうすると、苦痛の声を上げながら、立ち上がる、片手を庇いながら、また傷を負ってるのは片手のはずが、足を少し引きずりながら、おもむろに狼の方へと歩き出した、、

 「ウゥゥゥゥーーー、」

狼の警戒が上がった、口を開き彼の血がついた牙は赤黒く光って見える、

 ある程度近くまで行き、狼の周りを確認すると、

 「そうか、だから君はそこから余り動かなかったんだね、」

何かを確信したように、そして優しくそう呟いた。

 「ヘルプさん、少し出して貰いたいものがある、」

 「A,それでは、出して欲しい物を想像して下さい、尚これはチュートリアルですので、ある程度の認識の誤差に関しましては、こちらで修正いたします。」

 (こんな、チュートリアルあってたまるかよ、ここを出たらこのゲームやってたまるか、)
そう思いながら、自分はあるものを想像した、、

-----冬夜の思考視点-----

あった、そうだったのか、と自分はこのチュートリアルをクリアする鍵を恐らく見つけた、まだ鍵の形はしっかりとはしてない、確証がないからだ、しかしこれが本当なら恐らく、あの恐ろしい姿をした悪魔みたいなやつを戦闘不能にできるはずだ、

その鍵とは、最初の方でジャッジした内容にある


個体名:日本狼
 討伐難易度:G 
 詳細: 脊椎動物亜門哺乳類網ネコ目イヌ科犬属
体長103cm、体重12kg
基本的に小規模の群れで活動し、基本的に臆病であまり戦闘は好まず、あまり縄張りから出ない、
鹿を好んで狩る、<これ以上の情報は現在のレベルでは確認できません。>

この、詳細部に書かれている、"臆病で戦闘を好まない"である、襲われてしまった為この内容の真意を見逃していたのだ、そう最初に襲われたのも、自分が突然大声をあげたからで、それまでは様子を見てこちらに近づいてこなかった、
 つまり突然大声かけられて狼が襲われると勘違いし、決死の覚悟で襲って来たのだ、これが本当なら、戦う必要はない、ヘルプさんは確かに戦って貰うとは言ったが、殺せとは言っていない戦闘不能しろと言ったのだ、
 いきなり、身1つで狼の前に連れてこられたら、そりゃ誰しもそんな事は考えない、戦って、殺して、勝つ、それがセオリーだと、数分前の自分もそう思ってた、
 しかし、この推測が正しいのであれば、、とりあえず近くであれを確認しなければ、

 あれとは、狼の情報にも載っている、イヌ科がよくする、あれだ、縄張りを認識させるマーキング、この真っ白な空間であれば少し遠くても認識できるはずだ、

うっ、やっぱりまだ痛みが強い、が立てない事は無い、歩くたびに響く腕の痛みに耐えながら、ある程度の距離で確認すると、

 あった、そう、それが見たかったんだよ、自分の推測通り、狼の周りには距離を置きながら複数箇所にシミを発見した、そして狼はその場所から先には、戦闘以外出ていない事が、床についた爪痕から確認できる、つまりこのジャッジの情報はかなりの信憑性があると言う事がこれによってわかった、

 さて、これでこの部屋から出る鍵のピースは揃った、後は戦闘不能にさせるだけ、
 ここからは少しギャンブルを伴う、もしかしたら負けて、死んでしまうかもしれない、またあの鋭い牙に身体を噛まれるかもしれないが、
 恐らくヘルプさんの言動から察するに、このままではこの部屋から出られないだろう、せめてこの部屋くらいはでて運営に目に物見せてからゲームを辞めてやりたい、

さぁ、最後のピースをはめるとしようか、綺麗な絵が観れると嬉しいよ、

 そうして、ヘルプに聞いて自分が想像して出したのは、そう他でも無い、
鹿の生肉である、戦闘せずに、自分は敵では無いと相手に理解させる、これには言語が交わせない相手にはやはり、好物を与える事が適切だと、安直かもしれないがかなり期待できるだろう、

 そう思い、目の前に出した生肉は、皆が想像し得るだろう、骨つき肉とやらだ、
 本当に想像しただけで、出るとは思わなかったが、ここはITDの技術力に感服しながら、狼の前まで投げた、

 最初は警戒し、距離をとっていた狼だが、
鼻を嗅ぐわせ、少しずつ近づき縄張りの外にある肉に対し、ほんの数十cmの距離まで来たが、どうしてだか気にしているし、先程より口から出る涎の量も増えているが、手を出そうとしない、失敗かと思ったその時、ある事に気付く、
相手が敵かもしれない者に、渡された食べ物を狼だとしてもそう簡単に食べるかと言われたら、食べないだろう、と思い、襲われる危険を顧みず、生肉まで近づくと

ハグっと、勢いよく齧り付きそれを咀嚼した、そして、飲み込み、また距離を取ると、

 それを見た狼は、とうとう縄張りから足を踏み出し、生肉に夢中で齧り付き始めた、

 「ハグ、ハグ、ウ、ワオーン」

 余程お腹が空いていたのだろう、夢中で、肉を食べ続け、ようやく落ち着いた頃に、
あちらがこちらに目を向けた、ドキッとしながら様子を見ていると
 ゆっくりとした足取りで、少しずつ近づいてくる、相手を警戒させないようになるべく大きな動きを避け、膝を床につけながら、待っていると、
とうとう、目の前まで狼がやってきた、

狼は、クンクンと鼻を動かし匂いを確認する、
 無意識に手を伸ばしてしまった、
すると、少しビクッとしたが、鼻を近づけ、しばらく匂いを嗅ぐと、ペロッと生暖かく少しザラついた感触が指に伝わる、
そして、更に近づき右手の傷をペロペロと労わるように舐め始めた、そんな姿に可愛げを感じ狼の少し硬めの毛を手で感じていると、

ピコンという音と共に、まさにクリアを祝福するような、音楽が流れてきた

 「コングラッチュレイション!
 狼の戦闘不能を確認しました、これより戦闘に対しする褒賞と、チュートリアルクリアに対する褒賞を贈与します!」

 先程までの、生々しいくらいの生死を賭けた現実かという状況から、一変してこれがゲームだったと再認識させられる、この撫でている感触も血と獣の匂いも、右手に残る焼けるような痛みも全てゲームだったのかと、酷く困惑しながら、ヘルプさんは続けて、

 「それでは、今から褒賞の確認方法を説明いたします、最初は本人の音声認識の為、声を発して、"ジャッジマイセルフ"と唱えて下さい、2回目以降は、頭で念じた際にも表示可能です、それでは行動に移って下さい。」

 とりあえず、諸々の質問は飲み込んで、まずは言われた通りの行動を開始した、
すると、まず目の前に先程狼で確認したような、半透明な板が出現し、自分の情報が割と簡素に載せられていた、更に続いて褒賞を確認してみると、

今回の戦闘褒賞:スキル取得可能

と書かれていた、更に下があったのでスクロールしていくと、

取得可能スキル: 
身体強化  棒術  格闘術  調教  思考加速  治癒術 

と、これが今回取得可能になったスキルなんだが、この中から1つ選ばないといけないらしい、、さて、どうするか、、

 「ヘルプさん、この中からしかスキルは選べないんだよな?」

 「A.はい、基本的には行動の結果からスキルが追加されていくため、今回の戦闘で行われた結果、取得可能になったのがこのスキルですので、」

 「じゃあ、1つできるかのお願いなんだが、ヘルプさん、君をくれないか?」

 「へっ?」

 「「、、、、、」」

 数秒の沈黙の後で、

 「すまない、言い方が悪かった、ヘルプさんをスキルとして取得可能か?と聞きたかったんだ、」

 「っ、アハハハ、面白い事おっしゃいますね、A.はい、今回は特別に許可がおりました、私をスキル取得可能となりました。」

 そう言われて、再びスキル欄を見ると、ヘルプと書かれたスキルがあり、決定、有効にした。

 すると、しばらくすると、今までとは違った形で、耳からではなく、頭の中からヘルプさんに話しかけられたのだ、

 「聞こえますでしょうか?現在ヘルプLv.1ですので、チュートリアルのまでの機能は使えませんが、ある程度までのQ&A、物質作成能力が備わっています、レベルが上がるにつれ、既存の能力向上と、その他の能力が解放されます。」

ここは、先程スキルの説明を見た事とほぼ同じ説明であった。ここから、細々した説明が加わり、最後に

 「更に、私は特殊なAIですので、徐々に人間味が加われて行くかと、それでは最後に何とお呼びすればいいでしょうか?」

 「うーん、まぁ、マスターで、」

 「呼称マスターを認識、、、有効かされました。それでは、マスター続いてチュートリアルボーナスを受け取り、それが完了後、チュートリアルは終了です。」

 そう言われ、チュートリアルボーナスを受け取った中身はまた、今度話すとしよう、今日はもう疲れた。

 と、しばらくすると扉が出現し、これが出口かと、何となく感慨深い気持ちになりつつ、手をかけ、開こうとすると、

 「ワォーーーーーン」と狼が、一声鳴いた。それが何だか、またなと聞こえたのは、気のせいだろうか、ゲームにこんな感情が入るとは思えないけどな、
 それに、答えるように片方をあげ、そっと扉を開いた。


 何の音もなく、パーーッと光だけが自分を包んだ、、、、。
そう、最初に自分の部屋を開けた時のように。






 ここまで読んでいただきありがとうございます!

今回は、こんな感じで終わりです。
なんか、後半は大分乱雑になってしまった感が否めないですが、とりあえずここでスキル説明などしようかと、


 身体強化:身体の強化を果たす、レベル毎に防御力、攻撃力などが上がっていく、強化のみなので、高く飛べたり、早く走れたりするが、それと戦闘に繋がるかは別問題となる、単に身体が強くなるだけ。

 棒術:棒状のものでの、戦闘力が向上する。

 格闘術:格闘技全般の能力が向上する。

 調教:動物との意思疎通が可能となっていく。

 治癒術:回復力が上がる術式が備わる。

 思考加速:思考の速度が向上する。脳の電気回路が増え速度が向上するため、辺りの速度が遅くなってもいく。


と、軽い注釈ですが、許して欲しいです、また物語が続いていく上で、説明やら描写が増えていくかと、。

それでは、今回はこの辺で、次回はチュートリアルボーナスなどの話を盛り込めたら、

それでは、また読んでいただけると嬉しいです!


 


 

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