俺VS妹〜ゲームでバトルだ!〜

チャンドラ

自爆戦法

「薫、行くぞ!」
「ええ!」
 開始早々、対戦相手の薫と任が俺たちに襲い掛かってきた。
「来るぞ!」
「うん!」
 俺と水菜は臨戦態勢に入った。
 水菜は銀色に輝く剣を取り出した。
「アクセレイト!」
 俺は呪文を唱え、水菜に魔法をかけてやった。
 アクセレイトという魔法をは、かけた相手の移動速度を早くする効果を持っている。
 騎士と化した任と暗殺者と化した薫を相手に上手く水菜は立ち回っていた。
 任は槍を使って、攻撃しているが、剣で受け流している。
 薫は鎖鎌で攻撃をしているが、これも水菜は何とかところで避けている。
 やはり、水菜は強い。
 ちなみに俺はというと、少し離れて水菜の様子を見ていた。
 必殺技ゲージをさっきのアクセレイトで使い果たした俺はまともにやり合っても適わないと判断した。
 ここは、魔法が使えるようになるまで何もしないのが得策だ。うん。
「おおーっと!? 水樹選手が何もしないぞ?」
 司会者が戦況を観客に報告した。
 うるせぇ。これは作戦なんだ。
 しかし、アクセレイトの攻撃が切れ始めたのか、水菜の動きが遅くなった。

「デススラッシュ!」
 ここぞと言わんばかりに薫が技名を叫んだ。
 黒いオーラを纏った鎖鎌を水菜に投げつけた。
「ライジングブレード!」
 水菜も技を使い、これを防いだ。
 激しい衝撃派が水菜の周りに発生した。
 煙が巻き上がって水菜の様子は見えなくなった。
 煙が消えると、水菜の後ろに任が槍を構えていていた!
「地獄突き!」
 槍は赤いオーラを纏い、任は水菜に接近した。
「え.....」
 水菜が絶句した。
 どうやら、直前まで水菜は気づいていないようだった。
 あいつがやられたらまずい。
「フレイムボール!」
 俺は任に向かって走りながらフレイムボールを放った。
 任は俺の魔法に気づいていない。
「終わりだ......え?」
 必殺技を決めたと確信している任にフレイムボールが当たった。
「こっちに来い!」
 俺は水菜の手を取り、安全そうなところに誘導した。
「ありがとう......って言いたいところだけど! なんで黙って見てたの!」
 もっともなことを水菜は言ってきた。
「すまん。魔力が切れて」
「もう!」
 試合中にも関わらず、水菜はふて腐れてしまった。
「おおーっと!? 水樹選手と水菜選手、仲間割れか?」
 うっせぇな。司会。

「やってくれるじゃねぇか」
 任が苦悶の表情を浮かばせながら近づいてきた。
 奴の体力ゲージを確認すると、三分の一ほど減っている。
 しかし、水菜の体力も同じかそれ以上減っている。
 水菜であっても、やはり任と薫の二人がかりでは分が悪いようだ。
「よし、水菜。耳を貸せ」
「え、ちょっと何?」
 俺は水菜にとある作戦を伝えた。
「ええ!? 上手くいくの?」
「ああ、信じろ」
 正攻法で勝てないなら奇策で勝つ。
 これが俺の戦い方である。

「作戦会議は終わったか?」
 任が武器を持って待ち構えている。
「ああ。今度は俺が二人の相手をしよう」
 すると、薫が小馬鹿にしたように笑みを浮かべた。
「全く。タッグバトルなのに、一対二なんて、この大会の趣旨を分かってないんじゃない?」
 うるさい、どさくさに紛れてそのでかいおっぱいを揉んでやろうか。
 まぁ、リアルとは言え、仮想の映像だから揉んでも感触は感じられないだが。
「いや、二対二だ。シャドークローン!」
 俺は呪文を唱え、もう一人の俺を呼び出した。

「な、なんと! 水樹選手が二人に。俺がお前でお前が俺で?」
 うん。司会者さん。ちょっとお口チャックしようか。
「行くぞ! 水樹!」
「おう 水樹!」
 俺は任を担当し、俺は薫を担当することにした。

「オラ! 喰らえ!」
 任は槍を何発も突きつけてきた。
 間一髪のところで避けていった。
 崖の淵に移動し、距離を取った。
「エレキボール!」
 バスケットボール位のサイズの電気の球を生み出す魔法を使用し、攻撃した。
 かなりの速さの魔法だと思っているが、任に避けられた。
「オラオラ!」
 まるで、ラッシュのような掛け声をして、攻撃してきた。
 俺はどんどん後ろに追い込まれた。
「おらぁ!」
 痺れを切らしたのか、任は蹴りで攻撃してきた。
 俺は後ろに飛ばされた。
「いてて......」
 痛くはないが、気分的に。


「だらぁ!」
 薫は鎖鎌を投げて攻撃してきた。
「リフレクト......うわ!」
 バリアを張る魔法を使ったが、薫の攻撃に耐えられず、割れてしまった。
 衝撃で俺は後ろに飛ばされ、尻餅をついてしまった。
 鎖鎌を回しながら薫が近づいてきた。
「何か狙ってるのかしら?」
「......」
「図星ね。恐らくはさっきみたいに隙をついて妹さんに攻撃してもらうっていう採算なんでしょうけど、妹さんも警戒してるから無駄よ」
 薫は鎖鎌を再び投げてきた。
 俺はたまらず、崖淵まで逃げ込んだ。

 俺と俺は文字通り崖っぷちまで追い込まれてしまった。
 任と薫は並んで近づいてきた。
「任、二人の止めは任せたわよ。私はあの子見張ってるから」
 薫はそういうと崖っぷちから反対側の方向を振り向いた。
 危ない。
 振り向くだけならまだしも薫のいる方向まであるからたら、作戦失敗だった。

「必殺技ゲージが半分しかたまってないんじゃ技も使えないな。そんじゃ、行くぞ地獄突き!」
 槍は赤いオーラを纏った。
「フュージョン!」
 俺はとある呪文を唱えた。
 もう一人の俺は消え、俺は一人になった。
 そして、体力ゲージが満タンになった。
「何!?」
 シャドークローンは俺が二人になる代わりに体力、そして体力ゲージが半分になる。
 しかし、フュージョンで戻ると元に戻る。
 崖っぷちの位置でギリギリ体力ゲージが半分になるように調整しながら戦っていた。
 本当......危なかった。
「お前たちの負けだ! グラビティ!」
 大きな魔方陣が発生した。
「体が重くなった......動けない!」
「ちょっと! 任、どうするの!」
 魔方陣の中にいる人に強い重力をかける魔法である。
 ちなみに俺も重力がかかっていて、一歩も動けない。
「いまだ! 水菜!」
「オッケー!」
 水菜は魔方陣の一歩手前まで近づいてきた。
「ちょ、ちょっと何する気?」
 薫が慌てふてめいている。 
 いい気味だ。
「ライジングブレード!」
 水菜は地面をライジングブレードで切り裂いた。
 俺と任と薫が立っていた岩盤は落下し、水中へと消えた。
 三人とも、体力ゲージがゼロになった。
 地上にいるのは水菜だけである。
「ゲームセット! 勝者は水樹選手と水菜選手だ! なんという奇想天外な勝ち方だろう! 天才とバカは紙一重のような作戦だぁ!」
 おい、それ絶対に馬鹿にしてるだろ。
 俺はVRゴーグルを離した。
「ふぅ、疲れたぁ」
 水菜はくたくたな様子である。
「ご、ごめん! 薫! 海外旅行費を手に入れられなくて......」
「ううん、いいのよ。コツコツと稼いで海外旅行に行きましょう」
 公衆の面前だというのに任と薫は抱き合った。
 全く。末永く爆発しろ。
「ふぅ~! 熱々だぁ!」
 司会者が仲の良さを持ち上げた。
「それじゃ、勝者にインタビューとしましょう! まずは水菜さん! 感想をどうぞ!」
 司会者が水菜にマイクを突き付けてきた。
「えっと......勝てて良かったです。次も勝ちたいと思います」
「ありがとうございます! 続いて水樹さん、感想をどうぞ!」
「対戦相手はかなりの強敵でしたが、運よく勝てて良かったです。次もベストを尽くしたいと思います」
 無難な感想を言うことにした。
「賞金で何をしたいですか?」
 もうインタビュー終わりでいいだろ。なんでそんなことを聞くんだ。
「えー、そうですね。貯金......とかですかね」
「おおー? 若いのに夢がないなぁ」
 うるせぇ、ほっとけ。
 会場からは笑い声が聞こえてきた。
「それでは、二人とも、準決勝でも頑張ってください!」
 こうしてインタビューは終了した。
 次は準決勝か。
 勝てる自信ないなぁ......

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