異世界転移は分解で作成チート

神無木雷兎

第155話 そういえば梟って……。

第155話 そういえば梟って……。


 一一静寂が包む森の中、突如甲高い鳴き声が響く。

「ヒオォォォ、ヒイィォォォ!」

「ッ! どうやら目的のお出ましみたいだな。」

 鳴き声がした方向をむくと、草木が鬱蒼と茂っており、落ち葉をふむようなガサガサとした音がした。
 ゼロが改めて拳を構え直すと、ゼロのかなり近くの草が一際大きく揺れた!
 その瞬間、銀色の鹿の角が生えたフクロウ顔の魔物が飛び出してきた!

「ヒイィォォォォ!!!」
「っとォ!」

 ゼロは銀梟鹿シルバーオウルディアが突っ込んできたことを確認すると同時に、半身で避けた。

「にゃんっ。」

 ティアもゼロの避ける動作で振り落とされないように、綺麗に体勢を保つ。

「ヒィォォォォ!!」

 銀梟鹿が一際大きな声を上げる。何やら怒りが篭っているようだ。

「……あるぇるぇー? なんかあちらさん怒ってらっしゃる?」
「にゃうん?」

 何故だ……もしかしてここ、あちらさんの寝床?
 ・・・いや、でも荒らされてなかったし生活してた感はねぇよな? だとすると……アレか? この森でのあいつの領域、もしくは陣地って感じか? 

 ・・・まぁ別にいーや。とりあえず今はあの銀梟鹿をどうにかしねぇとな。

「ヒオォォォ!」

 ほら、こうしてる間にもあちらさんは攻撃(角を使って突進)してくるし。荒っぽい性格だねぇ。
 ・・・あ、そうだ。どうせならいいこと思いついた。

 一一ゼロは銀梟鹿の突進を一度避けると、次の突進に備えて手をやや前にして前屈みの状態で構える。
 そして、ゼロの狙い通り銀梟鹿はゼロの体目がけ、突進する。

「ヒオォォォォォ!!!」
「はぁっ!」
「ヒ、ヒイィォォォ!?」

 ゼロは勢いをつけて突進してきた銀梟鹿の銀角を掴む。

「おっと!! ……うーん、意外と力強いな。・・・でも、耐えられないほどではない、かな。」

 ゼロはやや後ろに押されながらも、銀梟鹿の突進に耐える。

 銀梟鹿はさらに力を込め、前へと進む。

「ヒイ、ォォォォォォオ!!」
「うぉっ!? ……グヌヌヌヌヌ!」

 一一ゼロは力を込めて必死に突進を防ぎながらも、目の前のこととは少しだけ違うことを考えていた。

(あー、やっぱりあの縛りにしたのは間違いだったかも。……せめてもう少しステータスがあった方が良かったかもなぁ。)

 そう、ゼロが力を込めて突進を防いでも相手方が押されず、逆にこちらが押されるのは、今回つけた縛りが原因であった。


 一一今回の縛りは全部で四つである。

 一つは『スキルは剣術と気配察知しか使ってはダメ』。これは言霊とかで相手を封じないようにするため。
 二つ『魔法は火魔法と回復魔法だけ』。こちらは単純に即死魔法とかあるからだ。倒すのもあっという間で終わる。
 三つ『武器は普通の鉄の剣以外使ってはダメ』。ゼロの作った武器だと縛りをつけても意味が無いため。

 そして最後の四つ目は……『討伐対象と戦う時、その魔物のステータスと同値で挑むこと』。

 そう、その四つ目こそが今回ゼロを苦しめる(笑)一因であった。


 一一場所はゼロの戦闘に戻る。

(うーん。やっぱりステータス少しだけ解放するか? ・・・いや、でもそれはなぁ。一度決めたことを変えるのはなぁ。
 ・・・ん? あぁ、そうだわ。……俺バカだな、なんで力だけで行こうとしてたんや。別に今回の戦い方で突進を受け続けろとは言ってなかったわ。)

 ゼロはたまにどこか抜けている。

「そうと決まったらこんなことしてる場合じゃないな。」

 ゼロは一言そう言うと、放り投げるようにように後ろに流した。
 もちろん、銀梟鹿は力を込めて前に行ってたのもあり、そのまままっすぐ突っ込んでいく。

 ゼロは銀梟鹿が体勢を整える前に鉄の剣を構える。そして、剣の刃先を銀梟鹿に向けて一言言い放つ。

「さて、とりあえず。アンタに人語が理解できるかわからんが、言わせてもらおう。」

『ご武運を。』

◇◆◇◆◇

 ・・・とまぁ、一応は格好つけたものの……。意外とこれこっ恥ずかしいな。
 アニメとかゲームの主人公っていっつもこういうの決め台詞言うけど、絶対後で恥ずかしさから顔を赤く染めてそうだなぁ。
 ってかいつも思うんだけど、こういう戦闘前の一言型の決めゼリフって相手に聞こえなかったらどうするんだろ? もう一度言ってとか言われたら地獄やん。

 ・・・っと、色々考えてるうちにあっちの方も準備が整ったみたいだな。片足を地面に蹴りつけてらぁ。・・・どっちかって言うと叩きつけてる、かな?

「んじゃ、俺も準備できたし行きましょうかねっと。」

「にゃーん。」

 ・・・帰ったらめいいっぱい可愛がろう。

「ヒォォォォ!」

 っと、相手方がまた角で攻撃しにきやがった。ってかなんかフラフラしてるっぽい。・・・そういやさっきも少しフラフラしてなかったか?

 うーん。……ん? 梟……夜行性……梟の特性持ち。

 ……あっ(察し)。・・・思ったより早めに決着が着きそうだな。



・雑談
 梟ってそういえば夜行性でしたね。投稿した後に兄に言われて思い出しました。
 どうでもいいですけど、二日三日ほど母が実家に泊まりに行ってしまうため、妹に会えません。悲しみに明け暮れているテトです。(フェードイン)

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