神も愛した無敵の悪役令嬢
暗殺者との遭遇
リリアが叫んだせいで、使用人達がそれはもう凄まじい速度で駆けつけてしまった。
(……素晴らしい対応だわ。我が家の使用人は優秀ね。)
……リリアは半ば現実逃避をしながらも、スキルを習得するために「完全鑑定」で、次々と使用人達を鑑定して行った。
3人目に入ったところで、その異様なステータスに驚く。
ちなみに下がそれだ。
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  名前   チャールズ・ステア
 種族    人間
 職業     暗殺者 Lv7
 性別   男
 年齢   18
 レベル   9
 スキル    「隠蔽Lv5」「魅力Lv3」「剣術Lv6」「銃術Lv3」
 魔法属性  雷属性
 魔法  「雷纏Lv5」
 MP   700
 HP   400
 称号  「裏切り者」「内通者」「使用人」
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使用人なのに、暗殺者というのはおかしい。
職業がステータスに表示されるということは、1度冒険者ギルドにいった、という事になる。
(……でもレベルに職業のレベルが追いついてないわね…ということは、冒険者ギルドにいって日が浅い……?)
リリアは考察していたが、今考えても仕方ないので、気持ちを切り替えた。
(いや……称号が何より物語っているじゃない。彼の正体を!)
ーーーもしかしたら…仲間に出来るかもしれない……
そんな期待を込めて、リリアは彼だけを残して、使用人を戻らせた。
使用人は案の定、困惑していたが、いいからいいからと、ドアの外へ半ば無理やり追いやった。
ドタドタ……使用人がいなくなったのを確認すると、リリアは少し息を吐いた。
そして彼、ステアに向き合うと目をじっと見つめて、静かに問う。
「ステアさん……いや、チャールズ・ステアさん」
そう言った瞬間、ステアの目が僅かに動いた。
しかし、すぐに笑顔の仮面に覆われてしまった。
「どうしたんですか?リリアお嬢様。私は使用人です。上の名前はありませんよ。」
「……普通の使用人は、暗殺者ではないと思うわ。」
そう淡々と告げるとステアは、すっと無表情になった。
それに笑みを深くしながら、私は続ける。
「あなたの目的は何?」
「……それを聞いてどうするのですか?」
「ただの好奇心よ。……ああ、それとナイフに手を伸ばすのはやめたほうがいいと思うわ。私はもう少しで殺されるから。」
その言葉に彼は驚く。さっきとは違い、こっちが素なのかな、とリリアは感じた。
「あなたが殺さなくても、婚約破棄されて、魔物の森で殺される。今殺すのは、今後を考えても得策ではないわよ。」
「………そうか」
そう言うと、ステアはすぐにナイフをしまった。
リリアは少し拍子抜けする。
「随分あっさり信じるのね。」
そう言うと、ステアは呆れたような顔になった。
「俺を暗殺者と知って、殺されるかもしれないのに、嘘をつくのはおかしいだろう。」
それに、と彼は続けた。
「自分を殺しても大ごとにはならない、と言ったということは、何か殺されない確信があるってことだろう。……違うか?」
ステアの言葉にリリアは素直に感心した。
私の言葉をそこまで読み取っていたとは、と。
ステアの口調や、笑顔の仮面が剥がれた。
ということはつまり、彼の中でリリアはただのお嬢様ではなくなった、ということだ。
(………秘密の共有者、というところかしら?)
それを感じ取りながら、リリアは言葉を紡ぐ。
「もう一度聞くわ。目的は何?」
「そう簡単に言うと思うか?」
「……なら、言い方を変えましょう。ーーもし貴方の目的がお父様なら、やめたほうがいいわ。」
「………はっ、父親を守るつもりかよ?」
「いいえ、これは忠告よ。お父様は貴族だと言うのに、異様なほどステータスが高い。なのに……」
リリアは唇を噛みながら言う。
「周りは何も気づいていないの!彼に……操られているとも知らずに!」
リリアお嬢様……いや、リリアローズの言葉に目を見張る。
いや、正確にはリリアローズの態度に、だ。
心から憎悪を込めたような声に、底のない暗闇に引きずりこまれる感覚がして、慌てて頭を振り気持ちを切り替えた。
「……なんで、そこまで教えてくれるんだよ?」
純粋な疑問をぶつける。主従関係だったとはいえ、いきなり態度が変わって、ましてや暗殺者なんて不信でしかないだろうと。
だが彼女は、俺の斜め上を行く答えを返した。
「それはもちろん、仲間になって欲しいからよ ︎」
  (………は?)
少し呆けた後、心の中でツッコミを入れる。
  (いやいやいやいや、おかしいだろぉ!?)
ステアは軽く頭痛がしてきた。
「……俺は暗殺者だぞ?」
「ええ、知ってるわ。……裏切り者で、おそらくギルドの内通者でしょう?」
自分が考えていたよりも多い情報に、ステータス見られたか?とステアはリリアを訝しく見た。
しかし、リリアは肩を竦めるだけだ。
今までこの屋敷で、本物のステータスを見られたことはなかった。隠蔽スキルとレベルのおかげだ。
なのにリリアローズは、今まで接触があったにも関わらず、すぐに見ることが出来た。
ということは、今日初めて鑑定した。
(……1日で俺のスキルを破るって、どんな化け物だよ。)
ステアは内心、冷や汗をかいた。
ステアのスキル「隠蔽」は、隠蔽したものが見破られないたびに、どんどん強化されていくという特別なものだ。
しかし、今日レベルは上がった感じはしない。
つまりリリアはたった一回で見破った、ということだ。
ステアはリリアをじっと見つめた。
(ギルドの賞金は惜しい。……だが、こいつについていかなければ、俺はおそらく一生後悔する…)
誰に言われたわけでもないが、こいつの行く先が俺の行く先だと、本能で感じた。
だからーー
「……いいだろう。仲間になってやる。」
彼は確かに自分の意志で、そう言った。
………………それには少なからず、リリアの加護が働いているとも知らずに。
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