超テンプレ展開 後半まで読み飛ばし可

なんだかんだあり、サガリネに到着した。馬車がかなり揺れたのと、移動時間がクソみたいに長かったのがかなり空っぽの胃にキテいる。正直吐きそう。さっき吐いた時の吐き気がまだ残ってる。服は変えてもらったから問題ない。あ、俺のだけね。伯爵のは？知らない。そうそう、御者から貰ったこの羊皮紙があれば大抵は伯爵家のツケに出来るらしい。いっそこれを使って破産させてみるかー、ただ唯一の魔王からの命令が、人と仲良くしろ！だったんだよな。完全な悪手だ。なら通行料と身なりを整えること、そして偽の身分証の作成にかかる費用、あと飯代にしか使わないでおこう。これが恐らく最善策だ。そうして街へ入る。門番に対して羊皮紙を突きつける。すると門番のごついお兄さんは失礼しました!!と頭を下げてくる。中々気分がいい。だが振り返らなくてもわかる。門番は疑惑の目で俺を見ている。そりゃそうだ。ついこないだまで残飯くらいしか食べてない、他人への不信感で頭がいっぱい。今は魔獣もどき。ここまで来るとあれが自然なんだろうな。そうして冒険者組合の建物に着いた。建物は五階建て、建物の通り側にはのぼりが立っている。なになに、魔物撲滅週間？1匹でも多くの魔物を駆逐しましょう!目指せ前週比2倍!!あぁーなるほどなるほど交通事故撲滅週間みたいなものか。この場合の撲滅は本気の撲滅か。本気と書いてマジか。って関係ないな。取り敢えずは恐らくここが冒険者組合でいいんだろうな。中入ってみるか、重いドアを開けるとそこには大勢の人、人、人。服装からも察せる通り、老若男女、あらゆる職業の人が。正確には半分が人間。もう半分は亜人。受付嬢は人間と長い耳のあの種族だ。半円の様なこの建物の弧にあたる部分にズラリと並ぶカウンター。その上には1つ1つ札がかかっており、左から3番目が身分証の作成業務を行っているようだ。そこのカウンターだけ自然と列が出来ていない。思ったよりも早く済みそうだ。他の列の横を通り抜け、カウンターまであと5メートルの所で肩を掴まれた。振り返るとそこにはテンプレとも言える3人のチンピラがいた。
「おい、兄ちゃんよー。俺らそこに並んでたんだけど、勝手に抜かされると困るんだよなー。」
あ、こいつらがいるからか。早く自立して羊皮紙を使わないようにしたいからこいつら倒して名を挙げるか。これこそthe売名行為だ。
「すまない、俺も急いでいて視界にお前らが映らなかった。」
さりげなく煽る。
「あぁ？舐めてんのか？俺はこの後急ぎの用事があるんだよ！お前のせいで遅れちまうじゃねぇか！どうしてくれるんだよ」
「すまない、ならこれをお詫びに。これで許してくれるか？」
俺が差し出したのは羊皮紙だ。無論仕掛けがしてある。俺以外の人があの羊皮紙を人に見せると文字が消える。俺が手にすれば元通り。チンピラは羊皮紙に仕掛けがしてあることも露知らず手に取る。人に見せて使わない限りは文字が書いてあるんだよな。何をするんだろうか。チンピラは羊皮紙の内容を理解したようだ。俺に見せて宣言する。
「俺は伯爵家の権限により、お前の持ち物全てを買い取る！荷物を置いていけ！」
「お兄さん、その紙何も書いてないよ？どしたどした？」
もちろん俺は全てを知っている。
「はぁ？そんなはずはねぇ、ほらちゃんとここにも、じ、が…え？消えて、る？お前まさか手品スキルでも使ったのか？」

スキル〜手品〜を習得しました
スキル〜手品〜の派生技能の着目点創造を獲得しました

へぇー手品スキルなんてあるのか。着目点創造って要するに注目を集める1点を作るってことか。色んな所で使えそうだ。こいつの言ってることがテンプレ過ぎてつまんないから黙示録で本出して読んで暇潰ししとくか。スキルを習得出来る本がいいな。何となくスキルの一覧が浮かんでくる。ん、体感時間延長か。いいな。ポケットの中に手を突っ込んで本を出現させる。ポイントから出すと見た目はパンフレットみたいだ。早速1ページをめくる。

スキル〜体感時間延長〜を習得しました

流石、成長促進先輩だな。
「お前さっきから無視してんじゃねぇ!!」
チンピラは拳を突き出してきている。その筈だがどうにも遅い。これがスキルの力か。チートだな。俺は元々チートだが。軽く蹴るか、鋼鉄化を使った右足で格ゲーの100連キックを再現する。そして体感時間延長を解除。
すると逆にチンピラが吹き飛んでいく。他のカウンターの人が何人か巻き添えを食らっている。取り巻きはどこいった？出口の方へ駆け出す男の後ろ姿を発見。吹き飛んだチンピラの元へ。奴のポケットから羊皮紙をひったくり身分証作成のカウンターへ。脚技のスキルも使ってたし、ちょっとやりすぎたかな。これが初日か。先が思いやられる。