裏切りのサクラ

嘉禄(かろく)

一人で見る雪

お前が俺を裏切り、敵対組織に渡ってから一度目の冬が来た。
思い出すのは、お前と組んで初めての冬…オフの時に雪が降って、それを見たお前が外ではしゃぎまくったこと。


「見て雪、雪が降ってる!君の名前と同じものだ!」


雪を見るのは初めてじゃないだろうに、大はしゃぎして…積もり始めた雪で滑って笑ってたっけ。
そのあとは手で雪を丸めてこっちに投げてきたり…地味に痛かったんだぞ、あれ。
結局俺も乗って雪合戦してて、百瀬にあとでゲンコツ食らったのはいい思い出だ。

…けど、今俺は一人だ。
隣に立って一緒に雪を見てくれるのも、馬鹿みたいにはしゃいで雪合戦出来るのも、背中を合わせて戦えるのもお前だけだったのに…。


そう思っていたら周りに広がっていた雪景色が消えて真っ暗闇に放り出される。
…なんだ、幻か。


実際には今がいつなのか、俺は生きているのか死んでいるのかも分からない。
それでもただ一つ確かなのは…
お前が俺を裏切り捨てたという事実。

…律、今どこにいるんだよお前。


幻の中で問いかけても、答える声は返ってこなかった。





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