悪役令嬢は魔王の小鳥
13話
「…とても美味でしたわ」
「口に合って良かった…人間の味覚は時々わからぬからな」
「そうなのですか…?……前に魔族の料理を食べた人間がいらっしゃるので?」
「……昔…といってもつい50年程前に、な」
ふ、と目を伏せたご主人様の瞳はどこか寂しげで…どこか遠くを見つめていた
「……そうなのですか…その、ご主人様、」
「む?」
先程の寂しげな瞳はなく、いつもの優しげな瞳に戻っている。なんだか、胸のあたりがもやっとしますわ…
「…いえ、なんでも。」
「そうか…さて、今日は城の中を案内しなくてはな。」
「ありがとうございますわ」
「これからここはお前の家でもある…当然だろう?」
優しく頬を撫でられシルクのサラサラとした感触がする。でも、素肌の熱が感じられない…
「……ご主人様」
「む?」
「……何故、手袋をされて…いえ、その、わたくしといない時はされてらっしゃらない様でしたので…」
「……お前の綺麗な肌を私の爪で傷つけるわけにはいかないからな」
ご主人様はそう仰られ、手袋の中指の先をつまみ手袋を外す。すると鋭く黒い爪が現れた。
「この爪は触れるだけでなんでも切り裂く。…マリアンヌ、お前の肌を傷つけたくない故だ、気に触ったならすまぬ…」
睫毛を伏せ、軽く指を折り曲げ手の甲で私の頬をなでる。
その手つきは優しくて優しくて…わがままを言ったことが、とても恥ずかしい
「…申し訳ございません、」
「何故謝る」
「ご主人様がわたくしの為を思い手袋をしてくださっていたのに…」
「謝る必要は無い。」
「ですが、」
口を開こうとしたところを、手袋をしている方の人差し指で塞がれた。
「我に触れたかったか?」
にぃ、と目を細め口角を上げる。その様子がとても、とても色っぽくて艶めしくて…
どく、どく、と鼓動が早くなりきっと顔は真っ赤になっているでしょう、顔が熱くてたまらないですわ。
声も出なくて、ぱくぱくと口を動かしていればくつくつと笑い声が聞こえてくる。その声でまた鼓動が早まる。
「…お戯れは、やめてくださいまし」
「その顔で言われても説得力はないな?」
「う…」
とりあえず頬の熱をとろうと両頬に手を当てる。あぁもう、熱いです…
「ふ…さて、私は執務室に行く。その間決して部屋を出ては駄目だ。わかったか?」
「分かりましたわ。」
「私の部屋に入っても良い。本はそれなりにあるから読んでも構わん」
「ありがとうございます」
「…またな、マリアンヌ」
手袋を直しわたくしの頬を撫で、額に口付けた。
それにまた顔が熱くなり、ご主人様はそれを見て笑うと歩いていってしまった。
「マリアンヌ様」
「…ロンジェル様、」
「私に敬称は不要でございます。どうか、ロンジェルとお呼びください」
「……えぇ、わかりましたわ。」
そのまま自室に連れられ、鍵をかけられたようで扉は開かない。
………魔王様のお部屋。行ってみようかしら。
「…」
入った瞬間…いや、入る前から緊張する。真っ黒な部屋に残る落ち着いた、大人っぽいご主人様の香り。落ち着くのに、なんだかそわそわしてしまう。
とりあえず本よ、本。あそこの本棚ね。…背表紙が全部一緒に見えるのだけれど…
そう思いながらとりあえず1冊取れば表紙も何も書いてない。あるのは真っ黒な皮の表紙だけ。
「…よ、読めない…」
魔語だった…これは後で誰かに教えてもらわないと。人間にも読める本があるかと探していれば
「……あら」
手書きの絵本が、あった。父が祖母の作った本だと何度も何度も繰り返し読ませてくれた、絵本だった。
取り出し、ページをめくる。古びているがとても大切に管理されていて、…最後のページをめくった時、はらりと1枚の紙が落ちた。
拾いあげれば、今の容姿より少し若いご主人様であろう男の人と
私がもう少ししたらこんな容姿になるであろう、青い瞳の、真っ白な女性が肩を抱かれ微笑んでいた。
「口に合って良かった…人間の味覚は時々わからぬからな」
「そうなのですか…?……前に魔族の料理を食べた人間がいらっしゃるので?」
「……昔…といってもつい50年程前に、な」
ふ、と目を伏せたご主人様の瞳はどこか寂しげで…どこか遠くを見つめていた
「……そうなのですか…その、ご主人様、」
「む?」
先程の寂しげな瞳はなく、いつもの優しげな瞳に戻っている。なんだか、胸のあたりがもやっとしますわ…
「…いえ、なんでも。」
「そうか…さて、今日は城の中を案内しなくてはな。」
「ありがとうございますわ」
「これからここはお前の家でもある…当然だろう?」
優しく頬を撫でられシルクのサラサラとした感触がする。でも、素肌の熱が感じられない…
「……ご主人様」
「む?」
「……何故、手袋をされて…いえ、その、わたくしといない時はされてらっしゃらない様でしたので…」
「……お前の綺麗な肌を私の爪で傷つけるわけにはいかないからな」
ご主人様はそう仰られ、手袋の中指の先をつまみ手袋を外す。すると鋭く黒い爪が現れた。
「この爪は触れるだけでなんでも切り裂く。…マリアンヌ、お前の肌を傷つけたくない故だ、気に触ったならすまぬ…」
睫毛を伏せ、軽く指を折り曲げ手の甲で私の頬をなでる。
その手つきは優しくて優しくて…わがままを言ったことが、とても恥ずかしい
「…申し訳ございません、」
「何故謝る」
「ご主人様がわたくしの為を思い手袋をしてくださっていたのに…」
「謝る必要は無い。」
「ですが、」
口を開こうとしたところを、手袋をしている方の人差し指で塞がれた。
「我に触れたかったか?」
にぃ、と目を細め口角を上げる。その様子がとても、とても色っぽくて艶めしくて…
どく、どく、と鼓動が早くなりきっと顔は真っ赤になっているでしょう、顔が熱くてたまらないですわ。
声も出なくて、ぱくぱくと口を動かしていればくつくつと笑い声が聞こえてくる。その声でまた鼓動が早まる。
「…お戯れは、やめてくださいまし」
「その顔で言われても説得力はないな?」
「う…」
とりあえず頬の熱をとろうと両頬に手を当てる。あぁもう、熱いです…
「ふ…さて、私は執務室に行く。その間決して部屋を出ては駄目だ。わかったか?」
「分かりましたわ。」
「私の部屋に入っても良い。本はそれなりにあるから読んでも構わん」
「ありがとうございます」
「…またな、マリアンヌ」
手袋を直しわたくしの頬を撫で、額に口付けた。
それにまた顔が熱くなり、ご主人様はそれを見て笑うと歩いていってしまった。
「マリアンヌ様」
「…ロンジェル様、」
「私に敬称は不要でございます。どうか、ロンジェルとお呼びください」
「……えぇ、わかりましたわ。」
そのまま自室に連れられ、鍵をかけられたようで扉は開かない。
………魔王様のお部屋。行ってみようかしら。
「…」
入った瞬間…いや、入る前から緊張する。真っ黒な部屋に残る落ち着いた、大人っぽいご主人様の香り。落ち着くのに、なんだかそわそわしてしまう。
とりあえず本よ、本。あそこの本棚ね。…背表紙が全部一緒に見えるのだけれど…
そう思いながらとりあえず1冊取れば表紙も何も書いてない。あるのは真っ黒な皮の表紙だけ。
「…よ、読めない…」
魔語だった…これは後で誰かに教えてもらわないと。人間にも読める本があるかと探していれば
「……あら」
手書きの絵本が、あった。父が祖母の作った本だと何度も何度も繰り返し読ませてくれた、絵本だった。
取り出し、ページをめくる。古びているがとても大切に管理されていて、…最後のページをめくった時、はらりと1枚の紙が落ちた。
拾いあげれば、今の容姿より少し若いご主人様であろう男の人と
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