悪役令嬢は魔王の小鳥
5話
さて、取り残されてしまいましたわ。でも代わりに綺麗なメイドさんがいらしたの。
メイド服、とても素敵ですわね…ふわふわでフリルがたっぷりついてて…でもドレスほど豪華じゃなくてわたくし好み。
ふわふわの淡い紫の髪…ぁ、魔王様のおそばにいらっしゃった女の方に似ていますわ。御姉妹かしら…
「…」
でもやっぱり少し顔が怖いというか…いえ、顔立ちが怖いのではなくてすこーし睨んでいるような…まぁ当然よね。突然人間なんかがご主人様のペットになるなんて。
…魔王様わたくしのどこを気に入られたのかしら?あ、もしかしてペットという名の奴隷?…でも奴隷にこんな部屋与えるかしら……いえ、私は与えていたけどお金の問題でこんな豪華では……
……まぁそんな考えても意味は無いわね。ご主人様に聞けばすぐでしょう。
「…ねぇ、貴女」
「どうされましたか」
酷く淡々とした声に少し驚いたけど敵対視しているならこれはいい方よね。舌打ちくらいされても文句は言えないだろうし。
「ご主人様にお聞きしたいことがあるのだけれど…いつお目にかかれるかしら」
「…魔王様は大変多忙なお方ですので、暫くは会えないかと。
それと、貴女様はこの部屋から出ることを許されておりませんのでこの部屋から出ないでくださいませ。なにかご入用でしたら私達メイドや執事に仰っていただければご用意します。」
あら、出れないの…まぁ別に出歩きたかった訳でもないし問題は無いわね。ただまぁ…魔王様がわたくしに会いに来てくださるかどうかなのだけれど…
「…それだったら特にはないわ。」
「かしこまりました」
…困ったわ、やれることが無いわ。仕事もさせてもらえないだろうしなにかすることは
となにか出来ないかと思考を巡らせようとした瞬間こんこん、とノック音が部屋に響いた。
「?はい…!?」
メイドさんが扉を開けたらそこには…
「マリアンヌ」
ご主人様がいらっしゃったわ。
メイドさんったらびしりと石像のように固まって…ぁ、ご主人様無視していらっしゃるわね。
「何もされなかったか」
と言いながら私の髪をひと房すくう。
さすがご主人様ですわ、こんなこと殿下にされてもなんにも感じなかったのだけれど…ふふ、なんだか嬉しいわ。
「えぇ、問題ありませんわ」
「ふ、そうか…それでベルフェルに聞いたが魔法に興味があるそうだな」
「はい。あまり見る機会が無いですし…」
失礼だったでしょうか?と口にすればそんな事は無い、と帰ってくる。
ほっと胸を撫で下ろし安堵しているとしゃりん…と音が聞こえたので何かと思い顔をあげれば何か…きらきらした光の散りばめられた黒い液体?のようなものの入った丸い瓶を取り出していましたわ。
…よーくみると三日月の様な光もふたつ入っていて…夜みたいな……
「…どうだ?」
「どうだ、とは…?」
「ぁー…その、魔法で瓶の中の水に夜を写し取ったのだ。
魔法に興味があると聞いたから魔法で作ったものなら気に入るかと思ったんだが…」
「!…これ、水ですの…?」
改めて瓶を見るもどうみても黒い液体は確かに動きは水だが真っ黒できらきらしていて…水には見えない。
「ぁ、あぁ。…気に入ったか?」
「気に入りましたわ!」
「そうか…それならよかった。この水は腐らないように魔法をかけてあるからこのままやろう。」
と瓶の蓋の部分を持って差し出された。両手で皿を作るように手を出すとそこにころんと転がされる。
ころころと動く度にしゃりん、と微かに聞こえる音が心地よい。
「ふふ、素敵なプレゼント…ありがとうございますわ、ご主人様」
「ふん…」
ご主人様はそっぽを向きながらぼすりとソファに腰掛ける。そのままじっとわたくしを見つめたからと思うとぽんぽんとお自身の隣をぽん、と叩いた。
「座れ」
「…お隣に、でしょうか?」
わたくしのその言葉にコクリと頷く。…いいのかしら。そう思いながらゆっくりと少し離れた場所に腰掛けるとむっとご主人様の眉間にシワがよった。
…やっぱり駄目だったのかしら?
「…ごしゅじ」
「何故そんなに離れたところに座る。隣に座れ」
ご主人様と言い切る前にぐっと腰に手を回され隣に座らされる。
そのままご主人様の腕に寄りかかる様になってしまった。
え、これは、少し…いえ、かなりアレな格好なのではないかしら?
恐る恐る先程まで扉の方で石像になっていたメイドさんに目を向けると次はこちらを見てまた石像になっていた。
信じられないものを見るような…まぁ確かにそうでしょうね。魔王様であるご主人様が人間のペットを抱き寄せているんだからそんな目になりますわよね。
「…ご主人様、ペットを抱き寄せるだなんてしてはいけませんわ。」
「……ペットをどうしようと私の勝手だろう」
いえ、そうなのだけれど……まぁご主人様が言うならいいかしら。どうせ決めるのはこのお方なのだろうし。
「分かりましたわ」
わたくしがそう言うと少し力を入れてご主人様がまた私を抱き寄せる。
…ご主人様、意外と筋肉あるわね…着痩せするお方なのね。
体が分厚くて、背が高くて…ふふ、騎士の方みたい。強そう…いえ、本当に強いのね。強くて見目麗しくて…素敵だわ。
「…おいロンジェル、部屋から出ろ。しばらくこの部屋に他の者に近づくなと伝えておけ」
「、…かしこまりました」
固まっていたメイドさん…ロンジェル様というのね。ロンジェル様がぴく、と動いたあとすっと頭を下げて部屋から出ていく。
…なぜ人払いをなさったのかしら。
「マリアンヌ」
「はい」
「…」
ご主人様がじっとわたくしを見つめると懐から何かを取り出した。それは黒い手袋できゅ、と両手をはめる。
そしてその手で私の頬を撫でてきた。手袋はシルクでできていてほんの少し冷たく、さらさらとした肌触りの良さが気持ちいい…けど。
人間に触りたくないのかしら、わざわざ手袋をつけて…
……なんだかわからないけど、なんとなく悲しいわ。少し重い鉛を飲み込んだみたい。
……でも、ご主人様に触っていただけるから、そんな気持ちもなかったことにしましょうか。幸せだもの。
私は無意識のうちにご主人様のその手に頬を擦り寄せていた。
修正しました
メイド服、とても素敵ですわね…ふわふわでフリルがたっぷりついてて…でもドレスほど豪華じゃなくてわたくし好み。
ふわふわの淡い紫の髪…ぁ、魔王様のおそばにいらっしゃった女の方に似ていますわ。御姉妹かしら…
「…」
でもやっぱり少し顔が怖いというか…いえ、顔立ちが怖いのではなくてすこーし睨んでいるような…まぁ当然よね。突然人間なんかがご主人様のペットになるなんて。
…魔王様わたくしのどこを気に入られたのかしら?あ、もしかしてペットという名の奴隷?…でも奴隷にこんな部屋与えるかしら……いえ、私は与えていたけどお金の問題でこんな豪華では……
……まぁそんな考えても意味は無いわね。ご主人様に聞けばすぐでしょう。
「…ねぇ、貴女」
「どうされましたか」
酷く淡々とした声に少し驚いたけど敵対視しているならこれはいい方よね。舌打ちくらいされても文句は言えないだろうし。
「ご主人様にお聞きしたいことがあるのだけれど…いつお目にかかれるかしら」
「…魔王様は大変多忙なお方ですので、暫くは会えないかと。
それと、貴女様はこの部屋から出ることを許されておりませんのでこの部屋から出ないでくださいませ。なにかご入用でしたら私達メイドや執事に仰っていただければご用意します。」
あら、出れないの…まぁ別に出歩きたかった訳でもないし問題は無いわね。ただまぁ…魔王様がわたくしに会いに来てくださるかどうかなのだけれど…
「…それだったら特にはないわ。」
「かしこまりました」
…困ったわ、やれることが無いわ。仕事もさせてもらえないだろうしなにかすることは
となにか出来ないかと思考を巡らせようとした瞬間こんこん、とノック音が部屋に響いた。
「?はい…!?」
メイドさんが扉を開けたらそこには…
「マリアンヌ」
ご主人様がいらっしゃったわ。
メイドさんったらびしりと石像のように固まって…ぁ、ご主人様無視していらっしゃるわね。
「何もされなかったか」
と言いながら私の髪をひと房すくう。
さすがご主人様ですわ、こんなこと殿下にされてもなんにも感じなかったのだけれど…ふふ、なんだか嬉しいわ。
「えぇ、問題ありませんわ」
「ふ、そうか…それでベルフェルに聞いたが魔法に興味があるそうだな」
「はい。あまり見る機会が無いですし…」
失礼だったでしょうか?と口にすればそんな事は無い、と帰ってくる。
ほっと胸を撫で下ろし安堵しているとしゃりん…と音が聞こえたので何かと思い顔をあげれば何か…きらきらした光の散りばめられた黒い液体?のようなものの入った丸い瓶を取り出していましたわ。
…よーくみると三日月の様な光もふたつ入っていて…夜みたいな……
「…どうだ?」
「どうだ、とは…?」
「ぁー…その、魔法で瓶の中の水に夜を写し取ったのだ。
魔法に興味があると聞いたから魔法で作ったものなら気に入るかと思ったんだが…」
「!…これ、水ですの…?」
改めて瓶を見るもどうみても黒い液体は確かに動きは水だが真っ黒できらきらしていて…水には見えない。
「ぁ、あぁ。…気に入ったか?」
「気に入りましたわ!」
「そうか…それならよかった。この水は腐らないように魔法をかけてあるからこのままやろう。」
と瓶の蓋の部分を持って差し出された。両手で皿を作るように手を出すとそこにころんと転がされる。
ころころと動く度にしゃりん、と微かに聞こえる音が心地よい。
「ふふ、素敵なプレゼント…ありがとうございますわ、ご主人様」
「ふん…」
ご主人様はそっぽを向きながらぼすりとソファに腰掛ける。そのままじっとわたくしを見つめたからと思うとぽんぽんとお自身の隣をぽん、と叩いた。
「座れ」
「…お隣に、でしょうか?」
わたくしのその言葉にコクリと頷く。…いいのかしら。そう思いながらゆっくりと少し離れた場所に腰掛けるとむっとご主人様の眉間にシワがよった。
…やっぱり駄目だったのかしら?
「…ごしゅじ」
「何故そんなに離れたところに座る。隣に座れ」
ご主人様と言い切る前にぐっと腰に手を回され隣に座らされる。
そのままご主人様の腕に寄りかかる様になってしまった。
え、これは、少し…いえ、かなりアレな格好なのではないかしら?
恐る恐る先程まで扉の方で石像になっていたメイドさんに目を向けると次はこちらを見てまた石像になっていた。
信じられないものを見るような…まぁ確かにそうでしょうね。魔王様であるご主人様が人間のペットを抱き寄せているんだからそんな目になりますわよね。
「…ご主人様、ペットを抱き寄せるだなんてしてはいけませんわ。」
「……ペットをどうしようと私の勝手だろう」
いえ、そうなのだけれど……まぁご主人様が言うならいいかしら。どうせ決めるのはこのお方なのだろうし。
「分かりましたわ」
わたくしがそう言うと少し力を入れてご主人様がまた私を抱き寄せる。
…ご主人様、意外と筋肉あるわね…着痩せするお方なのね。
体が分厚くて、背が高くて…ふふ、騎士の方みたい。強そう…いえ、本当に強いのね。強くて見目麗しくて…素敵だわ。
「…おいロンジェル、部屋から出ろ。しばらくこの部屋に他の者に近づくなと伝えておけ」
「、…かしこまりました」
固まっていたメイドさん…ロンジェル様というのね。ロンジェル様がぴく、と動いたあとすっと頭を下げて部屋から出ていく。
…なぜ人払いをなさったのかしら。
「マリアンヌ」
「はい」
「…」
ご主人様がじっとわたくしを見つめると懐から何かを取り出した。それは黒い手袋できゅ、と両手をはめる。
そしてその手で私の頬を撫でてきた。手袋はシルクでできていてほんの少し冷たく、さらさらとした肌触りの良さが気持ちいい…けど。
人間に触りたくないのかしら、わざわざ手袋をつけて…
……なんだかわからないけど、なんとなく悲しいわ。少し重い鉛を飲み込んだみたい。
……でも、ご主人様に触っていただけるから、そんな気持ちもなかったことにしましょうか。幸せだもの。
私は無意識のうちにご主人様のその手に頬を擦り寄せていた。
修正しました
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