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短編小説 「とある雪の日 」

Aluma

雪は好きじゃない

「雪はいつ見ても綺麗だね」
彼女は雪が降るたびにそう言っていた。



『わー!来てくれたの?嬉しい!
今日は雪が綺麗だね〜』

雪を眺め、開口一番
「雪は…好きじゃないかな。」
彼女とは対極的に
僕は雪というものがあまり好きではない。

『いつか好きになってくれるといいな。』

「君だったら、今日は雪が綺麗だねって、そう言って笑うんだろうね。」
僕は上を向き、雪を眺めながら呟く

『あたってるけどさっき言ったよ!』


彼女の笑っている姿が目に浮かぶ
「今日は君の好きなお菓子を持ってきたよ」
そう言って、僕は鞄からそれを取り出す

『あ!それ大好き!ありがとう!』

菓子を置き、僕はもう一度雪を眺め
口を開く
「やっぱり、雪は好きになれないよ」

『どうして?』

「雪を見ると、
あの時のことを思い出すんだ。」
彼女に語りかけるかのように呟く

『…そっか』

僕は言葉を続ける
「あれからもう…1年経つんだね。」

『…そうだね』

「それじゃあ、また。」
僕は別れを告げる

『うん』

「次は花でも持ってくるよ。」

『ありがとう!…でも君と会えるのもこれが最後なのが悲しいよ。』

僕は背を向け、帰る姿勢を見せる

『あ、そうだ
最後に確認したい事があったよ。』






「私は君が大好きだったよ、君は…?」





僕は背後を振り返る
僕の目の前で交通事故で亡くなったはずの
いないはずの彼女の声が聞こえたような気がした。
しかしそこにあるのは彼女の墓だけだ。
でも何故だろう
彼女がそこにいるかのような気がした。
そして、今言わなければ
もう、それを言う機会が無いような気がした。
だから…
「僕も大好きだったよ」
届くはずないと、
そう思いながらも心からの思いを言った。

『えへへ、これで心残りはないよ』

彼女が笑っているような気がした
そして、彼女が今、本当の意味でこの世から
いなくなったのを、僕は理解した。

「雪が綺麗…確かにそうかもしれないね」
僕は涙を流しながら呟いた。

この日以来、僕は雪を好きになった。

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コメント

  • ノベルバユーザー601499

    皆んな幸せにならないかなぁ…。
    続きが気になって気になって・・・

    0
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