In defense of you

嘉禄(かろく)

Dream of the end

俺は、普通の人間と造りが色々異なる。
だから、眠っている時でも夢を見ることは滅多にない。
近しい人たちが夢を見た、と言っていたり魘されていたりするのを側から見ていることしかない。
けど、今になって俺もやっと夢を見た。

気がつくと俺は真っ暗な森の中にいた。
月明かりしか光がないから俺の周囲しか見渡せない。
遠くに、月に照らされた建物が見える。
ここがどこなのか探ろうとしたら、前方を誰かが歩いていることに気づいた。
そうだ、あの人に聞けばいい。
そう思ってその人をよく見たら、涼だった。
けど、メサイアのコートではなく昔いた暗殺組織の服を着ている。
…俺は、あの日に戻されたのか?
だとしたら、涼を戻さなくちゃ…!
少し混乱しながらも俺は涼に近づくべく一歩踏み出した…けど、近づくことは出来なかった。
足に痛みが走って俺はその場に崩れ落ちる。
不思議に思って足を見ると、両足は血塗れで使い物になりそうになかった。
この場合どうやって追いつくか?
どう頑張っても追いつけそうに無いけど、俺は何としても後を追おうとした。
つまり、腕だけで這って頑張って進んだ。
時々涼の背中に呼びかけながら。


『涼、待ってよ…俺を置いていかないで、二人で叶えるんでしょう…!』


それでも涼には届かなくて、だんだん背中は遠ざかって…ついに俺は一人取り残された。

そこで、誰かの声が聞こえて俺は振り向いた。


「…つき、しっかりしろいつき!」


目を開くと、白い天井が見えて目の前には珍しく心配そうな顔をした涼がいた。
ここで俺は今のが夢だと気づいた。
とんでもない悪夢だった、こんなのが最初に見た夢だなんて…。
…それより、ここはどこだろう?今はどういう状況だ?
なんで俺は呼吸器つけられて横になってるんだ?
俺が状況を把握出来なくて混乱していると、涼が安心したように呼びかけてきた。


「よかった、気づいたか…安心しろ、すぐにドクターが助けてくれるからな。」
「…涼、俺…なんでこんな事に…?」
「…覚えてないのか?さっきの任務の殲滅対象が自爆したんだ。それに巻き込まれたんだよ、お前は1番近くにいて逃げるのが遅れて…死ななくてよかった…。」


…そっか、そうだった。
それで意識失って、あの夢を見たんだ…。
現実も夢の中も最悪だなぁ…でも、現実の方がまだマシかな。
俺がこうして生きてるし、傍には涼がいてくれてる。
あんな風に置いていかれるのはごめんだと内心思いながら俺は目を閉じた。



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