不本意ながら電波ちゃんの親友枠ってのになりまして
20.いつも言わないで後悔するほう
「大輝くん結構上手だね」
手慣れた様子で玉ねぎに包丁を入れつつ、尾白は嶋の剥き終えたジャガイモを見つめて微笑んだ。嶋はそんな尾白に当たり前だ、というようにニヤリと口の端を上げる。そんな2人を横目に杏は炊飯器のボタンを押した。
「どうせジャガイモの皮むきすらまともにできませんよ」
口をとがらせてつぶやいてみても、杏にジャガイモの皮は剥けないわけで、空しくなってやめた。
「杏ちゃんは豪快だよね」
尾白の精一杯のフォローは、杏の女子としての自信と誇りをそぎ落としていくようだった。力なく笑う杏を見た尾白は、がっくり肩を落とすと気まずそうに人参を乱切りしはじめた。
「ピーラーってあんなにジャガイモ小さくできるんだって思ったよな。ある意味才能なんじゃね?」
杏の犠牲になったジャガイモを思い出したのか、嶋はケラケラと笑いながらイモの皮を剥く。杏はすることがなくなったので、二人の作業を眺めているだけだが、2人は話しながらも丁寧に作業を進めていく。
「バカにしかされてないけど、そういうことにしとく」
そんなこんなで黒瀬と桃華が戻ってくる頃にはカレーが完成した。
ほとんど尾白と嶋の手作りである。
丁寧に盛り付けられたカレーと彩の良いサラダをテーブルに並べていると、食器の音でも聞こえたのか桃華と黒瀬が詫びれもせずに食堂へ顔を見せた。
「わぁ! 美味しそう! 翔馬くんが作ったんだよね。すごいなぁ!」
桃華は開口一番に尾白をほめちぎり、嫌味のない笑顔で席について黒瀬を呼んだ。
「司くん、体調が悪いんだから座ろう?」
黒瀬は何か言いたげに顔をあげたが、気まずそうに杏から目を逸らすと
「悪かった」
そういうと桃華の正面の席へ腰かけた。
はっきり言っていい気はしなかった。黒瀬がとんでもなく無愛想だとわかっているはずなのに、この時ばかりは杏も嶋も砂時計の砂が落ちるようにじりじりと怒りが蓄積されていった。
『体調がすぐれないのは仕方ないと思うけど、謝罪とお礼くらいきちんと言って。それから栗山さんも、それ作ったの翔くんだけじゃないから。大輝も私も手伝ったから』
とでも言えたらなんて楽か。
2人とも悪気はないのだ。ただ感情に任せて空気を悪くするのは杏だって、望んでない。
「食べようか」
気が付くと尾白がスプーンを片手に困った顔をして笑っていた。
嶋も仕方なさそうにため息をつくと、尾白の隣に着席してスプーンを手に取った。せっかくのご飯がまずくなる、と言うように嶋は片方の眉を上げると顎で杏に着席を促した。
「いただきます」
食事中は終始気まずい空気が流れてしまい、さすがの嶋もこればかりは無理だったようで、黙々とカレーを口に運んでいる。桃華は時折黒瀬を伺いながらも、尾白に美味しいと積極的に声をかけている。杏が言いたいことはただ一つ「空気を読め」である。ただ、この空気では気まずいこともあり悔しながらも桃華グッジョブと言わざる負えないところが痛い。
このあとにはこの宿泊の目玉である肝試しがある。怖いし暗いし最悪である。加えてテンションはド底辺だ。
もう帰りたいと思わずにはいられない。
手慣れた様子で玉ねぎに包丁を入れつつ、尾白は嶋の剥き終えたジャガイモを見つめて微笑んだ。嶋はそんな尾白に当たり前だ、というようにニヤリと口の端を上げる。そんな2人を横目に杏は炊飯器のボタンを押した。
「どうせジャガイモの皮むきすらまともにできませんよ」
口をとがらせてつぶやいてみても、杏にジャガイモの皮は剥けないわけで、空しくなってやめた。
「杏ちゃんは豪快だよね」
尾白の精一杯のフォローは、杏の女子としての自信と誇りをそぎ落としていくようだった。力なく笑う杏を見た尾白は、がっくり肩を落とすと気まずそうに人参を乱切りしはじめた。
「ピーラーってあんなにジャガイモ小さくできるんだって思ったよな。ある意味才能なんじゃね?」
杏の犠牲になったジャガイモを思い出したのか、嶋はケラケラと笑いながらイモの皮を剥く。杏はすることがなくなったので、二人の作業を眺めているだけだが、2人は話しながらも丁寧に作業を進めていく。
「バカにしかされてないけど、そういうことにしとく」
そんなこんなで黒瀬と桃華が戻ってくる頃にはカレーが完成した。
ほとんど尾白と嶋の手作りである。
丁寧に盛り付けられたカレーと彩の良いサラダをテーブルに並べていると、食器の音でも聞こえたのか桃華と黒瀬が詫びれもせずに食堂へ顔を見せた。
「わぁ! 美味しそう! 翔馬くんが作ったんだよね。すごいなぁ!」
桃華は開口一番に尾白をほめちぎり、嫌味のない笑顔で席について黒瀬を呼んだ。
「司くん、体調が悪いんだから座ろう?」
黒瀬は何か言いたげに顔をあげたが、気まずそうに杏から目を逸らすと
「悪かった」
そういうと桃華の正面の席へ腰かけた。
はっきり言っていい気はしなかった。黒瀬がとんでもなく無愛想だとわかっているはずなのに、この時ばかりは杏も嶋も砂時計の砂が落ちるようにじりじりと怒りが蓄積されていった。
『体調がすぐれないのは仕方ないと思うけど、謝罪とお礼くらいきちんと言って。それから栗山さんも、それ作ったの翔くんだけじゃないから。大輝も私も手伝ったから』
とでも言えたらなんて楽か。
2人とも悪気はないのだ。ただ感情に任せて空気を悪くするのは杏だって、望んでない。
「食べようか」
気が付くと尾白がスプーンを片手に困った顔をして笑っていた。
嶋も仕方なさそうにため息をつくと、尾白の隣に着席してスプーンを手に取った。せっかくのご飯がまずくなる、と言うように嶋は片方の眉を上げると顎で杏に着席を促した。
「いただきます」
食事中は終始気まずい空気が流れてしまい、さすがの嶋もこればかりは無理だったようで、黙々とカレーを口に運んでいる。桃華は時折黒瀬を伺いながらも、尾白に美味しいと積極的に声をかけている。杏が言いたいことはただ一つ「空気を読め」である。ただ、この空気では気まずいこともあり悔しながらも桃華グッジョブと言わざる負えないところが痛い。
このあとにはこの宿泊の目玉である肝試しがある。怖いし暗いし最悪である。加えてテンションはド底辺だ。
もう帰りたいと思わずにはいられない。
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