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不本意ながら電波ちゃんの親友枠ってのになりまして

いわなが すみ

7.二兎を追う者は一兎をも得ず

桃華にいたってはそれどころの話ではない。杏の目の前で未来へ思いをはせる桃華は、7人もの男性の尻を追いかけ追いかけられると言っているのだ。

「ちょっとまって。それ無理があると思うんだけど…」

口をはさんだ杏に機嫌を損なわれた桃華は居住まいを正し、その細くて白い足を組み替えて言った。

「なにが?」

おもむろにフォークを掴んだ桃華は、一思いにシフォンケーキに突き刺す。

「1人を選ばないなんて不純だし、選んでもらえないのに一緒に居るのは疲れちゃうと思わない?いつかは1人を選ばなければならない。終わりは絶対に来る」

杏は桃華がヒロインだとかいう電波的な話よりも、あの健気に桃華を慕っている尾白や桃華と楽しそうに笑っていた青葉が不憫に思えてならなかった。どんなに好きだと伝えても選んでもらえないことはある。だが、選ばれずに宙づり状態で振り回されるよりよっぽどマシだ。

「あたしは選ばないんじゃないの!選べないのよ!みんなあたしのこと好きなんだもの、それはいつになっても変わらない」

そう言って桃華はシフォンケーキを口に放り込んだ。もちもちと咀嚼する姿は小動物のようにかわいいのに、なぜだか杏には電波障害にしか見えなかった。ため息をつく暇さえ与えてくれない桃華はまるで物語に出てくるお転婆な姫そのものだ。

「まぁ、もういいや。それで?私は何をしたらいいの?」

杏はさながら振り回される同年代の侍女である。話が通じないのならしょうがない。そのうち破綻するであろうごっこ遊びに付きやってやろうと思った。お姫様の癇癪は電波障害だけで結構ですわ。

すると桃華は口元にトッピングの生クリームをつけたまま、首をかしげてにっこりと笑った。

「司くんとあたしの邪魔しないでさっさと仕事してよね。杏ちゃんの仕事は2年の高緑先輩と赤城先輩をあたしに紹介することなんだから」

前言撤回、これ以上杏の大切な人を生贄には捧げない。
杏は言うこと聞くふりしてとんずら作戦を決行することに決めた。黒瀬との間は言わずとして邪魔するつもりはないし、応援する気もない。

「あーうん。わかった二人に都合聞いとくね?」

杏はどうにかして高緑と赤城に忠告し、その上で関わらないように釘を刺すことに決めた。高緑はともかく赤城は厄介な人間であるため、早々に手を打たなければ学校で金魚の糞のようについてくる桃華に見つかるのも時間の問題だ。

「都合なんて聞かないでさりげなく自然な流れで紹介して。ゲームの杏ちゃんはもっと自然で空気が読めてたのに。バグかなぁ…」

桃華の態度は人にものを頼んでいるようには見えないが、自然な流れってあくまで杏の好意で紹介した風にしろということか。

にしても尾白といい高緑といい、杏は桃華のストライクゾーンはイケメンじゃなくても良いらしいなどと、よくわからん現実逃避するほかなかった。

「7匹追っかけて7匹みんなに逃げられーねーかな、この子」

杏と桃華はお互いの態度にため息をつきながら駅前のカフェを出た。

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