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不本意ながら電波ちゃんの親友枠ってのになりまして

いわなが すみ

6.電波がすぎる!

昼休みが終わり杏はまた疲労感を感じていた。桃華はとてもいい子なのだが、パワフルすぎて杏には光が強すぎる。神様はなぜこんなに理不尽なのだろうか。

「杏、そんなに疲れるなら一緒に居るの辞めた方がいいぞ」
「うーん、疲れはするんだけど嫌いじゃないからなー」

席に戻ってきた黒瀬はうなだれている杏を見て声をかけた。幼なじみである黒瀬は、杏が桃華のようなタイプの人間とそりが合わないことを知っている。

昔から静かなことを好むところがある黒瀬の隣で、杏はおとなしく本を読んでいるような子どもであった。静かなことを好む癖に黒瀬の周りには常に人がいたが、なかでも一番楽だと感じたのは杏が初めてだった。それからだ、黒瀬が杏の隣に居続けたいと思ったのは。

「ま、休みたくなったら俺たちと飯を食えばいい。大輝もいるし、他のやつらも良いやつばっかだ」

先ほどまで一緒に昼食を取っていた友人たちに思いをはせている黒瀬の顔は、いつもの三倍くらい穏やかな顔をしていた。高校に入って嶋以外に心を許せる友人ができたのかと思った杏は、黒瀬の表情がおもしろくてクスクス笑っていた。

「なんだよ、人がせっかく気を使ってやったのに」

一気に眉間にしわを寄せた黒瀬は、ふてくされて杏のおでこにでこぴんをお見舞いしてやった。

「痛い…本気でやったな!」

赤くなったおでこを押さえる杏は、目じりに涙を溜めてキッと黒瀬を睨みつけた。そんな杏の顔がおもしろかったのか、黒瀬は満足そうに笑うと悪かったと言って杏をなだめた。

「ねえ、杏ちゃん一緒に帰ろう!」

授業終了後、一目散に杏のところへ飛んできた桃華が開口一番にそう言った。杏は火、金の文芸部に所属しており木曜日の今日は休みなので、ちょうど聞きたいことがあるし一緒に帰宅することにした。

「せっかくだから寄り道して行こ?」

そう言った桃華について行くと、杏と桃華はいつの間にか駅前のカフェでシフォンケーキをつついていた。

「で、杏ちゃんは司くんが好きなの?」

そしてなぜだか威圧的な態度で恋愛トークを始められた。

「好きかぁ。まだわからないなー」

杏としては黒瀬は腐れ縁であり、幼馴染であり、友人であり、クラスメイトである。16年生きてきてこれほど馬の合う人はいないと思うし、大切かと問われたら大切だと答える。でも、付き合うとか愛とか好きとかはよくわからなかった。だから杏は肯定も否定もしないことにしている。これは中学生のころから変わっていない。

「わからないわけないよね、あたしはには司くんのこと好きで好きでどうしようもないって見えるけど」
「そうかなー、どの辺がそう見えるんだろ?」
「だって杏ちゃんわざわざ司くんを追ってこの高校にしたんでしょ?」
「…は?」

桃華から飛び出した言葉は杏にも予想外だった。杏が黒瀬のことを好きで、付きまとっているというようなお話しは中学の頃から絶え間なくあったので予想できた。だが、杏が黒瀬を追って高校に来たなどといわれたのは心外である。

「でもそうか、私が司を好きという解釈なら追ってきたという解釈も成立するもんね。その方が辻褄が合うしな」
「杏ちゃんはなんで司くんを呼び捨てにしてるの?そんなに仲が良いのはおかしいよね?」

お助けキャラなのにでしゃばりすぎじゃない?と桃華が小声で付け足すと、杏はそろそろ聞き時なのではないかと感じた。

「ねえ、前から気になってるんだけど。そのお助けキャラってなんのこと?司が攻略キャラとも言ってたよね?もしかして紫月先生と尾白くんと青葉先輩もそうなの?」

杏は見たこともないくらい機嫌が悪い桃華を見て、すこし怖くなったがここで聞かなければいけないような気がした。

「そうだよ。だから杏ちゃんはあたしのお手伝いをしてくれないと困るの。あたしはヒロインだから」

そんなこともわからないのかと桃華はため息をついた。いやいや、杏にしてみれば図々しいことこの上ないと思うのだが。隣の席でおしゃべりしている女子高生が引いてるよ。

「うーん、わかった。とりあえずお助けキャラは置いといて、栗山さんは結局誰が好きなの?」

杏は痛むこめかみを押さえながら未だ不機嫌な桃華を見た。

「みんな、よ」

もう杏には意味が分からなかった。

「みんなあたしのことを好きになるし、あたしも皆が好きだから一人を選ぶことはできないの」

先ほどとは打って変わって乙女のような顔になった桃華は、電波を発信していた。桃華の言い分ではこれから彼女は司を含め7人の男性に好かれ、愛をささやかれるのだが、全員のことが好きな桃華は誰も選ぶことができず、将来的には8人で一緒に暮らすことになるらしい。

杏は一言だけ言いたい。

「電波がすぎる!」

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