感傷

夕暮れの叶夢 (ゆうぐれのとむ)

「ニセモノカゾク」

ニセモノカゾク

登場人物

僕 15才

お母さん  34才

お父さん  41才

妹   8才


僕の人生が変わった1日の物語


「ただいま!」僕は学校を終え家に帰った。

「おかえりなさい!お兄さん!」笑顔で妹が迎えに来てくれた。

いつも笑って励ましてくれる妹、今日も癒された。

家の中に入ると夕食中のお母さんとお父さんが居た。

「ただいま帰りました。」そう言って

2階にある自分の部屋へと向かった。

自分の部屋に居ると昔のことばかり考えてしまう。

僕はいじめにあっていた。

何度も何度も「死にたい」って思った。

今でも腕や手首にはリストカットの傷の跡が残っている。

そんな事を思い出してしまうと寒気がする。

「〇〇居るの?」お母さんが呼んでいる。

「早く降りてきて、一緒に食べましょうよ。

今日は〇〇が好きなシチューだよ?」

「今行きます。」僕は皆の居るリビングへと向かった。

家族4人で食卓を囲んだ。

でも誰も喋らない。

静かな食卓、誰も居ないような食卓。

聞こえるのはテレビの音とスプーンが皿に当たる音だけ。

毎日こんな感じだ。

4人で食卓を囲んでも意味が無い。

1人は学校で疲れ、

1人はがむしゃらに食べ続け、

1人は優しい顔でこちらを見ながら

1人はテレビしか見ず、

僕の食事は異常なほど静かだ。

「ごちそうさま。」そう言ってお父さんが立ち去った。

「お父さん無愛想だからごめんね、2人とも」

お母さんが僕らに謝った。

なんで謝るのだろう?

そう思いながら「大丈夫ですよ。」と言った。


食べ終わり、また自分の部屋で1人になった。

スマホを取り出しネットニュースを見た。

〇〇学校がいじめを認め謝罪!!

問われる学校の責任!!

という見出し記事に目がいった。

細かく読んでいくと

〇〇学校では集団的ないじめがあり、

それがきっかけとなったと思われる殺人事件も発生した。

しかし学校はいじめの事実を否定した。

という内容だった。

「やっぱり腐ってる。」ただそう思った。

部屋のドアを誰かが叩いた。

そこには妹がオセロを持って来ていた。

「遊んでくれる?」

「3回までね?」僕は今できる精一杯の笑顔でそう言った。

「お兄さんはオセロ得意なの?」

「苦手かなぁ…あんまりした事ないから分からないけどね。」

「お兄さんって私嫌い?」真剣な眼差しでこっちを見てくる。

「どうして?」

「お兄さん私の前で笑わないから。」
 
その言葉は酷く冷たかった。 

「僕は好きだよ、だって家族なんだから。」

その言葉を聞いてほっとしたみたいに

「ちょっと相談あるんだけどいい?」

僕は「いいよ。」と答えた。

「名前で呼んで欲しいな、せめてお兄さんくらいには。」

鳥肌がたった。

僕もお母さん、お父さん、妹に名前で呼ばれた事なんて無かった。

「いいよ、けど名前教えて?」

僕は家族の名前を知らない。

誰も口にしなかったから。

「えっ?」妹がこっちを見てきた。

「私の名前知らないの?」悲しい目で見てくる。

僕はうなづき「教えてくれないかな?」と返した。

「私も知らないよ、自分の名前。ずっと家の中だから。」

そうだった、妹は学校にも行けておらず、

ずっと家という名の牢獄に居るのだ。

「この話やめてオセロ続けよっか。」僕が言うと

妹は笑顔でうなづいた。

「お兄さん弱すぎだよ!」

結果は僕の3連敗。でも久しぶりに楽しかった。

「お兄さん」妹が耳元で囁いた。

「お兄さんと家出したい。ここ窮屈だから。」


夜10時、オセロも終わり、学校の課題も終わり、

お母さんとリビングでテレビを見ていた。

「お母さん。」

お母さんが振り向いて「どうかしたの?」と言った。

「僕達って家族じゃないよね?」

前から気になっていたことだった。

家族なのか、家族じゃないのか。

「だって僕と妹は拾われてここに住んでるし

最初はお母さんしか居なかったし、

未だにお母さんも無愛想だから。」

僕は止まれなかった。

もう吐き出したかった。

「僕は自殺しようとしたこと以外小学校の事覚えてないから。

答えて、僕らは家族なの?それとも他人なの?」

お母さんは泣いてしまった。

そこに盗み聞きしていたのかお父さんがやって来た。

「それは〇〇が決める事だろう。私が家族だって思っても

〇〇は家族だと思ってくれるのか?」

正論だ、今の僕だと分からない。迷ったままだ。

「お前の記憶の事は私達も知らない。」

「じゃあなんで僕はここにいるの?」気づいたら涙が溢れていた。

「お前も家族を亡くしてるからだよ。

そして代わりの親として育ててるだけ。

後数年でここから出ていけ。」

お母さんはお父さんの話を止めようとしたが

お父さんは続けた。

「お前らみたいなゴミクズ、拾いたくなかったよ。

でも、お前らを監視する必要があったんだよ。

分かったらとっとと部屋で寝ろ!」

僕らを突き放した言い方だった。

僕は怒り、悲しみ、絶望が頭をよぎりながら部屋に戻った。

ネットで調べてみると

数年前近くで火災事故が発生したらしく、

そこで小学三年生の僕と、まだ幼かった妹が救助されたらしい。

火災の原因は未だに分かっていない。

けど拾った理由は大体予想がついてしまう。

正直そんなのどうでもよかった。

育ててくれた人の人生なんて興味無い。

ただ僕達の事を思ってくれているかどうかだった。

結局1mmも思ってくれていなかった。


その日から1週間が経った。

保っていた家族の形すら無くなってしまった。

僕は妹と家出の準備をしていた。

妹が悲しそうな表情でこちらを見ながら、ふと

「誰が悪いの?」

僕は答えた。

「誰も悪くなんかないよ。」


END



あとがき

読んでくれてありがとうございます!

たった1日で家族の形は崩壊するものなのでしょうか?

血が繋がってたとしても家族なのでしょうか?

繋がって無かったとしても家族になれるのでしょうか?

そう考えるきっかけにしてくれたら嬉しいです!

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