鮫島くんのおっぱい 外伝 山石歩美の業務日記
6
9月20日
やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ。
たい焼きの試食を勧めていると、夕方、あの美形さんと、ニット帽の男がやってきた。
後ろにはピンクの物体が浮かんでいる!
なんだろうあれ、ゲーム機……なのかな。
美形さんとニット帽の男との会話がまた面白かった。
「イヌイ、これはなんて書いてある?き、……い、た」
「タイヤキですよ。あれは焼くという字で、字は右から左に向かって縦書き、つまり普通とは逆に読むんです」
「……なぜだ」
「……すみません、知りません」
「タイヤキとはなんだ」
「タイを焼いたものじゃないですか?」
「タイとはなんだ」
「食材になるタイといえば、魚の名前だと思いますけど。魚……これは、魚ではないよな」
と、私の手元を覗いて二人でマジメに話してるんだもの。
凝った冗談かとも思ったけど、本当に彼らが外国人だとしたら納得。
「魚のタイのカタチに作った、甘いお菓子ですよ」
私が言うと、彼らはいっしょに目を丸くして、口をそろえて、
「なぜ?」
……ごめんなさい、よくわかんないです。
彼らは、試食、という概念がよくわからなかったらしい。どうぞ食べてくださいというと、今待ち合わせ中で、こんなときに食事をとるのは私に失礼だからと返された。意味が解らない。
やがて、制服姿のあの美少年がやってきて、彼らと合流した。
短い会話だけして、みんなで商店街を出て行ってしまった。
彼らはみんな仲間? だとしたら、あの栗色の髪の子もバンド仲間なのかな。
ああ、行きたい。
どんな歌をうたうのだろうか。
10月1日
あれから、彼らを全く見かけない。
どうしているのだろうか。
私は今月いっぱいで、このバイトを辞めることにした。伯父さんにも話した。
世間の夏休みをピークに、商店街は閑古鳥。ヘルプの仕事がなくなってきたみたいで、まあちょうどいいかなと言われてしまった。
もう一度、彼らに会えたらいいのにな。
10月14日
今日から花屋さんでお手伝い。
店主が仕入れや配達に行っている間の店番、の、アシスタント。
水仕事が多くてつらい。
でも、あと二週間の辛抱だ。それでこの商店街のバイトもおしまい。
ミニブーケを少しだけ任せてもらった。難しいこともあるけど、花は好きだし、
あの着物屋の地獄を思えばたのしいものだ。
やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ。
たい焼きの試食を勧めていると、夕方、あの美形さんと、ニット帽の男がやってきた。
後ろにはピンクの物体が浮かんでいる!
なんだろうあれ、ゲーム機……なのかな。
美形さんとニット帽の男との会話がまた面白かった。
「イヌイ、これはなんて書いてある?き、……い、た」
「タイヤキですよ。あれは焼くという字で、字は右から左に向かって縦書き、つまり普通とは逆に読むんです」
「……なぜだ」
「……すみません、知りません」
「タイヤキとはなんだ」
「タイを焼いたものじゃないですか?」
「タイとはなんだ」
「食材になるタイといえば、魚の名前だと思いますけど。魚……これは、魚ではないよな」
と、私の手元を覗いて二人でマジメに話してるんだもの。
凝った冗談かとも思ったけど、本当に彼らが外国人だとしたら納得。
「魚のタイのカタチに作った、甘いお菓子ですよ」
私が言うと、彼らはいっしょに目を丸くして、口をそろえて、
「なぜ?」
……ごめんなさい、よくわかんないです。
彼らは、試食、という概念がよくわからなかったらしい。どうぞ食べてくださいというと、今待ち合わせ中で、こんなときに食事をとるのは私に失礼だからと返された。意味が解らない。
やがて、制服姿のあの美少年がやってきて、彼らと合流した。
短い会話だけして、みんなで商店街を出て行ってしまった。
彼らはみんな仲間? だとしたら、あの栗色の髪の子もバンド仲間なのかな。
ああ、行きたい。
どんな歌をうたうのだろうか。
10月1日
あれから、彼らを全く見かけない。
どうしているのだろうか。
私は今月いっぱいで、このバイトを辞めることにした。伯父さんにも話した。
世間の夏休みをピークに、商店街は閑古鳥。ヘルプの仕事がなくなってきたみたいで、まあちょうどいいかなと言われてしまった。
もう一度、彼らに会えたらいいのにな。
10月14日
今日から花屋さんでお手伝い。
店主が仕入れや配達に行っている間の店番、の、アシスタント。
水仕事が多くてつらい。
でも、あと二週間の辛抱だ。それでこの商店街のバイトもおしまい。
ミニブーケを少しだけ任せてもらった。難しいこともあるけど、花は好きだし、
あの着物屋の地獄を思えばたのしいものだ。
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