こんなはずじゃなかったのに!!

小森 美佳

1 自己紹介

「あーあ。またダメだった・・・」

私は自宅のリビングで昼過ぎに届いた郵便物を見ながら呟いた。
それは、2週間前に受けた子供の頃からの夢である、歌手オーディションの結果通知。
その用紙には見慣れた “ 不合格 ” の文字。
これでもう、27回目だ。

今回は1番手応えがあったから絶対上手くいったと思ってたのにな。
何がダメだったんだろう?
私って、そんなに歌手に向いてないのかな。


私は今まで、いろんなオーディションを受けてきた。
大手レコード会社主催の新人歌手発掘オーディション、
CM出演歌手オーディション、某ドラマ出演権獲得・新人歌手役募集オーディション、、
途中で思い出すことに嫌気が刺し、後頭部を掻きながら目の前の机に肘から倒れこんで泣く。

オーディションの結果通知が届いた日はいつもこうだ。
中学2年生の時に初めて受けた結果が届いた日から、私は何も変わってない。

手応えがどんどん大きく感じてきたからか、涙を流す量も次第に増えている。
“ 不合格 ” その文字が変わるはずないとわかっているのに、紙を何度も折っては開いてを繰り返し、その紙は私の涙でどんどん滲んでいく。
そして、いつのまにか大泣きしながら寝てしまう。



「私の将来の夢。 姫川 柚葉 」


小学2年生の時、授業参観で自分の夢を発表した時。
毎回、結果通知が届いた日は
たくさん涙を流して寝てしまう私は、いつも決まってこの夢を見る。


「私は大きくなったら歌手になりたいです。理由は、歌うことが大好きだからです。いつか自分で歌詞を書いてみたいです。曲も作ってみたいです。そして、可愛い服を着て歌って、お金をいっぱいもらってみたいです。」



あまりにも小学生らしい文章で笑えるけれど、この頃から本気だったことだけは変わらない。

中学生の時も自分の夢についての作文で、私は歌手と書いたし、合唱部にも所属して部長まで務めた。
そして高校生となった今、部活には所属せず、入学と同時期からバイトを始めた。
理由はもちろん、オーディションに受かった時にすぐにでも上京できるように資金を貯めておくため。


でも、今日届いた結果通知で27連敗。
気づけば私ももうすぐ18歳になって、高校を卒業する。
中学生からオーディションの交通費用に貯めてきたお小遣いももうすぐ底を尽きそう。

一体いつになったら私は、憧れの歌手になれるのだろう。





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