第一話

長い夢を見た。
その夢は、マスクを着けた男達が一人の少年を玩具にする夢だ。ただ、普通の玩具ではなくナイフで体の至る所を切り裂いたり、少年と同年代の子供達を連れてきては誰を助けるか聞いて、答えると結局全員殺したりなど様々なことをした。そしてそれが永遠とも言える時間続く。

そして、少年は覚えてしまった。絶望、恐怖、怒り、悲しみ、それに、人を切り裂くときの快感に。

「っ......はぁ、はぁ、はぁ」
「また"あれか"」

少年は寝ていた布団が汗でびしょ濡れになっていることに気がついた。更には、自分の中の着ていた服も汗でびしょ濡れになっていた。

服とシーツを洗濯機に放り込み制服に着替えて家を出た。
 
家を出て何時ものように何気なく学校へ向かっていると、後から声をかけられた。

「佑介！」
「ん、何だ東華か、どうした？」
「どうした？じゃない、何で待ち合わせの場所に来ないのよ！」
「ん、ああ、悪い」
「もう」

彼女の名前は鈴樹東華(すずきとうか)だ。俺のおさ馴染みであり、"護衛対象"だ。

彼女の家は大財閥の中でもトップにあるところでその為、誘拐等に会いやすい。その対策として小さい頃に一緒に遊んでいて尚且つ傭兵をやっていた俺はまさに使える人材だったわけだ。

まぁ、この以来を引き受けた時は"昔の仕草や表情"を練習するだけで相当苦労したが。

東華と何気無い会話をしていると学校に到着した。校内に入り廊下を歩いていると人が目に止めない影や掃除用具入れの中から視線を感じた。

おろらく、東華親衛隊のメンバーだろう。彼等は入学してからずっと東華のファンらしい。以前俺と東華が幼馴染と知った奴等から襲撃を受けた。ま、返り討ちにしたが、それからと言うものの奴等は俺を襲う機会を狙っている。

(面倒だ)

内心溜め息をしながらも教室に着いた。俺達が入ると一人の男が声をかけてきた。

「よう、佑介、東華」
「おはよう、龍輝」
「よう」

挨拶してきた男の名前は近衛龍輝(このえりゅうき)俺の数少ない友人だ。 二人と話しているとホームルームの始まるチャイムが鳴った、だが、その音はひび割れていた。

「何だ？故障か？」
「さぁ、そうじゃない」

二人がそんな話をしていると、床に以前龍輝に見せてもらったラノベの魔方陣の様なものが現れた。

「な、何これ！」
「これって、まさか！」

東華は驚き、龍輝は普段からラノベ等を読んでいるので気がついた。そして、他のクラスメイトも「テンプレきたー」などと叫んでいる奴や教室から出ようとし、扉が開かないためテンパってる奴が大半だった。

そんな事をしているうちに段々光が強くなっていった。