苦役甦す莇
Another:Episode24 Terrible power
ミカは悠々とグラスに酒を注ぎ、テーブルの上に水晶玉を置いて、ソファに深々と腰を下ろした。
「ゼノンはアオバがこの世界にいると分かっている以上、下手に高レベルな道具は乱発しない......そしてサイはサリューを人質として取られてる以上これまた高レベルな道具は繰り出せない。
適当にお互いにボコスカ殴り合って......それで両者とも弱ってくれればそれで万々歳。さてさて、ハブとマングースの戦いの行方はどうなるかな?」
ミカはどう転んでも自分に利益しか来ない戦いに、胸を踊らせながら水晶玉を覗き込んだ。そこには戦い合う2人の男の姿があった。
サイが握るのは『碧灰色の贖罪』と言う名のメリケンサック型の道具である。これは殴った箇所から敵を老化させて行き、敵を弱らせる道具である。
(出来たら降参してくれ......ゼノン!)
サイはゼノンと戦うとは決めたものの、流石にゼノンを殺すのは忍びないと思い、殺傷能力の低い道具を選んだ。
「くくく......『碧灰色の贖罪』ねぇ......随分と気の弱い道具に頼るもんだ......それに......不老不死の効果がかかっている俺にはそれは効かない。」
ゼノンが取り出したのは『不知火』だった。命を統べる剣である不知火で、完全にサイのことを殺しにかかっていた。
「くっ......気の弱い道具だと?」
「あぁそうさ......もっと俺を殺す気になってみろ! 俺みたいにな!」
火焔を纏った刀身を振り回し、サイの身体を焼き付くさんと攻撃してきた。サイは『碧灰色の贖罪』ではゼノンの攻撃を受けきれないと悟り、別の道具を出した。
「ほぉ......『蛟』ねぇ......逃げの姿勢か? 水をチョロチョロかけて不知火の炎が消せるとでも?」
ゼノンはサイが出した道具を煽り混じりに批判した。しかしサイには考えがあった。
(ゴク......合図したら凍らせる銃を出してくれ......確か『彗勢』とか言うやつ。)
(了解だ。)
サイは杖を真横一文字に振った。すると、目の前に水の壁が現れた。
「こんなもので何が出来ようか!」
ゼノンは水の壁ごとき何でもないと言わんばかりに突っ込んできた。そこにサイはタイミングを見出した。
(ゴク! いま!)
(あいよ!)
ゴクが彗勢を出すと同時に、ゼノンは水の壁を突き破ってきた。そこにすかさずサイは彗勢の銃爪を引き、水の壁を氷の壁に変えてしまった。
「な!」
ゼノンは水の壁に突っ込んだタイミングに凍らされたので、身体の一部が氷の壁に埋まってしまうという事態に陥った。
「さてと......動きをある程度奪えたし、まぁ幾らでもやりようはあるな。」
「フッ......『動きをある程度奪えた』だと? 何を抜かしてるのかな?」
「あ?」
一方、ミカは水晶玉で2人の戦闘を観戦しながら、ニャルマから奪った装置を色々と使っていた。
「そろそろ、改良型イプシロンをこっちに呼んでおくか。ニャルマの作品は余すところなく使わせてもらうからね......」
ミカはイプシロンの制御装置を弄りつつ、異世界のゲートも開いてやった。
すると、ゲートを通ってニャルマの元いた世界からイプシロンがやって来た。
「ゴクとマゴクの捕獲にはコイツが一番かも知れないな。ただ、少し足りない面もあるな。」
ミカは懐から一つのチップを取り出した。そのチップには『P』と書かれていた。
「まだ試作段階ではあるが、自律プログラムと暴動鎮圧システムさえ動けば良いからな。」
ミカはそのチップをイプシロンに埋め込んだ。するとイプシロンはそれを読み込み、更なる機能追加というグレードアップを果たした。
「あの世界の『Pシリーズ』とやらは中々に参考になった。お陰でコイツの完成も近い。」
ゼノンは氷漬けにされた不知火に最大火力を発揮させ、熱で無理やり氷を溶かして見せた。
「ちょっと知恵らしいものを使ったらしいが、こんなものは不知火の前ではあまりにも無力。」
ゼノンが自由になる頃、サイはゴクから借りた装備で身を固め、本気の戦闘を始めようとしていた。
「降伏の見込みナシとでも判断したのかな? まぁそれは中々賢い判断ではある。だが、それは俺に勝てるという前提があってこその判断だ。最も正しい判断は、お前が降伏してサッサとアオバの所に案内することだ。」
ゼノンはサイの立っている所の左右に火をつけた。そして不知火の剣先をサイに向けた。
「次は俺ってか?」
「そうだよ。」
「なるほど......だけどまぁ、俺もそんな安っぽい脅しに屈するようなヤワな男じゃないんでな。」
(ゴク。不知火を持つ相手に有効打となるような道具を貸してくれ。)
(不知火はレベル3の中でも厄介な部類に入る......不知火を越えるとなるとレベル4程度になるが大丈夫か?)
(今ここで何もせずに死ぬよりはマシだろう。それに、もうこの際俺はどうなったっていい。)
(分かった。)
ゴクはサイの手のひらに一冊のノートのようなものを出した。
(これは?)
(レベル4の道具の一部が詰まったアルバムだ。中にヴォイドフォトに撮られた状態で道具たちが納められてる。)
(なーるほど。)
サイはアルバムを開いた。すると、開いた瞬間に一枚の写真が、まるで自動的に選び出されたかのようにアルバムから射出された。
「この一枚......不知火を破る切り札となりえるか......」
サイは射出された一枚の写真を開いた。すると、写真の表面から映っていた物が具現化された。
「これまた......珍妙な......」
サイの手のひらに具現化されたものは、どこかの学校の腕章であった。サイはこれが文明さえも滅ぼす道具とはとても思えなかった。
(おっとこれは......サイ、お前なかなかにヤバい物を引き当てたな......)
「これがヤバいの? こんなチンケな腕章ごときが? ヤバそうには見えないけどね。」
そう言いながら、サイはその腕章を左腕に付けた。すると、いきなりサイの脳内に謎のビジョンが浮かび上がった。
「全てが......総てが視える......聞こえる......匂いがする......味がする......感じる......全てが......俺の識る総てが......」
サイは彼の知る全てを感じていた。実に筆舌に尽くし難いことではあるが、空気や可視光以外の光などの物理的なものから、時の流れなどという概念的なものまで感じていた。
「なるほど......『聖なる遺物』か。こりゃまた面倒なのを出されたもんだ。」
そう言うと、ゼノンは不知火をマゴクの中へと戻した。そして、そのついでにマゴクの中から道具を取りだした。
「そんなもの出された日には......もうアオバ以外の全てが滅んでも良い覚悟でテメェの相手をしなきゃならねぇな......」
ゼノンがマゴクから取り出した道具は、小さな手鏡の形をしていた。
「使用者が知りうる全てを支配するとされる聖なる遺物......それは不知火の命を司る力をも含有し超越している。
文明さえも簡単に滅ぼすレベル4の中でも特に危険......であるが故に、俺はこの『ストレガ』を使わざるを得ない。」
ゼノンはストレガを自身に向けた。すると、鏡面に写ったゼノンの像がヌルりと這い出てきて、現実世界にいるゼノンと同化した。
「お前の知り得ない恐るべき力というものを......今から見せてやろう......」
ゼノンはその手をバッと払うと、その動きに合わせて破壊の波が形成し、サイの周りにあった物を尽く破壊していった。
「模造品のお前には分かるまい。俺がどれだけの世界に裁定を下してきたか、どれだけ俺が世界を滅ぼしてきたか!」
「それが正しいことなのかよ!」
「悪を殲滅して何が悪い? 悪性新生物を除去するようなもんさ! 創造主が数多の世界を生み出すのだから、技術に心奪われ宇宙にとっての害悪になった世界だってある!
俺はそれを切り取るメスだ! 他の『良い世界』に悪影響を及ぼさないように、『悪い世界』を間引いているだけだ!」
「良い世界......? 悪い世界......?
お前はさっきから何を言ってるんだ?
そんなものはお前が勝手に決めつけたんだろうが! 別にお前がどう思おうと構わない! だがな! それを至上のものとして他に押し付けるな! 意に沿わない他を殲滅しようとするな!」
「五月蝿いな......少なくとも、今はお前が俺にとっての『悪い存在』だ。取り除かねばならない悪だ。」
ゼノンは破壊の波を数えきれない程放った。サイはそれに合わせて、気流や重力を操作し、宙を舞って避け続けた。
「俺は別に悪だろうと構わない! だけどな! いつまでも正義ヅラしてるてめぇが気に食わねぇ!」
サイはゼノンの周囲の重力を何倍にも増加させ、ズンッとゼノンの体を地に伏せた。
「グッ......なめ......んな!」
ゼノンは破壊の波を形成し、自身に降りかかる巨大な重力を解除した。すると先程までサイがいた場所に彼の姿は無く、ゼノンは周りを見渡した。
「はァ......?」
サイは天高く飛翔していて、月に向かって手を伸ばしていた。そこで、ゼノンはサイが何をしようとしているのか一瞬分からなかった。
「ゼノオオオオオオオオン!!!」
サイはゼノンの名を大きく叫ぶと、月に向かって伸ばしていた手のひらを固く握り締め、月を粉々に砕き出来た無数の欠片を、ゼノンに向かって驟雨の如く降らせた。
「ば〜か、こうすりゃ全部壊せんだよ!」
ゼノンは自身に向かってくる全ての隕石を破壊の波で消し飛ばし、サイに向かってもう一度放とうとした。しかし、彼は粉々に砕かれた月があった場所を見て、手を止めてしまった。
「な......アオバ......?」
「おらどうした! 攻撃してみろ! このアオバごと俺を殺す気があるのならな!」
「ゼノンはアオバがこの世界にいると分かっている以上、下手に高レベルな道具は乱発しない......そしてサイはサリューを人質として取られてる以上これまた高レベルな道具は繰り出せない。
適当にお互いにボコスカ殴り合って......それで両者とも弱ってくれればそれで万々歳。さてさて、ハブとマングースの戦いの行方はどうなるかな?」
ミカはどう転んでも自分に利益しか来ない戦いに、胸を踊らせながら水晶玉を覗き込んだ。そこには戦い合う2人の男の姿があった。
サイが握るのは『碧灰色の贖罪』と言う名のメリケンサック型の道具である。これは殴った箇所から敵を老化させて行き、敵を弱らせる道具である。
(出来たら降参してくれ......ゼノン!)
サイはゼノンと戦うとは決めたものの、流石にゼノンを殺すのは忍びないと思い、殺傷能力の低い道具を選んだ。
「くくく......『碧灰色の贖罪』ねぇ......随分と気の弱い道具に頼るもんだ......それに......不老不死の効果がかかっている俺にはそれは効かない。」
ゼノンが取り出したのは『不知火』だった。命を統べる剣である不知火で、完全にサイのことを殺しにかかっていた。
「くっ......気の弱い道具だと?」
「あぁそうさ......もっと俺を殺す気になってみろ! 俺みたいにな!」
火焔を纏った刀身を振り回し、サイの身体を焼き付くさんと攻撃してきた。サイは『碧灰色の贖罪』ではゼノンの攻撃を受けきれないと悟り、別の道具を出した。
「ほぉ......『蛟』ねぇ......逃げの姿勢か? 水をチョロチョロかけて不知火の炎が消せるとでも?」
ゼノンはサイが出した道具を煽り混じりに批判した。しかしサイには考えがあった。
(ゴク......合図したら凍らせる銃を出してくれ......確か『彗勢』とか言うやつ。)
(了解だ。)
サイは杖を真横一文字に振った。すると、目の前に水の壁が現れた。
「こんなもので何が出来ようか!」
ゼノンは水の壁ごとき何でもないと言わんばかりに突っ込んできた。そこにサイはタイミングを見出した。
(ゴク! いま!)
(あいよ!)
ゴクが彗勢を出すと同時に、ゼノンは水の壁を突き破ってきた。そこにすかさずサイは彗勢の銃爪を引き、水の壁を氷の壁に変えてしまった。
「な!」
ゼノンは水の壁に突っ込んだタイミングに凍らされたので、身体の一部が氷の壁に埋まってしまうという事態に陥った。
「さてと......動きをある程度奪えたし、まぁ幾らでもやりようはあるな。」
「フッ......『動きをある程度奪えた』だと? 何を抜かしてるのかな?」
「あ?」
一方、ミカは水晶玉で2人の戦闘を観戦しながら、ニャルマから奪った装置を色々と使っていた。
「そろそろ、改良型イプシロンをこっちに呼んでおくか。ニャルマの作品は余すところなく使わせてもらうからね......」
ミカはイプシロンの制御装置を弄りつつ、異世界のゲートも開いてやった。
すると、ゲートを通ってニャルマの元いた世界からイプシロンがやって来た。
「ゴクとマゴクの捕獲にはコイツが一番かも知れないな。ただ、少し足りない面もあるな。」
ミカは懐から一つのチップを取り出した。そのチップには『P』と書かれていた。
「まだ試作段階ではあるが、自律プログラムと暴動鎮圧システムさえ動けば良いからな。」
ミカはそのチップをイプシロンに埋め込んだ。するとイプシロンはそれを読み込み、更なる機能追加というグレードアップを果たした。
「あの世界の『Pシリーズ』とやらは中々に参考になった。お陰でコイツの完成も近い。」
ゼノンは氷漬けにされた不知火に最大火力を発揮させ、熱で無理やり氷を溶かして見せた。
「ちょっと知恵らしいものを使ったらしいが、こんなものは不知火の前ではあまりにも無力。」
ゼノンが自由になる頃、サイはゴクから借りた装備で身を固め、本気の戦闘を始めようとしていた。
「降伏の見込みナシとでも判断したのかな? まぁそれは中々賢い判断ではある。だが、それは俺に勝てるという前提があってこその判断だ。最も正しい判断は、お前が降伏してサッサとアオバの所に案内することだ。」
ゼノンはサイの立っている所の左右に火をつけた。そして不知火の剣先をサイに向けた。
「次は俺ってか?」
「そうだよ。」
「なるほど......だけどまぁ、俺もそんな安っぽい脅しに屈するようなヤワな男じゃないんでな。」
(ゴク。不知火を持つ相手に有効打となるような道具を貸してくれ。)
(不知火はレベル3の中でも厄介な部類に入る......不知火を越えるとなるとレベル4程度になるが大丈夫か?)
(今ここで何もせずに死ぬよりはマシだろう。それに、もうこの際俺はどうなったっていい。)
(分かった。)
ゴクはサイの手のひらに一冊のノートのようなものを出した。
(これは?)
(レベル4の道具の一部が詰まったアルバムだ。中にヴォイドフォトに撮られた状態で道具たちが納められてる。)
(なーるほど。)
サイはアルバムを開いた。すると、開いた瞬間に一枚の写真が、まるで自動的に選び出されたかのようにアルバムから射出された。
「この一枚......不知火を破る切り札となりえるか......」
サイは射出された一枚の写真を開いた。すると、写真の表面から映っていた物が具現化された。
「これまた......珍妙な......」
サイの手のひらに具現化されたものは、どこかの学校の腕章であった。サイはこれが文明さえも滅ぼす道具とはとても思えなかった。
(おっとこれは......サイ、お前なかなかにヤバい物を引き当てたな......)
「これがヤバいの? こんなチンケな腕章ごときが? ヤバそうには見えないけどね。」
そう言いながら、サイはその腕章を左腕に付けた。すると、いきなりサイの脳内に謎のビジョンが浮かび上がった。
「全てが......総てが視える......聞こえる......匂いがする......味がする......感じる......全てが......俺の識る総てが......」
サイは彼の知る全てを感じていた。実に筆舌に尽くし難いことではあるが、空気や可視光以外の光などの物理的なものから、時の流れなどという概念的なものまで感じていた。
「なるほど......『聖なる遺物』か。こりゃまた面倒なのを出されたもんだ。」
そう言うと、ゼノンは不知火をマゴクの中へと戻した。そして、そのついでにマゴクの中から道具を取りだした。
「そんなもの出された日には......もうアオバ以外の全てが滅んでも良い覚悟でテメェの相手をしなきゃならねぇな......」
ゼノンがマゴクから取り出した道具は、小さな手鏡の形をしていた。
「使用者が知りうる全てを支配するとされる聖なる遺物......それは不知火の命を司る力をも含有し超越している。
文明さえも簡単に滅ぼすレベル4の中でも特に危険......であるが故に、俺はこの『ストレガ』を使わざるを得ない。」
ゼノンはストレガを自身に向けた。すると、鏡面に写ったゼノンの像がヌルりと這い出てきて、現実世界にいるゼノンと同化した。
「お前の知り得ない恐るべき力というものを......今から見せてやろう......」
ゼノンはその手をバッと払うと、その動きに合わせて破壊の波が形成し、サイの周りにあった物を尽く破壊していった。
「模造品のお前には分かるまい。俺がどれだけの世界に裁定を下してきたか、どれだけ俺が世界を滅ぼしてきたか!」
「それが正しいことなのかよ!」
「悪を殲滅して何が悪い? 悪性新生物を除去するようなもんさ! 創造主が数多の世界を生み出すのだから、技術に心奪われ宇宙にとっての害悪になった世界だってある!
俺はそれを切り取るメスだ! 他の『良い世界』に悪影響を及ぼさないように、『悪い世界』を間引いているだけだ!」
「良い世界......? 悪い世界......?
お前はさっきから何を言ってるんだ?
そんなものはお前が勝手に決めつけたんだろうが! 別にお前がどう思おうと構わない! だがな! それを至上のものとして他に押し付けるな! 意に沿わない他を殲滅しようとするな!」
「五月蝿いな......少なくとも、今はお前が俺にとっての『悪い存在』だ。取り除かねばならない悪だ。」
ゼノンは破壊の波を数えきれない程放った。サイはそれに合わせて、気流や重力を操作し、宙を舞って避け続けた。
「俺は別に悪だろうと構わない! だけどな! いつまでも正義ヅラしてるてめぇが気に食わねぇ!」
サイはゼノンの周囲の重力を何倍にも増加させ、ズンッとゼノンの体を地に伏せた。
「グッ......なめ......んな!」
ゼノンは破壊の波を形成し、自身に降りかかる巨大な重力を解除した。すると先程までサイがいた場所に彼の姿は無く、ゼノンは周りを見渡した。
「はァ......?」
サイは天高く飛翔していて、月に向かって手を伸ばしていた。そこで、ゼノンはサイが何をしようとしているのか一瞬分からなかった。
「ゼノオオオオオオオオン!!!」
サイはゼノンの名を大きく叫ぶと、月に向かって伸ばしていた手のひらを固く握り締め、月を粉々に砕き出来た無数の欠片を、ゼノンに向かって驟雨の如く降らせた。
「ば〜か、こうすりゃ全部壊せんだよ!」
ゼノンは自身に向かってくる全ての隕石を破壊の波で消し飛ばし、サイに向かってもう一度放とうとした。しかし、彼は粉々に砕かれた月があった場所を見て、手を止めてしまった。
「な......アオバ......?」
「おらどうした! 攻撃してみろ! このアオバごと俺を殺す気があるのならな!」
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